そんな不満を言いたくなる人も、すべてダメと言いたいわけではなく、実際のところ「見たコーナーが面白かったら何も言わない」のではないか。

しかし、『24時間テレビ』は、難病、被災、事故、追悼らをベースにしたエピソードやチャレンジ企画が多くを占めているだけに、他の番組以上に好き嫌いがハッキリ分かれやすい。嫌いな人はそれぞれの演出も「お涙ちょうだい」「感動ポルノ」と言いたくなってしまうのだろう。

なかでもチャリティーマラソンは、これまで以上の厳しい目にさらされる可能性が大きい。

『FNS27時間テレビ』の100kmサバイバルマラソンは、「必要以上に休憩時間を取らず100kmを走ったらいつゴールできるのか」という主旨で行われ、6人の芸能人が16~17時間でゴール。さらに、倉田大誠アナが「フィナーレにゴールがなくても感動できるのか。テレビの前のみなさまいかがでしたでしょうか?」「大型生放送のフィナーレにゴールをしてしまいますと、マラソンを頑張った人の感動と、やりきったMCの方々の感動がごっちゃになってしまうと思います」などと実況したことが物議を醸した。

つまり、例年のように「番組終了ギリギリでゴールするかしないか」という演出が通用しづらくなったのだが、日テレはどんな対策を用意しているのか。猛暑が続いている上に、ランナーを当日発表する必然性、ひいてはチャリティーとマラソンの関連性を含め、あらためて存在意義が問われるだろう。いずれにしても、精神と肉体、そして世間の目……ランナーの負担は大きく、その人選は難しく気になるところだ。

出演者絡みの逆風に加えて、明るい企画で押し切った『FNS27時間テレビ』の評判が良かっただけに、チャリティー番組としてだけでなく、多くの人々の目にふれる長時間生放送番組としての是非が問われるかもしれない。

  • 10年連続で総合司会タッグを組む水卜麻美アナ(左)と羽鳥慎一

■誇っていいレベルにある“募金の質”

それでも今年の放送後、何らかの理由で批判にさらされたとしても、現実的に日テレが『24時間テレビ』を終了させることは考えづらい。

実績、功績、親近感、知名度、影響力など、さまざまな点でこの番組に比肩するチャリティー番組は見当たらない。番組に限らずチャリティー活動全般で見ても、『24時間テレビ』ほどメジャーで多くの人々やお金を動かせるものはあるだろうか。富裕層だけでなく子どもたちが募金箱を抱えて会場に駆けつけるなど、“募金の質”という点でも関係者が誇れるレベルにある。

さらに、日テレやネット局にとってのメリットは収支面だけではない。「局員やネット局の連携・結束を深める」という実務面での効果があるほか、地域や住民とのコミュニケーション機会も確保できる。実際、日テレとネット局の局員に話を聞くと、彼らにとって一年の節目となる貴重なイベントであり、個人と組織の強化につなげてきたという。

それでもネットの発達で物言う人々が増えた今、チャリティーに対する人々の目は、『24時間テレビ』がスタートした45年前の1978年とは比べものにならないほどシビアになっている。前述したように“純粋なチャリティー”を求める声は多く、多様性の尊重が叫ばれる今、これまで通りの座組みや演出で通用するのか。長年同じ形を踏襲してきただけに、今年の放送がターニングポイントになるかもしれない。

ビジネスとエンタメのバランス感覚に長けた日テレが、今年の逆風をどのように切り抜けようとするのか。否定的な声も出るだろうが、唯一無二のチャリティー番組として、今年の放送で変化や進化へのきっかけをつかんでほしいところだ。