歌手としての氷青

――声優として幅広く活躍なさっている氷青さんですが、もともと歌手志望だったのですか?

「ぜんぜんそんなことはなかったです。学生のころは友だちとカラオケに行くぐらいで、ライブで歌ったり、曲を作ったりということはまったく考えてなかったです。もともとは役者になりたかったわけでもなく、料理人にでもなろうかと思っていたぐらいですから(笑)」

――日本大学芸術学部演劇学科をご卒業なさっていますが、声優はもちろん、役者や歌手を目指すといった明確な将来像があったわけではないんですね?

「高校の頃に演劇部に入っていて、けっこういろいろな作品に出ていたので、その流れというのはありましたが、演劇で行くか、美術で行くかで悩んでいた時期もあります。どうしても役者になりたかったわけではなく、大学の頃は山に篭ったりもしていました。登山をしていたんですけど、ずっとそちらでいこうと思っていたら、親から卒業だけはしてくれと言われて(笑)。それでいろいろな授業を受けていくうちに、あまり自分を見せて動き回るよりも、ナレーションとか声をあてる仕事のほうが好きかもって思いだして、今に至っています」

――ということは、ちゃんと歌いだしたのは、声優になってからのキャラクターソングなどですか?

「そうですね。お仕事でキャラソンなどを歌ったのが最初で、そこから仕事関係の方に、自分のバンドでも歌ってくれませんかと言うお話をいただき、ライブなどでも歌うようになりました。作詞や作曲を始めたのもそのあたりからなので、12、3年ぐらい前のことですね」

――歌うだけではなく、作詞、作曲をやろうと思ったのはなぜですか?

「まったくお仕事としてやっているものではなかったので、あまり用意された曲というのがなかったんですよ。私自身は、後から呼ばれて入っているのですが、やはり歌っている手前、自分が納得できる曲を歌いたいと思って、曲作りを始めました。ただ、音符も読めない状態だったので、最初は本当に大変でしたね。曲ってこんなのでいいのかなって思いながら、何が常識なのかもわからない感じで……。今もわかってないですけど(笑)」

――それでも作れるというのはすごいですよね

「そんなことないですよ(笑)。最初のころは本当に恥ずかしくて、詩を書いても人に見せられないんですよ。そんなことでどうすんのよって感じですよね」

――ちなみに歌うこと自体は昔から好きでしたか?

「友だちと遊びで歌うのは好きでしたが、授業などで歌うのは大嫌いでした」

――決まった歌い方を押し付けられるのが嫌いだったという感じですか?

「嫌いでしたね。合唱コンクールとかがあっても、全然歌わなかったです。実はうちは両親がともにコーラスをやっているのですが、私はコーラスのようにみんなで歌うのが苦手で……。自分の音が取れなくなっちゃうんですよ」

――氷青さんはこれまでにキャラクターソングもたくさん歌っていらっしゃいますが、キャラソンを歌う場合と、自分の歌を歌う場合の違いはどのあたりにありますか?

「キャラソンの場合は、自分で作詞・作曲をしたものではないので、そのキャラクターや、作っていただいた方の世界に乗っかるという感じなのですが、私の中にないものだったりするので、キャラソンはキャラソンでとても楽しいですね。キャラソンだと『じゃあ、こんなのもやってみようか』って、遊びを入れたりして、けっこう自由にやらせてもらいます」

――自分の歌になると、逆に自由がきかなくなるという感じですか?

「自分の歌の場合、伝えたい言葉、これだけは伝えなければならないものがあったりするので、ちょっと慎重になりますね」

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