21日夜、9日間にわたる『東京2025世界陸上』(TBS系)が閉幕した。最終日夜の視聴率が個人12.8%・世帯19.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、19:00~22:54)を記録するなど、地元開催を追い風に「日本中が盛り上がった」と言っていいのではないか。
大会終了後、アスリートたちへのねぎらいとともに目立つのが、大会スペシャルアンバサダーを務めた織田裕二に対する声。織田は20日に生放送された『情報7daysニュースキャスター』で今大会限りでの卒業を明かし、21日の最後には放送尺ピッタリの見事なメッセージで締めくくったことが感動と寂しさを誘っているのだろう。
『世界陸上』にとって織田裕二はどんな存在だったのか。ひいては、令和の現在におけるスポーツ中継と芸能人のあり方をテレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
織田の説明があるから見たくなる
あらためて『世界陸上』における織田の歩みを振り返ると、2022年のオレゴン大会で、1997年から13大会連続・25年間にわたって務めてきた“メインキャスター”を卒業。2023年のブダペスト大会には出演しなかったが、地元開催の今大会は“スペシャルアンバサダー”として復活した。その役割はこれまでとさほど変わらず、「『世界陸上』の顔は織田裕二」という印象で見ていた人が多かったのではないか。
織田は『世界陸上』への出演時に「うるさい」「邪魔」「失礼」などと何度か批判を浴びた過去がある。そのハイテンションな姿は、時に笑いの対象とされたり、テーマソングの「All my treasures」も“織田裕二ゴリ押し”とみなされたりなどの難しい時期を乗り越えたことも、卒業宣言への「ロス」につながっているのかもしれない。
今回もSNSなどには批判のコメントもあり、ネットメディアによる否定的な記事もあったが、もはや『世界陸上』における織田の存在感はそれくらいのことでは揺らがないレベルになっていた。陸上競技への愛情、選手へのリスペクト、入念な情報収集と取材、気取らず本気で応援する姿。そして、主役のアスリートたちが信頼を寄せていることも含めて、別格の存在感につながっている。
地上波のテレビ放送におけるスポーツ中継は各競技のファンだけでなく、いかに「ふだんは見ないライト層を集められるか」が重要。その点、『世界陸上』における織田は、「織田裕二が熱っぽく説明してくれるから、日本人が入賞できない競技でも見ようと思える」という吸引力を感じさせられた。
今大会でも生放送なのに熱く語りすぎてコメントが途切れてしまうシーンがあったが、「うまくしゃべろう」と思う芸能人が多い中、長年の経験を経た今も熱量が先行する織田の好感度は高い。また、それでいて「知識をひけらかさず、アスリートファーストで自分は前に出ない」という一歩引いた姿勢も支持されている。
