テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、コンサルティング会社と会計事務所の代表を務め、スタートアップを中心に会計面・資金調達面からサポートを行っている岡野貴幸氏が「会計の重要性」について解説します。


前回の記事では、スタートアップの資金調達として少人数私募債を中心に書きました。今回は、少し視点を変えて、スタートアップの会計について書いていきたいと思います。

会計情報の重要性

スタートアップでは、何もない所からビジネスを始めるため、サービスを確立する、マーケティングを行う、顧客を増やす、人を採用するといった様々な事項が生じます。その中でも、特に「顧客を増やし売上を増加させること」に力を注ぐ会社が多いです。

売上がなければ会社を維持していくことはできないためそれは当然なのですが、顧客の増加やマーケティングに多くの意識が向かってしまい、会計を疎かにしているケースをよく見ます。

社長の言い分としては、優先すべきは会計や管理よりも営業やマーケティング、会計は大した量でもないから後から整理すればいい、というようなものでしょう。私も経営者としてその気持ちはよく分かります。しかし、早い段階で伸びていく会社は、どこも会計情報を適時・正確に作成しています。

会計の情報は現在の会社の状況を表してくれます。将来の意思決定を行うにあたり、現状どうなっているかを正確に把握することはとても重要です。つまり、伸びている会社はしっかりと現状を把握できている会社と言い換えることができます。

会計の作成フローを最初から意識する

とはいえ、大量の請求書や領収書を整理し、それを会計ソフトに入力していくことは、とても煩雑で多くの時間を取られます。スタートアップではリソースが限られているので、そういった作業はとても重荷になってきます。

そこで重要なのが、取引が生じてから支払、帳簿への反映という流れ(業務フロー)を把握し、それに合わせて会計処理の担当者にどの情報を渡し、どの時点で会計処理を行うかといった「会計フロー」を取引開始前に作成するということです。

一見、むしろ負担が重くなってしまうように感じますが、最初に作ってしまえば後から行う作業は大幅に短縮できますし、ミスも削減できます。上場企業では当たり前のように行われている話ですが、スタートアップの会社でそこまで行っている会社はごく少数です。しかし、伸びている会社は上記の作業をしっかりと行っているのです。

クラウド会計ソフトを駆使する

会計フローを作成するにあたり、会計ソフトに何を使うかは非常に重要になってきます。私はクラウド型の会計ソフトをおすすめしています。クラウド型の会計ソフトの特徴としては、下記の項目が挙げられます。

(1) 銀行口座情報と連動し、リアルタイムで銀行口座の入出金が会計ソフトに反映される。

(2) クレジットカード情報も(1)と同様、リアルタイムで会計ソフトに反映される。現金支払を極力少なくすることにより作業を大幅に短縮できる。

(3) 請求書発行と同時に売上を計上することができる。また相手先別売上高の情報も同時に作成できるようになる。

上記は代表的なものですが、その他にも駆使すればクラウド型の会計ソフトは色々な情報をリアルタイムで作成することが可能です。

会計フローを確立し、リアルタイムに、正確な情報を作成する。これを行うだけで、現状分析と将来の意思決定に役立つ情報を得られ、大きな会社の力となってきます。

執筆者プロフィール : 岡野貴幸

ゴージュ株式会社 代表取締役、ゴージュ会計事務所 代表公認会計士
立教大学経済学部卒業。大学在学時に公認会計士試験に合格。大学卒業後、あずさ監査法人国際部に入社。上場企業の法定監査、国際会計基準導入支援業務を経験。実家は埼玉県で3代続く税理士事務所を経営しているが、ゼロから立ち上げ新しい会計事務所の形を作りたいと一念発起し、2014年に独立。岡野公認会計士事務所(現、ゴージュ会計事務所)を設立。同時にコンサルティング会社であるゴージュ株式会社を設立。成長する企業を会計面・資金調達面からサポートしたい想いから、スタートアップを中心にサービスを行っている。クラウドを駆使し徹底した経理の効率化、事業計画の作成、資金調達を得意とする。