――改めて、地上波やYouTube、NetflixやPrime Videoといった様々な映像プラットフォームがある中で、ABEMAの強みというのは何でしょうか。
ネット上で質の高いコンテンツを無料で見られるという唯一無二性と品質の高さで勝負していきたいですし、そういう場所だからこそ、今も一線級のクリエイターの皆さんにとっての遊び場になっていることだと思います。ネット屋だからこそできるマーケティングでの貢献をして、“最強のテレビ屋”というようなチームになれればと思います。
――ネット上で見られる無料のプロコンテンツという点では、最近はTVerも伸びていますが、ここと食い合っていくのか、それとも共に市場を拡大するという関係でしょうか。
後者ですね。ABEMAとTVerでは役割が違うというのもありますし、TVerでハネるコンテンツとABEMAでハネるコンテンツは、似て非なるものという認識なんです。かつて地上波を見ていたテレビに愛着がある人たちのデバイスがインターネットになったのがTVerであるのに対し、僕たちはそれよりも若い世代や先進的なものが好きな人たちに対して、ぴったりなオフィシャルの番組をお届けしているので、ライバルというのは違うのではないかと思います。
――地上波に比べてネットのABEMAはコンプラが緩いと言われることもあるかと思いますが、そこについてはいかがですか?
僕らみたいなメディアであるからこそ、コンプラは厳しくしなくちゃいけないと思っています。生々しいものを扱うコンテンツや、一般の方が出る企画も多いので、だいぶ厳しくやっていると思います。そもそも、“コンプラNGのもの”って見たいんだっけ?というのもあります。我々はコンプラ違反をしたいんじゃなくて、本音や熱量を見せたいだけだから、そこは履き違えないようにと常に考えています。例えば、ちょっとバイオレンスなものとか、ハードなものをご提案いただいたり、企画を考えたりされるケースはあるのですが、そういうことではなくて、地上波もできないような熱狂できる芯の部分にアプローチするべきだという話をよくしています。
――3年前に、この連載で谷口達彦さん(当時・編成局長兼制作局長、現・編成制作局長)にインタビューした際、「熱狂の輪を拡大したい」とおっしゃっていて、今年6月に日テレからサイバーエージェントに移籍された柳沢秀俊さんにインタビューすると「ゾーンに対して熱狂を起こしたい」とおっしゃっていました。この「熱狂」というキーワードについては、どのように捉えていますか?
僕は、「熱狂×本音・リアル」が大事だと思っています。ABEMAで当たった番組の共通点を挙げるとしたら、すごく熱狂している主人公や市場があって、そこに本音やリアルが掛け算されているんです。熱狂の種類はそれぞれあって、亀田さんのように命を懸けて戦うとか、本田さんのように絶対日本がワールドカップで優勝すると思ってる人が解説するとか、恋愛リアリティーショーの参加者も本気で恋愛していますし、『愛のハイエナ』で山本裕典さんが過去をさらけ出していくことで青春物語になったり…。その掛け算が自由にできるABEMAでありたいです。
『ガチンコ!』『学校へ行こう!』…根源にある「明日学校で話す番組」
――ご自身が影響を受けた番組を挙げるとすると、何でしょうか?
『ガチンコ!』と『学校へ行こう!』(いずれもTBS)です。大好きで毎週テレビにかじりついて見ていたんですけど、やっぱり今も根源にあるのは、「明日学校で話す番組」なんです。翌日の朝、最速でみんなと話したいっていう気持ちが最も強かった子どもだったので(笑)、そういう番組を作りたいという気持ちがありますし、『ガチンコ!』も『学校へ行こう!』も、ほとばしるエネルギーとリアルというものがテーマに置かれていて、本当に今でも勉強になるなと思っています。リスペクトしながら負けない、いつか並んで語っていただける番組を出したいという気持ちがずっとあって、目標にしています。
――そうなると、『亀田興毅に勝ったら1000万円』という番組が成立した時は、喜びもひとしおだったのではないでしょうか。
うれしかったですね。本当に『ガチンコ!』をリスペクトして作っていたので。あの頃のままやるのは絶対にダメだけれども、今に置き換えるとどういうことなのか、あの頃に『ガチンコ!』の皆さんが持っていた正義はどういうことなのか、というのをすごく考えて、演出や軸やチームの考え方に浸透できるように、言語化を一生懸命していました。
――古賀さん自身は『亀田興毅に勝ったら1000万円』の時と違って、今はマーケティング支援に注力されているということですが、テレビ局志望だったこともあり、本当は演出面にコミットしたいのをグッと我慢されているのか。それともすごいクリエイターの人たちを目の当たりにしてそこには立ち入れないという感覚ですか?
後者が強いですね。本当にすごい演出家の皆さんが多すぎて(笑)。自分がやりたいという気持ちももちろんありますが、やるとしたら、とにかくその人たちの相方になって、伴走役としてどれだけ皆さんが実現したい演出をサポートできるかというところを、自分の今の快楽にさせてもらっています(笑)
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…
日本テレビの廣瀬隆太郎さんです。橋本さんのもとで『有吉の壁』とか、『ニノさん』などレギュラーの番組をやっているんですけど、日本テレビの単発枠で最も企画を通しいてるんじゃないかと勝手に思っています。常に笑いを作ろう、引っかかる企画を作ろうというのをものすごく尖ってやっている印象を持っていますね。
最近だと、100人の顔が出てきて、人生のエピソードからそれに当てはまる顔を探す『100顔』という番組を作っていて、この世界観を作るのが面白いなと思いましたし、ほかにも『さらば森田・見取り図盛山のハイツ東五反田201』とか『カネ梨和也』とか『闇プロモーター粗品』とか、芸人やタレントとしっかり向き合って本質で面白いものを作る若手のホープだなと思っています。
- 次回の“テレビ屋”は…
- 日本テレビ・廣瀬隆太郎氏
