テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第251回は、19日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『ドラフトコント2022』(21:00~)をピックアップする。

千原兄弟・千原ジュニア、小籔千豊、オードリー・春日俊彰、アンガールズ・田中卓志、チョコレートプラネット・長田庄平の5人が「一緒にコントをやりたい」と思う芸人を20人の中からドラフト形式で指名。「コントをイチから作り上げ、1カ月後に披露してチャンピオンを決める」というコンセプトは、文句なしの大型特番と言っていいだろう。

昨年11月27日に放送され、今回が約1年ぶり2度目の放送だったが、前回はとにかくレベルの高さに驚かされただけに、今年も期待が高まっていた。

  • (左から)千原ジュニア、小籔千豊、春日俊彰、長田庄平、田中卓志

    (左から)千原ジュニア、小籔千豊、春日俊彰、長田庄平、田中卓志

■本家プロ野球同様の無風ドラフトに

映像は10月中旬のドラフト会議からスタート。

注目のメンバーは、収録3日前に『キングオブコント2022』(TBS)で優勝したビスケットブラザーズ・原田泰雅、昨年の『ドラフトコント2021』で優勝ネタを作った空気階段・水川かたまり。さらに、コロコロチキチキペッパーズ・ナダル、マヂカルラブリー・野田クリスタル、錦鯉・長谷川雅紀、ハナコ・秋山寛貴、かもめんたる・岩崎う大、バイきんぐ・西村瑞樹ら賞レースチャンピオンがそろっている。

1巡目で指名されたのは、ジュニア=ロッチ・中岡創一、小籔=ネルソンズ・和田まんじゅう、春日=ジャングルポケット・斉藤慎二、田中=かもめんたる・岩崎う大、長田=しずる・KAZMAと競合なしで全員確定。昨年はシソンヌ・じろうがいきなり3人重複だっただけに、肩すかしの結果となった。ちなみに、KAZMAは昨年も1巡目で指名されているだけに芸人間での高評価がうかがえる。

2巡目で指名されたのは、ジュニア=バイきんぐ・西村瑞樹、小籔=ビスケットブラザーズ・原田泰雅、春日=マヂカルラブリー・野田クリスタル、田中=空気階段・水川かたまり、長田=ニューヨーク・嶋佐和也で、またも競合なしで全員確定。昨年は2巡目でも競合があったが、今年は本家のプロ野球同様の“無風ドラフト”になっているのが面白い。

3巡目で指名されたのは、ジュニア=三四郎・小宮浩信、小籔=ハナコ・秋山寛貴、春日=コロコロチキチキペッパーズ・ナダル、田中=ジェラードン・アタック西本、長田=かが屋・賀屋壮也で三たび競合なし。目玉の1つだった抽選がまったく行われず、明らかに盛り上がり不足であり、制作サイドにとっては誤算だろう。ただ、それがリアリティを感じさせる上に、「全員がほしい人材を集められている」ためクオリティの高いコントが見られる可能性は高まった。

4巡目で指名されたのは、ジュニア=アインシュタイン・稲田直樹、小籔=蛙亭・イワクラ、春日=チョコレートプラネット・松尾駿、田中=蛙亭・イワクラ、長田=岡野陽一。イワクラが初めて重複し、錦鯉・長谷川雅紀が残ってしまった。抽選の結果、小籔がイワクラを獲得し、田中は長谷川を指名してドラフトは終了。

■チョコプラ長田の“らしい”問題作

ドラフトの結果、飲み仲間を集めたジュニア、バランス良く指名した小籔、ギャグメーカーを集めた春日、ネタを書ける頭脳派2人をそろえた田中、何をするか分からない不気味なメンバーをそろえた長田と、見事なまでにチームカラーが分かれた。

続いてネタ順を決める抽選が行われたあと、映像はコント決戦当日へ。ここまで放送開始から25分が経過したが、昨年より約5分も短かったのは、ほぼ無風ドラフトだったからか。全体の構成におけるドラフトは目玉の1つだけに、ちょっともったいなかった感がある。

スタジオに5人のキャプテンが色違いのジャージ姿で登場。メンバーも同色のジャージを着ており、チームごとに色分けされているのが分かりやすい。

まずは1組目のチームジュニアが登場。「ドラフトは100点、ビジュアルは0点」と語るメンバーが居酒屋に集い、ネタの作り方を話し始める。結局ジュニアは4年ぶりの新作コントを書き上げ、2週間前の練習を経て、コント「キャスティングミス」を披露。CMクリエイター役の小宮がツッコミとなり、キャスティングされた女性役を西村、中岡、稲田、ジュニアの4人が務めてボケを担った。

女装によるビジュアルの面白さ、小宮の強烈なツッコミ、「実は生理用品のCMだった」という伏線回収。笑いと作品としてのクオリティが共存し、「今年もハイレベルか」というムードが一気に高まった。

2組目はチーム長田。KAZMAの「チョコプラっぽいコントをやりたい」という言葉をきっかけに長田は「三振かホームランか」のネタを考え、その後も美術セットや小道具、音楽や効果音までこだわりを詰め込んでいく。メンバーは2週間前に行った一度の立ち稽古のみで本番に挑み、コント「アジアのどっかにありそうなバラエティ番組」を披露。

終始、意味不明の言葉、文字、ゲーム、歌が飛び交うコントで、その世界観は悪ふざけの極地。MCの今田耕司から「やったな!」とツッコミを入れられるチープなネタだったからこそ、長田、KAZMA、嶋佐、賀屋、岡野の演技力が際立ち、作り込んだセットや小道具はミスマッチな豪華さが漂っていた。