テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第258回は、14日に放送された日本テレビ系『SHOWチャンネル×大病院占拠 合体SP』(21:00~)をピックアップする。

今回の放送は、『1億3000万人のSHOWチャンネル』放送直後にスタートする連ドラ『大病院占拠』との合体SP。主演をMCの櫻井翔が務めるだけに大々的な番宣なのだが、どんな構成だったのか。

日本テレビ

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■冒頭からドラマのあらすじを紹介

番組は「今夜のSHOWチャンネルは……このあと10時スタート、櫻井主演ドラマ『大病院占拠』と合体スペシャル。正体不明の鬼たちが病院を突然占拠。主人公・武蔵刑事と鬼が戦いを繰り広げるタイムリミットバトルサスペンス。主演の櫻井に密着。今回は激しいアクションにも挑戦。一方、SHOWチャンネルでは日本全国真冬の達人を大特集」というナレーションからスタート。

『SHOWチャンネル』の内容ではなく、『大病院占拠』のあらすじを全面的に紹介する大胆なナレーションに驚かされた。このところ日テレはドラマの不振が叫ばれていただけに、「なりふり構わず数字を取りに行こう」という意思の表れではないか。

さらに、ドラマで櫻井と共演する白洲迅、ソニン、平山浩行、主題歌を担当するSnow Manの深澤辰哉と阿部亮平がゲストとして登場。櫻井は「(ドラマは)1時間後に始まってるから。このまま直結でいくんだって!」とハイテンションで語り、視聴者の期待感をあおろうとした。どうせ番宣をするのならこれくらいやり切るほうが気持ちいいかもしれない。

櫻井のファンにとって、この祭り感覚の演出は大歓迎だろう。ただこの番組のファンはこれでいいのか。それとも、この番組のファン=櫻井のファンであり、「その視聴者層は取りこぼさず取り込もう」という手堅い戦略なのか。

ただ、ここで『大病院占拠』から一旦離れて、まずは「真冬の達人SP」のベスト5を発表。第5位は「京都府京都市発 予約が10分で完売!世界中から客が来る洋食の達人」で、オムライスと陽気なシェフ目当てに外国人観光客が集まる店だった。

第4位は「東京都豊島区発 予約2か月待ち ネイルの達人は元プラモマニア」。客の要望に合わせた完全即興ネイルを作る達人男性が紹介された。第3位は「東京都新宿区発 ハンバーガー日本一に輝いた元CAさん」。コンテストで日本一に輝いたすき焼きバーガーが紹介され、スタジオでの試食があった。

第2位は「東京都三鷹市発 もはや芸術! 300万円のケーキを作る達人」。芸術的なシュガーアートの達人が紹介され、櫻井のキス顔をイメージした作品がスタジオに登場した。気になったのは、「日本全国真冬の達人を大特集」なのに、ほぼ東京で、真冬との関連性がほとんどないこと。さらに言えば『大病院占拠』とリンクするところもなく、普段のそつのない日テレバラエティらしさを感じなかった。

■“全国ご当地ニュース”の難しさ

ここで“番外編”として、「東京都品川区発 これぞ未来のロケスタイル あっという間に映像へ溶け込む合成の達人」をピックアップ。日テレの忽滑谷こころアナと小高茉緒アナが登場し、さまざまな風景の映像と一体化させてリポートする「朝の情報番組風、中継リレー」が行われた。

続いてスタジオでゲストの達人技を紹介。白洲は「親指の関節を弾く」、平山は「針の穴に糸を通す」、ソニンは「カラスのモノマネ」、深澤は「じゃんけん」……率直に書くと、多くの視聴者にとってわざわざ見るほどのものはなかった。「来てもらったゲストの出番を作るために行った」としか思えない内容の薄さは「番宣の弊害」と言われても仕方がないだろう。

ランキングに戻り、第1位は「青森県青森市発 東京ドーム約12個分の広さをたった40分で除雪する達人集団がいる」で、青森空港除雪隊「ホワイトインパルス」の達人技が紹介された。

最後にようやく「日本全国真冬の達人を大特集」にふさわしい内容だったが、それでも計6つ中、青森と京都以外の4つが東京であり、“真冬”も1位のみ。昨年9月に番組コンセプトが『1億3000万人のSHOWチャンネル』から『全国ご当地ニュースバラエティーSHOWチャンネル』に変わったが、“全国ご当地ニュース”のリサーチやセレクトに苦労の跡が見える。

番組が残り16分になったところで、「潜入! ドラマ『大病院占拠』達人ツアー」がスタート。これまで300作以上に携わり、櫻井とは『ネメシス』でも仕事をしたアクション監督の森崎えいじをフィーチャーした。

アクションシーンの練習現場に現れた櫻井は『SHOWチャンネル』のスタッフを見て、「チューニングがむずいのよ、みんながいると。ドラマのピリッとしたチューニングか、『SHOWチャンネル』のチューニングか。顔見せないでくださいね。顔見るとチューニング狂っちゃうんで」と、けげんな顔を見せて笑いを誘う。