「安くて、旨いラーメンが食べたい」。1杯1,000円を超える高級ラーメンも多いが、お財布にやさしい値段で旨いラーメンが食べられるのなら最高だ。全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター・井手隊長が、安くて旨いアンダー700円のラーメンを紹介する。

初回は埼玉県熊谷の「ゴールデンタイガー」を紹介しよう。


卵かけご飯。通称「TKG」。

卵に醤油をちょこっと入れてチャッチャと混ぜ、ほかほかのご飯にかけて食べる。日本には古くからあるファーストフード的な食べ物だが、2005年頃に「卵かけご飯専用醤油」が大ヒットしブーム化。

卵・醤油・ご飯というシンプルな構成ゆえ、それぞれのこだわりを入れて食べるのが楽しい。専用醤油を使う人もいれば、高級な卵で食べる人も出てきて、近年ではアレンジ系レシピも多数登場し、再ブームが起きている。ラーメン店でもサイドメニューとして提供するお店が出てきており、ブームの広がりを感じる。

そんな「卵かけご飯」をラーメンにアレンジして提供している面白いお店が埼玉県熊谷にある。 「ゴールデンタイガー」だ。

  • 埼玉県熊谷「ゴールデンタイガー」

熊谷は小麦の生産が盛んだったことから、うどんの文化が長く根付いている。 埼玉名物の武蔵野うどんや冷汁うどんも早くから広まっており、町おこし的な広がりを見せている。 「ゴールデンタイガー」はそんな熊谷で「麺」の美味しさにこだわったラーメンを提供したいと2018年にオープンした人気店だ。

JR熊谷駅北口から徒歩5分。店の前に行くと看板に大きく「TKM」の文字が見えてくる。これがここの人気メニューである。

この「TKM」とは「タマゴカケメン」の略。「卵かけご飯」をラーメンにアレンジした「ゴールデンタイガー」オリジナルのメニューである。

「卵かけご飯」と同じく、「TKM」も麺と卵とタレのみという超シンプルな食べ物。シンプルなだけにお値段も650円(税込)とお手頃だ。名前だけ聞くと、スープも取らなくていいしトッピングもいらないかなりの楽々メニューに聞こえる。

しかし、それは大きな間違い。麺とタレが美味しくないとどうにもならないという、全くごまかしの効かない一杯なのである。

麺の真ん中に生卵、そして横にレモンが添えられているシンプルな見た目(鰹節も選べる)。ビシッと揃った麺線がとてつもなく美しい。そして純国産鶏の卵の黄身のオレンジ色の鮮やかさ。麺の下には甘めの醤油ダレが潜んでいる。

見た目の美しさに思わず見とれてしまうが、これを豪快に混ぜていく。卵とタレが全体に行き渡るまで混ぜに混ぜに混ぜるのだ。そして混ぜ終わったところで麺を一気にかき込む。

氷水でしっかり締めた極太麺はコシがあり、歯ごたえが抜群。ここに濃いめの黄身とタレが絡み、得も言われぬ美味しさに。卵のマイルド感が麺を上手くコーティングしているので、醤油の塩味がダイレクトに来ず、とてもまろやかな仕上がりになっている。味変に途中でレモンを搾るのもオススメ。

とにかく麺が旨い。ここまでシンプルだと、麺の旨さとその自信がダイレクトに伝わってくる。「ラーメンの主役は麺なんだ」という店主の主張も伝わってくるような一杯だ。デフォルトで200gとなかなかの分量だが、あっという間にペロリ。まだ食べたいなと思わせてくれる一杯だった。