続いて2人は、上田が気になった「おもちゃのやまむら」へ到着。若林が「今でもミニ四駆が好きで新橋のタミヤに行く」、上田が「ジグソーパズルにハマっている」というエピソードを披露したあと、実はボードゲームマニアの上田が「超オススメ」を次々に紹介していく。一般的に知られていないものが多く、これは「ちょっと得する情報量の担保」という意味の撮れ高だったのかもしれない。

さらに、上田は家族で脱出ゲームに行ったことを明かして「ゲームで子どもの成長を感じるところあるよね」と語り、0歳児の父親である若林は乳児向けのおもちゃを探し始める。今回は23時台の放送だが、こんなファミリー層対応もできる2人だけに、「このコンビでゴールデンタイムの番組をやりたい」とあらためて感じたテレビマンもいたのではないか。

ちなみに「おもちゃのやまむら」は、4月23日放送の『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)でロケが行われたばかり。その際は「廃盤トミカの品ぞろえがすごい」という内容のため、差別化はされているが、やはり他店のような「テレビ初」は入れられなかった。……というより、練馬区関町そのものが約3カ月前にフィーチャーされたばかりであり、その意味で今回のエリアセレクトは微妙だった感もある。

2人は店を出たものの、若林は「これで撮れ高ボタンを押したい」とおもちゃ屋に戻って巨大水鉄砲を購入。しかし、水鉄砲を撃つ場所の許可がもらえず、結局アキダイの駐車場を借りることになってしまう。

若林は、上田に撮れ高ボタンを持たせて水鉄砲を発射するが、撮れ高の“れ”のシールが取れただけで不発。上田が「返品してこい! 永久に押せるか!」とツッコミを入れたあと再チャレンジし、水鉄砲の先で強引に撮れ高ボタン押すシュールな結末を選んだ。2人のことだから、ロケをしながらオチの付け方も話していたのだろう。

スーツがビチョビチョになった上田の「これ買い取れよ!」というコメントを最後に、約24分残しの2時間35分44秒でロケは終了。撮れ高の基準こそあいまいだが、その密度の濃さに本人も視聴者も「やり切った」と感じたのではないか。

■街ぶらロケの基本に忠実だった2人

練馬区関町のロケが終わると、「撮れ高は達成しましたが、今回も放送時間があと8分くらい残っているので、控え室のホテルに戻るついでに」というナレーションが流れて、タクシー車内でのロケがスタート。「前回のタクシー企画が好評だったので今回もやろう」ということらしい。

運転手の66歳・江原さんを交えた最初のトークテーマは、井の頭公園。

上田「お前に俺の初キスの場所見せたかった。『ここだぞ』と」
若林「俺ももしかしたら初キス、井の頭公園かもしれないですね。あっ、小金井公園だ、俺は。でも井の頭公園でもキスしたことあります」
上田「キスしてるね~」
若林「タクシーでおじさん2人乗って『キスしてるね~』じゃないんですよ」
上田「運転手さん、若林いろいろキスしてるみたいですよ、いろいろ」
運転手「若いですからいいと思いますよ」
若林「何を大回ししてるんですか!」

と、車内の空気をやわらげて運転手の緊張をほぐした。

その後は、「好きな芸能人は?」「2人の出演番組を見たことは?」「2人にアドバイスを」などの質問を振って盛り上げ、ほどなくホテルに到着。撮れ高ボタンを押して14分3秒でロケは終了した。最後に「『こぼれ撮れ高』をHuluで配信」のPRが流れたが、これを実現できることが「2人のロケはいかに撮れ高が多いか」を物語っている。

ロケ番組そのものについて触れておくと、制作サイドの「作りやすさ」と視聴者サイドの「見やすさ」。さらに、コロナ禍でのスタジオ撮影のリスクや、外出頻度の減少などを踏まえても、需要の高まりは理解できる。この流れは、よほど感染状況が悪化し、人々の不安が高まらない限り、しばらく変わらないのではないか。

問題は「誰がロケをするのか」であり、安易に元気な若手芸人をそろえただけでは見てもらえないだろう。また、大人数でのロケを控えなければいけない状況だけに、2~3人で「“楽しそうな場所”というムードを作る」「ロケ先の魅力を引き出した上で笑いの手数を取れる」などの技術が求められる。

その点、上田と若林は一般人との距離感の取り方がうまく、ネタとして弱いときは自らのエピソードトークをはさむ柔軟さを見せられ、しかもそれがいちいち面白い。そして2人自身も終始、楽しげに笑い続けていて、「練馬区関町に行ってみたい」と思わせるムードを作っていた。

これらはロケの基本技術とも言えるが、驚かされるのは2人ほどの売れっ子MCが今なおそれに忠実であること。この番組は「撮れ高がないところは早送りで見せる」という演出を採用しているが、早送りの回数が少なかったことからも、それがうかがえる。

この番組は、気軽にながら見できる街ぶらロケである一方、よく見ると、売れ続ける芸人のすごさを随所に感じられる番組なのかもしれない。街ぶらロケは「YouTubeでも見れる簡単なもの」などと侮られがちだが、シンプルだからこそこれほどトークやアドリブの力が問われるものは少なく、だからこそスタジオ撮影においてもロケ巧者は重宝されるのだろう。

■次の“贔屓”は……オーディション番組全盛の流れに乗れた?『Dreamer Z』

『~夢のオーディションバラエティー~ Dreamer Z』MCの木梨憲武

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、24日に放送されるテレビ東京系バラエティ番組『~夢のオーディションバラエティー~ Dreamer Z』(毎週日曜21:00~)。

かつてモーニング娘。やCHEMISTRYらを輩出した『ASAYAN』と同じ日曜21時台に放送されているオーディション番組だが、昨秋のスタートから約9カ月が過ぎた今、どんな内容で放送されているのか。

『PRODUCE101』『Nizi Project』『THE FIRST』『私が女優になる日』などのオーディションコンテンツが人気を集める中、どんな構成・演出で挑んでいるのか掘り下げていきたい。