3組目はチーム春日。春日はネタを野田に全振りし、最初の稽古も不在だったが、野田は「セリフを覚えなくてイイ」というイチかバチかの問題作を作り上げる。そのためネタ作りや稽古の過程はほぼ映されず、コント「商店街ロケ」が始まった。

その内容は、番組スタッフ(野田)が出すカンペに従って春日が「トゥース!」、斉藤が「は~い!」、松尾が「どんだけ~!」、ナダルが「イッちゃってる!」という一発ギャグをひたすら連呼するだけ。チーム長田の悪ふざけを上書きするような破壊力で笑いを誘った。

ネタ披露後、ヒロミが「(チーム長田とチーム春日の)20分くらい何にも分からない」と笑っていたが、キャプテンに長田と春日を起用しているのは、このようなぶっ飛んだネタでアクセントになってほしいからではないか。テレビのゴールデンタイムでは、うまいコントばかり5本見せても飽きられやすいだけに、キャスティングの妙を感じさせた。

4組目はチーム小籔。キャプテン自ら「他のチームをボコボコにする」「スタッフは出ていってください」と話すなどガチンコモードでスタート。早朝や深夜のミーティングを重ねたあと、20個ものコント設定を持ち寄り、4時間かけて台本を作るなど、打ち合わせ6回、計30時間をかけたコント「子供が生まれた日」を披露した。

5組目はチーム田中。キャプテンの田中は「ネタのベースをう大に任せ、それを田中とかたまりでブラッシュアップしていく」という戦略を選択する。ネタ作りは順調で、あっという間にコント「ミサキさんを僕にください」を披露。田中、う大、かたまり、西本、長谷川とネタの世界観がバラバラな5人が絶妙なバランスで調和し、舞台公演を思わせる芸術的なネタだった。

■伝説の特番同様に正月でも通用する

結果、優勝はチーム小籔に決定。優勝旗と焼肉叙々苑のお食事券50万円を贈られた小籔は「めちゃめちゃうれしいです。僕らがたぶん一番ご飯行ったり飲みに行ったりしてたんで。絆だけはどこのチームにも負けなかった」と喜びを語った。

さらに、春日が「小籔さんのところが優勝したのを見て、『やっぱりネタってみんなで考えなければいけないんだな』と思いました」とボケてオチをつけたが、チーム小籔の勝因はまさにそこではないか。ネット上の支持を見ても、チーム田中の完成度やチーム春日の大胆さを支持する声が多く、逆にチーム小籔は「ストーリーが理解できなかった」という声も散見されただけに、審査員が努力やチームワークを重視した印象が残る。

ヒロミは「難航しました。(スタッフは)『お笑いのお祭りです。楽しくやってください。審査なんていう感じではないんです』って言うんだけど、年々ガチになってきていて大変なんです」とコメントしていた。

一番ガチに挑んだチームが選ばれたのは、ヒロミ以外の審査員が、なにわ男子・藤原丈一郎、トリンドル玲奈、藤川球児、NMB48・渋谷凪咲と芸人以外だったことも理由の1つだろう。制作サイドが「お笑い力×チームワーク」を前面に打ち出していたこともあり、そのチームワークで断トツだったチーム小籔の優勝は賛否こそあれ、妥当なのかもしれない。

渋谷は「お笑いとか面白さっていろんな種類があるんだなって気づきました」とコメントしていたが、それもこの番組の強みだろう。メンバーの構成やネタ作りを誰が担うかでコントの方向性が大きく変わるが、どう転んでも5色の笑いが楽しめる。

キャプテンの人選も、「芸人界きっての頭脳派ジュニア」「吉本新喜劇の座長だった小籔」「絶対にネタを書かないギャグメーカー春日」「笑いや芸人の分析に定評がある田中」「旬のコント師で相方がメンバーにいる長田」と色分けされているなど、今回もスタッフの仕事は随所に光っていた。

作り手も演者もハードな仕事なのは理解できるが、「このクオリティなら年2回くらいは見せてほしい」と思うのは望みすぎだろうか。かつて『史上空前!!笑いの祭典 ザ・ドリームマッチ』(TBS)は毎年正月に放送されていたが、この番組も「年に一度のお祭り」なら正月特番でも通用しそうな華やかさがあるのは間違いない。

■次の“贔屓”は……W杯日本戦直前、タモリのコメントは? 『タモリステーション』

『タモリステーション』MCのタモリ

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、27日に放送されるテレビ朝日系特番『タモリステーション~絶対に負けられないFIFAワールドカップ決戦直前SP~』(17:00~)。

「さまざまなジャンルに幅広い興味を持つタモリが各回のテーマを徹底的に掘り下げる」というコンセプトの特番で、これまで「大谷翔平」「ウクライナ戦争」「カーリング」の3テーマが放送されてきた。今回のテーマは、開催中のサッカーワールドカップ。同局で同日18時40分から放送される「日本VSコスタリカ」をピックアップするという。

同番組は今年1月28日放送の『タモリステーション~二刀流大谷翔平の軌跡~』が2022年の民放連賞 テレビエンターテインメント番組部門優秀賞を受賞したばかり。タモリが関わる以上、単なる番宣番組に陥る可能性は低く、しかも今回は生放送だけに、盛り上がるワールドカップにどんなスタンスで対峙(たいじ)するのか興味深い。