各スポーツの“ファン層”は日ごろDAZNやスカパー!などで試合を見ているため、選手、技術、戦術、世界との差などの理解度が高い。一方、テレビ放送される世界大会の視聴ターゲット層はこれらの理解が総じて低い“にわか層”であり、両者の二極分化が進んでいる。
テレビ局としては、その両者をできるだけ満足させる放送にしなければいけないのだが、そのバランスが難しい。基本的にどのスポーツも、人数で勝る“にわか層”に向けた放送になりがちで、そのスポーツや選手への思い入れが深い“ファン層”から批判を浴びるケースが目立っている。
例えば、過剰な選手の持ち上げやキャッチフレーズ、対決ムードの大げさなあおり、実況の絶叫、応援タレントの人選など、長年批判され続けているものが、なかなか改善されていかない。しかも厳しいのは、これらが狙っているはずの“にわか層”にも届いていない感があること。
何らかのマーケティングに基づいたものなのか、それともアナウンス室やスポーツ局の悪しき習慣が続いているのか。「“にわか層”を引きつけながら“ファン層”も満足させる」という放送のバランスを見つけられないことに不安を感じてしまう。もしこの状態が続いたら、「日本代表の世界大会もDAZNなどの有料動画配信サービスで見たい人がますます増える」というリスクにさらされている。
とりわけネットで触れられる情報が増え、スポーツの実況アナウンサーや応援タレントを見る目は厳しくなっている。日ごろ見ている“ファン層”でなくても「応援タレントより詳しい」という人が増える中、サッカーにおける影山優佳に近いレベルが求められるようになっているのかもしれない。
■広瀬すずや櫻井翔の出演はアリか
では、バスケットボールの広瀬すずはどうなのか。ラグビーの櫻井翔と上田晋也はどうなのか。
「他スポーツより体格差の影響が大きい」と言われ、苦戦していたバスケットボールやラグビーの日本代表が強くなり、世界で活躍できるスターが誕生。選手たちを見る人々のグローバルな理解レベルが上がっているだけに、応援タレントの是非はさておき、制作側と出演側のレベルが問われるようになっているのは間違いないだろう。
そもそもテレビでの世界大会放送には、放送時間の調整やレギュラー番組の休止などのハードルがある。例えば、試合時間が延びたときの対応や、放送を延長することになったときの批判。それ以前に、連ドラなどの放送間隔が空くことへの対応や批判もついて回る。
「本当にその時間帯に地上波で放送すべき試合なのか」というセレクトはもちろん、「有料動画配信サービスではなく地上波テレビで放送するメリットはあるのか」という技術や演出などの説得力も欲しいところだろう。とりわけ後者の技術や演出は、今後テレビが動画配信サービスに勝って選ばれていかなければいけないところであり、スポーツ番組放送の未来を左右するのではないか。