注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。
今回の"テレビ屋"は、日本テレビのバラエティ番組『しゃべくり007』演出の藤森真実氏。当連載12回目にして初の女性スタッフだが、番組制作において女性目線は意識せず、収録現場の"笑いの臨場感"を大事にして編集しているという――。
藤森真実 |
――当連載に前回登場した『マツコの知らない世界』(TBS)の坂田栄治プロデューサーが、女性として意識して演出している部分はあるのかと疑問に思われ、今回藤森さんの名前を挙げられました。くりぃむしちゅーの有田哲平さんが『しゃべくり007』で、OAで切られると思っていた部分が使われて注意しようと思ったら、その回の視聴率が良くて「すごいな」と評価されていたそうです。
この仕事をしていて、いろいろな人に女性目線があるのか?と聞かれるんですが、私の中であんまりそういうのはなくて、『しゃべくり』でも、自分の演出としての基準を元にやっていますね。一番大事にしているのは、収録でのメンバー7人とゲストのやり取り、笑いの臨場感を崩さずに視聴者に伝わるようにするということ。これを意識して編集していますが、"女性目線"というのは特に考えていないです。
――有田さんが使わないだろうと思っていた部分は、まさにスタジオが盛り上がっていた臨場感を伝えたということなんですね。
そうですね。素直に自分がすごく面白かったから、やっぱり使いたいし、視聴者の人に見てもらいたいと思ったという感じですね。
――OAの演出や編集などについて、出演者とお話されることはあるのですか?
『しゃべくり』は月曜OAで、その次の日の火曜が収録なんです。だから、いつもうれしいことに、私のところに来て「あれ使ってたね」とか「あれを切ったのはどうして?」と聞かれるので、緊張感を持って編集しています。演出として演者の声によってブレてはいけないということもあるんですけど、そういう生の声を直に聞けてコミュニケーションが取れるので、いい意味で刺激を持って編集してますね。特に有田さんは、よく感想を伝えてくれるんですよ。
――7人以外の芸人さんとお仕事される機会もあると思いますが、『しゃべくり』メンバーは、よく感想を伝えてくれる方ですか?
いろんな方とご一緒させていただいてますが、あんまり「あの部分を使ってくれた」といったことは言わない人が多いです。あの7人は本当に番組のことを考えてくれてるんだなというのが、ひしひしと伝わってくるので、もちろん第一には視聴者に向けてですが、7人に対しても恥ずかしいものは作れないなということは、本当に常々思っています。
『しゃべくり007』(日本テレビ系、毎週月曜22:00~23:00) |
――『しゃべくり007』では、レギュラー7人に事前にゲストを知らせていませんが、本番前の打ち合わせはどのようにしているんですか?
実は打ち合わせはほとんどしていないんです。「ゲストが来ます、なにか企画をやります、なんか食べますよ」っていうくらい(笑)。本番では急にミニコントや天丼のやり取りが始まったりしますけど、本当に何も知らされていない7人がその場で展開していく笑いなので、いつも収録の時は「今日何が起こるんだろう」と思いながら臨んでいます。
もちろん、スタッフ側でこのゲストが来たときに視聴者が何を見たいのかを意識した企画の軸は作っておきますが、あとは7人に自由にやってもらっているので、こういういい緊張感を持って毎回収録に臨めているのは、なかなか独特な番組だと思います。
――OA上では、ゲストの登場前に、スタッフの方のカンペで誰が来るのかのヒントを出していますが、このヒントも7人にとってはあのタイミングで知る情報なんですか?
そうです、あれが最初です。だから、いつも不安と楽しみという雰囲気が漂っていますね。
――くりぃむの上田さんは、企画の仕切りもよくやられますよね。それでも、事前に打ち合わせをしないんですか?
はい。その場でカンペを見て、本番中に対応されているんです。それで天才的な仕切りをしてくれているので、本当にありがたいですね。