あるNHKのスタッフに聞いた話では、「『朝にフィットする人材なのか』という見極めをオーディションで行う」などの意味合いもあるという。

すでにゴールデン・プライム帯のドラマやCMに起用されている俳優でも、朝は視聴者層やムードが異なる上に、「#反省会」を筆頭にSNSの追及が厳しい。「総合的に見て現在の朝ドラ主演として大丈夫なのかを確認する」という意味合いもあるのだろう。

さらに言えば、オーディションの場を「作り手と演者によるコミュニケーションの第一歩」と考え、今なお「大切にしたい」と考えるスタッフもいる。また、実際に会話を交わし、演じてもらうことで、演出家や脚本家が「演出・脚本のイメージを確認しておきたい」というニュアンスもあるようだ。

もう1つ触れておかなければいけないのは、「キャスティングのケースでも、実質的にオーディションの要素がある」こと。例えば清原果耶は、「『あさが来た』『精霊の守り人』『透明なゆりかご』『なつぞら』『蛍草 菜々の剣』などに連続起用すること自体が朝ドラヒロインのオーディション」という感があった。

つまり、「若手女優を継続的に起用して、任せられるタイミングになったら朝ドラ主演を託す」(逆に任せられなければ朝ドラ主演はなし)という長期的なオーディションを行っているように見えるのだ。

  • 清原果耶 撮影:島本絵梨佳

その意味で明確な意図が感じられるのは、「オーディションで、重圧の大きい主演は実績のある俳優を選び、そこまでではない助演はフレッシュな俳優を抜てきする」という形が定着しつつあること。主演のオーディションから助演も発掘しているのだが、「もし主演に選ばれず助演に留まったとしても、今後の朝ドラ主演に向けたオーディションは続行されている」と思ったほうがいいかもしれない。

最後に話を『ばけばけ』に戻すと、前作の『あんぱん』も、やなせたかしの妻・小松暢が主人公の物語で、“作家を支える妻”というコンセプトが続くことに気づかされる。明治・昭和と時代背景こそ違うが、2作目の『ばけばけ』は、より主演のフレッシュさが求められるかもしれない。だからこそオーディションが鍵を握っているように見える。