しかし、その器用さと集中力はバラエティという別のフィールドでも力を発揮し、森川の知名度を上げ続けている。
『どうなの課』では、石を積み上げていくロックバランシングで達人が半年かかった技を3分で成功させたり、テーブルクロス引きでは最高難度の5段タワーを1回で成功させたり、石の水切りでも日本王者をしのぐ記録を樹立。その他、ダイス・スタッキング、アーチェリー、ビリヤード、ヨーヨー、皿回し、クレーンゲーム、ゴム銃、カード投げ、ペン回し、ブーメランなどでも、超高難度の技を超速でクリアしていく姿で視聴者を驚かせてきた。
今回、スポーツスタッキングで金・銀・銅メダルを獲得したことで、タレントとしての価値がワンランク上昇したのは間違いないだろう。制作サイドは「ワイルド・スピード森川」というキャラを前面に出しているが、「決してスピードだけでなく、集中力を持続できる」「さらに強い意志を持って大きな挑戦ができる」ことを多くの人々に見せられたことは3色のメダルよりも大きいのではないか。
森川が得たのはメダルという勲章だけでなく、「これまで以上の挑戦も、難役のオファーも、『私はできる』と自分を信じ、集中して挑む」という姿を見せられたこと。単に「器用で集中力がある」という人ではなく、「継続した努力もできる」し、「もっと大きなハードルを越えられるかもしれない」という期待を抱かせられる。
さらに、森川は以前にもアジア大会への挑戦を提案され、一度断ったことを明かしていた。「他の作品に入っていて時間がなかった」「やるんだったら本気でやらないと選手の方に申し訳ない」などの理由も、彼女の評価を高め、今後の期待感につながるものだろう。
■「若年層女性と海外配信」の新たな強み
『どうなの課』における森川のチャレンジは、これまでの芸能人とは一線を画すレベルであり、実際ネット上に「堺正章をしのぐ」「ミス・かくし芸」なんて声もあがってきた。もちろん彼女自身の類いまれな力あってのことだが、これほど多くの成功を重ねられたのは、中京テレビ制作サイドとの信頼関係も大きいのだろう。
あるドラマプロデューサーと森川について話したとき、「『この子はうまい』とか『できる』とかではなく、『この子ならもっとうまくできるかもしれない』と思わせてもらえるところがすごいよね」と言っていた。その理由には個人差があれど、バラエティにしろドラマにしろ、制作サイドにそう思わせる何かが彼女にはあるのだろう。制作サイドから期待され、全力で応えることで信頼につなげていく……こう書くと簡単に見えるが、バラエティでもこの関係を築ける女優はめったにいない。
近年は舞台出演に力を入れて「演技者としての幅が広がっている」という声もあがっているだけに、来年以降はこれまで以上に「こんな役をやらせてみたい」という熱烈なオファーが届くのではないか。
森川は現在28歳だが同年生まれには、川口春奈、土屋太鳳、松岡茉優、川栄李奈、奈緒ら主演級女優がズラリ。連ドラでは器用さと幅広い表現力から助演として重宝されがちなところがあったが、そろそろゴールデン・プライム帯の民放初主演や、朝ドラ主演を飾っても驚く人はいないのではないか。
地道に出演作を重ねて演技を磨き、バラエティで新たな魅力を見せつつ顔を売り、ネット上でも注目される機会が増えた森川は、性別年齢を超えたファン層を持つ女優になりつつある。ファッションをフィーチャーされる機会が増え、写真集が発売5日で重版されるなど、同性からの支持が高まっているほか、アジア大会では中国人から「中国で有名です」と言われ、韓国や台湾の人々からも声をかけられたという。
今後は、その若年層女性に向けたインフルエンサーであり、海外への配信再生でも実績をあげられることが新たな強みとなっていくだろう。