注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。

今回の“テレビ屋”は、きょう5月31日(21:00~22:54)に6回目の放送を迎える日本テレビ系バラエティ特番『グレートコネクション』の企画・演出を務める増田雄太氏。「あなたよりスゴい友達を紹介してください」という質問で数珠つなぎしていくと毎回想像を超える“グレートさん”が登場するが、彼らはそのスゴさを見せるだけでなく、テレビの常識をどんどん壊してくれるのだという――。


■会うまでの過程をすっ飛ばすテンポ感

『グレートコネクション』企画・演出の日本テレビ増田雄太氏

増田雄太
1985年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、08年に日本テレビ放送網入社。『ザ!世界仰天ニュース』『沸騰ワード10』などの番組を担当し、現在は『グレートコネクション』企画・演出、『超問クイズ!真実か?ウソか?』演出、『嵐にしやがれ』ディレクター。

――当連載に前回登場した『ポツンと一軒家』構成作家の中野俊成さんが『グレートコネクション』について、「あの番組のすごいところは、ものすごいテンポでコネクションを見せていくところ。自分だったらもっと丁寧に描くように強く言うと思うので反省しました」とお話ししていました。

いや、自分では結構丁寧に描いてるつもりなんですけど、単純に荒削りなのかな(笑)。でも、この番組は全部を語らなくてもいいんじゃないかというのは意識しています。やっぱり人と人のつながりというのはプライベートなところや神秘的なところがあるし、「こうやって知り合いになって友達になりました」というのを全部言うのは野暮な部分もあるので。だから、視聴者の皆さんが少しだけ考えたり想像できる部分を残したほうが面白いかなと思って、あのテンポの感じになってるのかもしれません。逆に中野さん、教えてください(笑)

――日テレさんと言えば『笑ってコラえて!』の「ダーツの旅」や、『月曜から夜ふかし』など、テンポよくインタビューを見せていく番組が多いので、そういうイズムのあるのかなと勝手に思いました。

僕は今『嵐にしやがれ』で、古立(善之、『月曜から夜ふかし』演出)さんの下でやっているので、編集のテンポ感とか参考にさせていただいている部分はあるかもしれないですね。あと、『ポツンと一軒家』の場合は、目的地に行くまでの過程を大事に描いてると思うんですけど、『グレートコネクション』の場合、おじさんのディレクターの1人リポートなんで画的にキツいですよね(笑)。早く取材対象者にたどり着いて、スゴい人=グレートさんをどんどん見せたほうがいいと思って、グレートさんに会うまでの過程はすっ飛ばしてあのテンポ感で作っています。

――裏を返せば、ものすごい量の素材がある中で、面白い部分を凝縮して出しているということですね。

そうかもしれないですけど、どうですかね(笑)

■「企画に正義がない」と言われて…

――この企画を思いついたのは、どういう経緯なのでしょうか?

若手の頃は、頭の上に1円玉を落とすクイズ番組とか、8時間監禁するクイズ番組とか、催眠術をかけて野球でホームランが打てるか?とかヤバい企画ばっかりやってたんですけど、企画だけじゃなくて視聴率もヤバくて(笑)。で、視聴率とりたいから無意識のうちにどこかで見たような企画とか、情報ネタのV(TR)ばかりをつくるようになっちゃってて、ある時、「なんか増田つまんないね」って言われたんですよ。そうするとムカつくじゃないですか(笑)。そこから一番見えない企画をやろうと思って、「100人数珠つなぎ」っていうのを考えたんです。「数珠つなぎ」って今までテレビでやり尽くされてるけど、100回やったらトンデモない人が出てくるだろうと思って、最初は『100回上げたハードル』というタイトルでした。

それで企画が通って、いろんな先輩に企画書を見せたら「そんな面白い人なんて出てこないでしょ」って言われてまたムカついたんですけど(笑)。ただ、別の先輩に「この企画には正義がない」と言われて、確かにそのとおりだと思って、もう1回考え直したんです。この企画の芯は何かって…。で、当時僕、Facebookであまりカッコよくない男が美人の女性と写ってるのを見るのがすごい好きで(笑)。「なんでこの人たち友達なのかな?」って人いっぱいいるじゃないすか。それでふと「人のつながり」って面白いなということに気づいて“人脈”を見せる番組しようと思って『グレートコネクション』になりました。

――番組を見てると、本当にそんな人脈があるのかと驚かされます。

登場してくれる人は、「あの人が紹介してくれたから」ということで出てくれますし、その人のプライドを守りたいからということで、どんどんいろんなものを見せてくれるんです。前回登場したロスチャイルド家なんて都市伝説でしか知らなかったですし、毎回見たことのないものが出てくるのは驚きですね。

――数珠つなぎってそういう強さがありますよね。この「テレビ屋の声」の連載も、「あの人に指名されたから取材を受けました」と言ってくれる人が結構いるんです。コネクションのトップバッターを探す街頭インタビューは、相当数を当たってるんですか?

いつも広尾で取材してるので、広尾では顔を覚えられてます(笑)。広尾商店街のホームページに「また『グレートコネクション』の取材が始まってます」って載りますから。でも、インタビューを断った人も「頑張ってるね」って声かけてくれて、広尾の人はみんな優しくて協力的でありがたいです。