9月29日夜、「手越祐也が『イッテQ!』復帰へ」というニュースがネット上で最大の話題となっていた。

これは『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)の最後に流れた「近日公開」という予告映像によるもの。まず恒例の祭り企画へ「内村光良が6年ぶりに参戦」することが発表され、さらに宮川大輔に手越が巨大網で捕獲されるシーンが映され、「男3人祭り 乞うご期待」というテロップで締めくくられた。

手越は2020年4月、コロナ禍による緊急事態宣言が発出されていたにもかかわらず、飲食店への外出や女性たちとの飲み会を開いていたなどと報じられ、6月に当時のジャニーズ事務所と契約解除し、NEWSを脱退。同番組への出演も消滅していただけに、4年半もの時を経て復帰を果たすことになる。

ネット上にはさまざまな声が飛び交っているが、日テレ、番組、手越、ひいては他局にとって、手越の復帰は何を意味し、どんな今後につながっていくのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 手越祐也

    手越祐也

数字を得るための最善を尽くす

日テレはこのところ、旧ジャニーズ事務所に所属していたタレントを起用し、STARTO ENTERTAINMENTのタレントと共演する機会が続いている。

今春スタートの新番組『with MUSIC』はその最たるところ。なかでも9月14日の放送では、STARTOのSUPER EIGHTとWEST.、CULENの稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾、TOBEのNumber_iが出演してX(Twitter)をにぎわせた。

その他でも7月6日の大型音楽特番『THE MUSIC DAY』にSTARTOの7組に加えて、旧ジャニーズ事務所を退所した山下智久とNumber_iが出演。さらに、STARTOと共演の有無を問わず、三宅健、北山宏光、IMP.らが日テレの番組に出演している。

また、LDH(三代目J SOUL BROTHERSなど)、BMSG(BE:FIRSTなど)、LAPONE(JO1など)、HYBE(&TEAMなど)、K-POPなど、さまざまな芸能事務所の男性グループを大量キャスティングし、STARTOとも共演させている。

STARTOはタレントの意向に沿うマネジメントを前提にしているため、旧ジャニーズ事務所に対する昨年までの配慮が不要になったことは間違いのないところ。それでも「影響力の大きさを考えると、STARTOの優先度は芸能事務所の中でもトップであり、コア層の個人視聴率を得るために彼らを大切にしている」という様子がうかがえる。

現在の日テレは「コア層の個人視聴率を得るための最善なキャスティングをしていく」という妥協なきスタンスなのだろう。その点、手越は多少の否定的な声こそあっても、話題性の大きさで数字につながるかもしれないという期待感がある。

これくらいのトライは当然のレベル

他局以上になりふり構わぬ制作姿勢に見えるが、ビジネスである以上、本来はこれが当然の戦略。動画配信サービスやYouTubeはもっと自由かつ大胆、露骨かつ不敵なキャスティングをして影響力を高めようとしているのだから、民放ばかりが窮屈な思いをしている場合ではないだろう。

特に日テレは9月18日の改編説明会で、4月クールの視聴率がふるわなかったことや戦略の見直しを明かしており、なりふり構わず数字を追い求めるという制作姿勢がうかがえる。

手越の起用に関しても、「これくらいのトライは当然のレベル」であり、「うまくいかなければ次は呼ばなければいい」というだけの話にすぎない。そもそも『イッテQ!』にSTARTOの所属タレントはほぼいないだけに、「過去の実績があり、禊ぎとして認められそうな一定期間が過ぎ、本人のモチベーションが高いのなら、一度試す価値はある」のは確かだ。

『イッテQ!』に限らず旧ジャニーズの退所者とSTARTOの所属タレントは「同日出演」というだけで、パフォーマンスでコラボしたり、トークを交わしたりなどのシーンは極めて少ない。昨年からの反動で、現在は「同日出演」というだけで話題性につながっているが、この程度の仕掛けでは年内にも飽きられるだろう。

ただ、日テレに限らず放送収入減に悩まされる現在の民放各局なら、視聴率や配信再生数を取るためにコラボやトークなどの一歩進んだ共演を進めていくのではないか。

手越のような単独出演も同様で「退所者の民放出演は普通」というムードになり、ネット上で騒がれることは減っていくはずだ。手越は退所者の中でも、たびたび週刊誌をにぎわせるなど「好感度の低さから最も復帰は難しいのではないか」とみられていた。

しかし、今回の出演予告が報じられると、「手越ってそんなに悪いことしたの?」「当時はコロナ禍に突入したばかりで異様な懲罰ムードだった」などの擁護の声も目立っている。「手越でこのくらいの反応なら、他の退所者をもっと呼んでもいいかもしれない」と感じたテレビマンは多いかもしれない。