民放公式テレビ番組配信サービス・TVerの再生数が右肩上がりで伸び続けている。3月に月間動画再生数が初めて3億回を突破したことが報じられたばかりだったが、翌々月の5月には3億5,877万回を記録。これは前年同月比の約1.8倍にあたる数値であり、月間ユニークブラウザ数も過去最高の2,800万を超えたという。

その中心を担っているのはドラマで、先日発表された今年1~3月期の番組再生数ランキング(上位20位)でも、1~9位と11位~14位を独占。しかし、このところ全体再生数の増加とともにバラエティの数値もジワジワと伸び始めている。

どんなバラエティがどんな理由からランクインしているのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • (左から)ダウンタウン、蛍原徹、マツコ・デラックス

    (左から)ダウンタウン、蛍原徹、マツコ・デラックス

■「人より企画」だからこその期待感

1~3月期の番組再生数でドラマの中に唯一食い込んでいるのが、10位の『水曜日のダウンタウン』(TBS)。2年連続で「TVerアワード バラエティ大賞」を受賞しているだけに、頭1つ抜けた存在であることは間違いないだろう。

それ以外では15~20位にそれぞれ、『King & Princeる。』(日本テレビ)、『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ)、『アメトーーク!』(テレビ朝日)、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)、『上田と女が吠える夜』(同)、『ラヴィット!』(TBS)がランクインした。

『水曜日のダウンタウン』『アメトーーク!』『月曜から夜ふかし』の3番組は、「今週は何をやるのかな」という企画に対する期待感が高い番組として知られている。だからこそ、いつでも見られる配信であるにもかかわらず「リアルタイムかそれに近いタイミングで見る」という人が多く、TwitterなどSNSの動きも活発。つまり、予告映像を見て期待感をつぶやき、放送中に反応のツイートが飛び交い、終了後もリツイートやネットメディアの記事があがるため、後追い視聴をうながせる。

多くの人々にとって必ずしも、『水曜日のダウンタウン』は「ダウンタウンの番組だから見ている」、『月曜から夜ふかし』は「マツコ・デラックスの番組だから見ている」というわけではないだろう。「配信では“人”より“企画”重視で選んで見る人が多い」と言われるが、その代表格がこの3番組なのではないか。特に『水曜日のダウンタウン』は、「配信でありながら、ルーティーンのように毎週同じ時間帯に見てもらえる」という異次元の存在に見える。

次に、『人志松本の酒のツマミになる話』と『上田と女が吠える夜』は、「好きなタイミングで見られる」という配信の強みを生かし、視聴者のライフスタイルに寄り添えることが大きい。どちらもグループのトークバラエティだが、たとえば前者は放送日の金曜夜から日曜夜の間で、自分が酒を飲むタイミングに合わせて見る。後者は放送日の水曜夜から金曜夜にかけて、平日のストレスを解消したいタイミングに見る。

自分のタイミングに合わせて楽しみやすいコンセプトの上に、トークの多くが他番組では言わないものに限定され、さらに「どんな話題でも最後は笑い飛ばす」という明るさが配信でウケているのだろう。

ちなみに、メンバーの脱退が絡んだ『King & Princeる。』と、平日午前の帯番組である『ラヴィット!』は、背景や条件が違いすぎるため参考外としておきたい。