ちなみにゴールデン昇格前の『千鳥かまいたちアワー』は土曜深夜の放送だっただけに、そのまま土曜20時台に移動していたら、他番組に先陣を切って放送することができた(土曜に『千鳥かまいたちゴールデンアワー』、日曜に『千鳥の鬼レンチャン』、月曜に『JAPANをスーツケースに』、火曜に『華大さんと千鳥くん』)。
日テレがそれをしなかったのは、「『千鳥かまいたちゴールデンアワー』は土曜20時台より『有吉の壁』と『上田と女が吠える夜』に挟まれた水曜20時台のほうがフィットする」「『1億人の大質問!?笑ってコラえて』(今春に水曜20時台から移動)のほうが『嗚呼!!みんなの動物園』(19:00~)の次に放送する土曜20時台にフィットする」という判断なのだろう。
また、これら以外の番組でも、かまいたちが木曜ゴールデン帯の『街グルメをマジ探索!かまいガチ』(フジ系、20:00~)、千鳥が金曜プライム帯の『酒のツマミになる話』(フジ系、21:58~)に出演している。
『千鳥かまいたちゴールデンアワー』が水曜20時台に編成されたことで、日曜から金曜まで切れ目なくゴールデン・プライム帯に千鳥とかまいたちの番組が続くことになったことが分かるのではないか。
これは同番組が「先行放送されていた他番組よりも面白くなければいけない」ということであり、裏を返せばそこに自信があるからこそのゴールデン昇格に見える。日テレには『月曜から夜ふかし』のBPO審議入りという危機が訪れているだけに、その自信を貫けるのか、スタッフの力量と胆力が問われるのかもしれない。
日テレの編成意図は『有吉の壁』『千鳥かまいたちアワー』というお笑い要素の濃い番組を連続させることだったが、「お笑いフリークですら19・20時台に2時間連続でテレビを見るか」と言えば簡単ではないだろう。
やはりネット上で話題になるなど「リアルタイムで見たい」と思わせるための構成・演出が重要であり、一方で「ゴールデン仕様の構成・演出が深夜時代の千鳥とかまいたちの良さを消すことにならないか」などの不安もある。
水曜ゴールデン起用は日テレの都合
さらにゴールデン・プライムタイム以外でも、千鳥が『テレビ千鳥』(テレビ朝日系、毎週木曜24:15~)、『すっかり にちようチャップリン』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)、『すぽると!』(フジ系、毎週日曜23:45~)。かまいたちも『かまいガチ』(テレ朝日系、毎週水曜23:15~)、『一茂×かまいたち ゲンバ』(日テレ、毎週日曜10:25~)。加えて特番などの単発や関西ローカルなどの出演もあり、「テレビは千鳥とかまいたちだらけ」と言っていいのではないか。
そもそも今回のゴールデン昇格と水曜20時台への編成を懐疑的な目で見る業界人は少なくない。その根拠にあるのは、土曜20時台に編成した『with MUSIC』、21時台・22時台に連続させたドラマ枠をそろって低迷させた昨春の改編。だからこそ日テレは今春、その重要な土曜ゴールデン・プライム帯を立て直すために、長寿番組の『笑ってコラえて!』を20時台に編成し、22時台のドラマ枠を水曜22時に移動させ、そこに『with MUSIC』を20時台からスライドさせた。
つまり、日テレにとって最優先課題の土曜を再建するために『笑ってコラえて!』に白羽の矢が立てられたのだが、それによって空いた水曜20時台を埋めるべく『千鳥かまいたちアワー』が選ばれたことになる。他局のテレビマンにしてみれば、「それは日テレの都合であり、頼られた千鳥とかまいたちにとっては、必ずしも歓迎すべきゴールデン昇格ではない」ように見えるのかもしれない。
その他局のテレビマンたちは、「日テレは最も数字にシビア」で「視聴率がとれていないと判断したらすぐに改編する」という目で見る人が多い。実際、昨春の新番組では、前述した『with MUSIC』が移動し、『世界頂グルメ』(水曜22時台)は終了と、わずか1年で見切られている。
お笑いはもちろんトーク、ロケ、グルメ、音楽、スポーツと何でもこなす「テレビの申し子」のような千鳥と、テレビに加えて芸人最高峰のYouTubeチャンネルを持ちネットからの流入や配信再生も期待できるかまいたち。頭1つ抜けた存在感と技術があるとは言え、好みの多様化や細分化が進むこの時代に、これほど頼った起用をすることが正しいのか。次の改編となる秋までの半年間で、早くも成否が突きつけられてしまうのではないか。