あらためて松田の歩みを振り返っていくと、フジテレビは他局に先駆けてフィーチャーしてきた歴史がある。
まずブレイク前から『痛快TV スカッとジャパン』のエピソード俳優として起用。さらに『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』でSnow Man・向井康二の「マッサマン」と共演させ、「マツダマン」としてキャラクター化させたほか、今年1月からレギュラーに昇格させた。
それ以外でも、昨春に帯番組『ぽかぽか』の月曜レギュラー、昨秋と今春にクイズ番組『今夜はナゾトレ』のシーズンレギュラーとして起用、『酒のツマミになる話』では常連ゲストに。ドラマでも2020年秋の月9ドラマ『監察医 朝顔』第2シリーズの初回メインゲストに起用したほか、昨夏のゴールデン帯ドラマ『ビリオン×スクール』に主要生徒役としてオファーし、今回の主演につながる伏線を張っていた。松田はテレビ出演の多くをフジテレビが担ってきたと言っていいだろう。
そして注目すべきは、松田を見る視聴者の目線。STARTO ENTERTAINMENTの若手人気タレントのファンは多く、Snow ManやSixTONESはその最たるところだが、両グループのメンバーと松田の支持層は違うように見える。
そもそも彼らはアイドルだけに発信力のある熱心なファン層に支えられていて、特にSnow ManやSixTONESなどはその人数が多いのだが、松田への支持はむしろライト層のほうが厚いのではないか。現在は「アイドルに興味はないし、ダンススキルのすごさも知らないが、松田の明るさ、感じの良さ、人懐っこさに好感を持っている」という人がジワジワと増えてきたタイミング。苦境にあえぐフジテレビにとってはそんな松田の類いまれな好感が救いになる可能性がありそうだ。逆に松田としても地道に起用し続けてくれたフジテレビに恩返しするタイミングのように見える。
『人事の人見』は、月曜21時台の『続・続・最後から二番目の恋』、木曜22時台の『波うららかに、めおと日和』とともに、「フジテレビに問題はあったけど、こんなドラマを作れるなら再生してほしい」などと風向きを変えられるかもしれない。
求められる本物のおバカキャラ
最後に男性タレントの“おバカキャラ”に話を広げると、『クイズ!ヘキサゴンⅡ』(フジ)などでつるの剛士や上地雄輔らが活躍した2000年代と比べ、最近は視聴者の関心を集めることが難しくなった感がある。
現在も『呼び出し先生タナカ』(フジ)で横川尚隆や島太星らがそのポジションを担っているが、「笑われているだけ」というニュアンスのコメントが見られるなど、かつてほどのインパクトや好印象は得られていない。
また、一般視聴者は「必ず1~2人はおバカキャラがいる」というアイドルグループの売り出し方に食傷気味。天然系、宇宙人系などタイプの違いこそあれ、「またか」「内輪ウケ」などとみなされるケースが増えていた。
もともとおバカキャラの消費期限は数年間と言われ、「活躍中に次のキャラクターを考えておかなければ生き残っていけない」のが業界の常識。例えば、つるの剛士は「歌うまキャラ」「理想のパパキャラ」などにシフトすることでたくましく芸能界を生き抜いている。
そんな中で、出川哲朗のように世代不問でにじみ出る人柄の良さや人懐っこさなどを感じさせなければ、おバカキャラとして受け入れられるのは難しいだろう。例えば「年下のかわいい後輩、面白い同年代、親近感が持てる年上の先輩」と世代を問わず好印象を与えられるか。その意味で松田は『M-1グランプリ2024』(ABCテレビ・テレビ朝日系)で準優勝に輝いたバッテリィズのエースとともに、広く国民に受け入れられそうな“本物のおバカキャラ”というオーラを感じさせられる。
その「広く国民に……」という点で注目したいのが5月1日公開のアニメ映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』。同作で松田は主人公のらいおんくんを演じる。あの幼児から高齢者までが知るらいおんくんにハマりそうなタレントが果たしてどれだけいるのか。こちらも人見廉と同様に松田ならではの演技を見せて支持を集めそうなムードが漂っている。