民放各局で夏の音楽特番が放送されている最中だが、反響の大きさは別次元。「完全に突き抜けた」と言っていいかもしれない。13日に生放送された『音楽の日2024』(TBS)は8時間終始、ネット上を賑わせ続けていた。

しかもその声がおおむね好評だった。アーティストのパフォーマンスはもちろん企画・構成、MCなどさまざまな点がよかったのだろうが、具体的にどこが他の音楽特番より優れていたのか。あらためてその内容を振り返りながら、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 『音楽の日2024』総合司会の安住紳一郎アナ(左)と中居正広

    『音楽の日2024』総合司会の安住紳一郎アナ(左)と中居正広

冒頭の赤坂パレードから気合い十分

オープニングでMCの中居正広が「東日本大震災の年から『音楽の日』は始まりました」、安住紳一郎アナウンサーが「14年目を迎えました今年のテーマは『hope! 音楽のチカラ』です」などとコメントしていた。このコンビに『CDTV ライブ!ライブ!』の江藤愛アナウンサーを加えたトライアングルの進行は、他局音楽特番の追随を許さない安定感と安心感がある。

トップコーナーの「赤坂オープニングパレード」にいきなり驚かされた人も多かったのではないか。一番手の超特急からINI、JO1、新しい学校のリーダーズ、郷ひろみらが黄色い歓声をあびながら赤坂を歩き歌う演出は圧巻。手を伸ばせばふれられる距離感でファンたちを巻き込み、冒頭からお祭りムードは最高潮に達していた。

彼らのファンではなくても「何かすごいことをやっている」「アーティストもファンもエキサイトしているのがわかる」、そして「この特番でしか見られないものなのだろう」というニュアンスが伝わっただろう。当日まで雨の不安があったが、そんなリスクを承知でド派手な屋外ライブに挑むスタッフの気合いが伝わってくる。

次に、日本全国を中継で結ぶ「希望の地から歌う希望の歌」は音楽特番にありがちな企画だが、これも他とのレベル差を感じさせた。種子島からの先進レーダ衛星「だいち4号」搭載ロケット打ち上げと三浦大知のコラボを筆頭に、岩手のHIPPY、能登のFUNKY MONKEY BABY’S、日本武道館の爆風スランプ、東京タワーのスガ シカオ、神戸のLittle Glee Monster、熊本のWANIMA。

なかでも感動的だったのは、能登の人々がひまわりを掲げながら合唱した「あとひとつ」と、「奇跡の一本松」の前で地元中高生が肩を組んで歌った「君に捧げる応援歌」。どちらも、現在を生きるウソのない姿を映し出し、未来に進む様子を後押しするような温かさを感じさせる演出だった。これが15時台、17時台という視聴者が限定される時間帯だったことがもったいないと思ってしまう。