テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第49回は、9日に放送された日本テレビ系バラエティ番組『行列のできる法律相談所』(毎週日曜21:00~)をピックアップする。

今回はMCに後藤輝基、パネラーに田中美佐子、バカリズム、元木大介、KENZO(DA PUMP)、Niki、東野幸治、宮迫博之、渡部建、磯野貴理子が出演。放送開始から17年を超えた番組の勤続疲労はあるのか? さらに今年世間を騒がせた『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』の騒動による影響はあるのか? などの観点から検証していく。

序盤からマシンガンのように笑いを連射

この回のMCを担当した後藤輝基

ファーストカットは、「ライバルを実名発表」というナレーションと番組内容のあおり映像だった。

元木大介の「〇〇〇スゴイです」というコメントに合わせて、人型のシルエットに「国民栄誉賞」の文字。田中美佐子の「ああいう人になりたいって憧れの人が〇〇〇」にというコメントに合わせて、「大女優」の文字。バカリズムの「お笑いに神に愛されているというか」というコメントに合わせて、「天才芸人」の文字。

「KENZOのダンスのライバルが登場」にナレーションに合わせて、「ライバルF」と「世界一のコラボダンス」の文字。「テラスハウスの美女モデルが炎上」のナレーションに続けて、後藤「男前とか好きでしょ?」、Niki「けっこう内面派」、後藤「ウソつけ~! 絶対ウソ!」。超速のあおり映像で、質とボリュームの両面を見せ、視聴者の期待感をあおった。

スタジオに降りてのトークは、田中と夫・深沢邦之の夫婦生活からスタート。話はすぐに変わり、田中はライバルとしてテニスのジョコビッチ選手を挙げて熱弁をふるったあと、後藤「何でライバルなん?」、田中「テニスをはじめたんです」のオチで笑わせた。

続いて、バラエティ慣れした元木とバカリズムが盛り上げながら笑いの種を蒔いて、KENZOとNikiのトークにオチを提供。序盤から話題を次々に変えながらマシンガンのように笑いを連射していく構成は、緻密な計算と蓄積された編集ノウハウなど、スタッフの力によるところが大きい。

ここでようやく弁護士軍団が登場したものの、北村弁護士が「クランプ世界一に輝いた10歳のキッズダンサー・嶋内ひなたちゃんを紹介する」という無理のある展開。スタジオに登場させて、KENZOと「U.S.A.」を踊り、さらに社交ダンスの得意なアシスタントの市來玲奈アナも前に出した上で、後藤の「子どもより目立つな!」というツッコミで爆笑をさらった。

このくだりは今回のテーマから大きくかけ離れてはいるが、「KENZOと市来アナという出演者を生かすには?」という“キャストファースト”に基づいたもの。スタジオを広く使った動きのある笑いは、オープニングとして理にかなっていた。

毎分単位で笑いを入れる“行列4人衆”

ようやく本編に入っていくのだが、スタジオトーク前の振りとなるVTRの作りこそ、『行列』の真骨頂だろう。

たとえば、田中のVTRでは「これまで出演したドラマ・映画は90本以上。ドラマ『獣になれない私たち』にも出演中」という実績やキャスティングの必然性をじっくり紹介しつつ、「さかな検定」のライバルとして渡部建、女優のライバルとして桃井かおりをあげた。

桃井の再現ドラマに椿鬼奴を起用してひと笑いさせつつ、続けざまに「そんな田中さんが弁護士軍団に相談したいこと」として、「犬の散歩中におしっこをかけられた。飼い主にクリーニング代を請求できる?」という映像を差し込んだ。

その上でスタジオに戻ってフリートークになるのだが、ここからは東野幸治、宮迫博之、後藤輝基、渡部建の“行列4人衆”が盛り上げる。たとえば、東野、宮迫、後藤の3人が渡部に「魚に謝って。5文字に1回“ギョ”を入れながら」とムチャ振りしたり、「(プライベートでかぶっている帽子をネタに)本当のスナフキンじゃない!」イジリをしたり、何度となくおなじみのグループトークを見せた。

番組の象徴であった元MC・島田紳助の降板は当時衝撃的だったが、世間が「傑出した個人の力よりチームワークをよしとする」という風潮に変わったことも追い風になり、この4人衆がフィット。制作サイドにとっても、「毎分単位で笑いを入れられる」という意味で計算の立つメンバーなのだろう。

その後も、KENZOがオリエンタルラジオ・中田敦彦の弟でダンサーのFISHBOYと世界王者同士の共演を披露し、Nikiが「何をやっても炎上してしまう」という天然あざといキャラで集中砲火にされ、元木が松井秀喜のすごさをしみじみと語るなど、ネタの振り幅が大きく、まさに老若男女に対応したトーク番組となっていた。

視聴者にしてみれば、「なぜこの人が出演しているのか?」に納得できるため、「『行列』を見ておけば世間で話題の人がだいたいわかる」という感覚を持てる。「『行列のできる法律相談所』という看板に偽りアリ」なんてことは、もはやどうでもいいのだ。

その意味で「勤続疲労は?」という不安は、さほど気にしなくていいだろう。旬の人物は放っておいても毎月ごとに出てくるし、いい意味で彼らを消費しながら続けていくことが可能。「日曜21時には『行列』がある」という認知度は高く、裏番組に同系のライバルはいない。番組のコンセプトこそ大きく異なるが、視聴者目線での存在感としては、同じ日テレの『踊る!さんま御殿!!』と似た立ち位置なのではないか。

全編で漂う“宣伝臭”をどう消すか

最後に、「今年世間を騒がせた『DASH』『イッテQ!』の影響はあるのか?」についても考えておきたい。

これまで視聴率レーストップを走ってきた「王者・日テレ」の象徴は、日曜夜の『DASH』『イッテQ!』『行列』だったことは自他ともに認める事実。しかし、前2番組は今年の騒動以降、視聴率・評判ともにやや下降傾向が見られる。

ただ、ガチンコ感を魅力にしている前2番組と『行列』では、そもそも制作のベクトルが正反対。『行列』は出演者へのヒアリングと構成のスキルをベースに、いい意味での予定調和を積み上げていくタイプの番組と言える。

テンポのよさと笑いの手数を生み出せる一方、意外性に欠くなどスタイルとしては古いのだ。しかし、気楽に見られる番組としてはトップクラスの安心感があるなど、他番組の影響は受けにくいのではないかと推察される。

不安があるとすれば、「全編宣伝」という視聴者の厳しい目線。前述した「看板に偽りアリ」という批判は、すでに沈静化している反面、いわゆる“宣伝臭”への嫌悪感は以前よりも増した感がある。

この日も、田中が『獣になれない私たち』、バカリズムが朝ドラ『生田家の朝』、KENZOがDA PUMPのベストアルバム、元木がプロ野球・ジャイアンツのコーチ就任など宣伝だらけ。最後の渡部による「何だその淡泊な告知は!」というくだりからの番宣も含め、勤続疲労以上のリスクを感じてしまう。

「アンチ日テレ」を掲げる人は、その理由に宣伝臭=お金の臭いを感じ取る傾向があるだけに、その最前線にいる『行列』が、それをどう消していくのか? 期待しながら見ていきたい。

次の“贔屓”は…優勝経験者7人が集結する20回記念大会『IPPONグランプリ』

『IPPONグランプリ』チェアマンの松本人志

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、15日に放送されるフジテレビ系特番『IPPONグランプリ』(21:00~)。同番組は、2009年から特番として不定期放送されている大喜利バラエティ。年2回ペースで放送され、今回で20回目の記念大会となる。

メンバーはAブロックにくっきー(野性爆弾)、大悟(千鳥)、博多大吉(博多華丸・大吉)、バカリズム、若林正恭(オードリー)、Bブロックに川島明(麒麟)、設楽統(バナナマン)、千原ジュニア(千原兄弟)、堀内健(ネプチューン)、山内健司(かまいたち)の10人。「くっきー、大悟、山内を除く7名が優勝経験者」という実力者ぞろいだけに、激しいバトルが予想されている。

「10名の芸人が大喜利のみで勝者を決める」というシンプルな構成だからこそ、芸人とスタッフの双方にどんな狙いがあり、どんな力が発揮されているのか? 芸を競い合う番組が少ない中、テレビ業界や視聴者への影響力なども含めて考えていきたい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。毎月20~25本のコラムを寄稿するほか、解説者の立場で『週刊フジテレビ批評』などにメディア出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日の視聴は20時間(2番組同時を含む)を超え、全国放送の連ドラは全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』『話しかけなくていい!会話術』など。