だからこそ有料の壁を壊すために鍵を握りそうなのは、NetflixにおけるWBCのようなライブコンテンツ。
たとえば、『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)のような大喜利コンテストや新たなネタの賞レース、あるいは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ系)などを大々的にPRした上で生配信する。
もっと言えば、ダウンタウンが毎年〇月〇日に生配信で漫才を披露したら、同時刻に多くの人々を集め、国民的コンテンツとして盛り上がるかもしれない。さらに言えば、年1~2回レベルのビッグコンテンツなら、非会員価格を設定したペイ・パー・ビューを行ってもいいのではないか。
実現が難しいのは承知だが、「これらを収録で配信するだけではテレビと同じ」というだけ。やはり「『DOWNTOWN+』はこれくらいのことをやってくれる」という期待感や信頼感を得ていくことが成功につながるのだろう。
ちなみに『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』はすでに過去回が「DOWNTOWN+」で配信されているが、仮に同番組が正式に“移籍”したとしても、世間への効果は限定的だろう。その理由は、やはり「テレビと同じだから」であり、テレビとネットで新しいコンテンツが次々に制作されていく中、既存ファンを確保していくことが精一杯のように見える。
そしてもう1つ可能性を感じさせられるのが、視聴者参加型のコンテンツ。すでに『お笑い帝国大学』『きもっち悪いダンス選手権』という2つの企画が発表されているが、視聴者参加型のコンテンツは、テレビも他の有料配信もウィークポイントだけに、ここで幅広い層をつかんでおきたい。松本は生配信で何度か「潤沢な資金がある」と語っていただけに、ここに最高レベルの賞金や特典をつぎ込むことでモチベーションを上げてほしい感もある。
人気を得るほど不可避なリスク
元放送作家の鈴木おさむが「DOWNTOWN+」について、「エンタメのゲームチェンジをするんじゃないか」などと語り、多くのネットメディアが報じていた。ただこれは「その可能性がいくらかある」というレベルに過ぎないだろう。
松本が生配信で「地上波が窮屈になってしまっている」と語っていたが、スタッフも含めてテレビ側の人間にとって「DOWNTOWN+」のような自由度の高い制作環境は憧れや理想に近いのではないか。
他のコンテンツを見ると、“本”の紙から電子への移行は「電子書籍元年」と言われる2010年から現在まで15年もの時間をかけてゆっくりとしたペースで進んでいる。その点、今回は“放送から配信”だけでなく“無料から有料”への移行だけに劇的な変化は考えづらいところがある。当然ながら、その間にも地上波やYouTubeなど無料のお笑いコンテンツが放送・配信されていくため、「これで十分」という人の心と財布を動かすのは簡単ではない。
また、もし「DOWNTOWN+」が今後も爆発的に有料会員数を増やし、世間への影響力を増したら別の問題が浮上するだろう。その問題とは、現在の地上波と同様の厳しい視線であり、出演者の一挙手一投足がクレームの対象となり得ること。登録者数十万人レベルのYouTuberがモラルを求められはじめているように、今後は「放送ではない」「有料配信のみ」というだけで表現の幅が守られるわけではないのだろう。
「成功するほど世間の目が厳しくなっていく」というジレンマ。それは個人が自由に発信できる現代の世の中では避けられないことであり、誰より芸能界トップに君臨してきた松本自身が最も理解していることなのかもしれない。