テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第233回は、17日に放送された日本テレビ系バラエティ特番『上田若林の撮れ高』(23:00~)をピックアップする。

プライベートでも仲のいい上田晋也と若林正恭が、自分たちの力で撮れ高を作り上げていくロケチャレンジ企画。3月27日に次ぐ第2弾であり、放送間隔の短さに期待のほどがうかがえる。

このところ、かまいたちのブレイクや、なすなかにしにスポットが当たるなどロケ巧者への評価が高まっているだけに、売れっ子MCの2人がどんなテクニックを見せるのか。ちなみに前回は『ぶらり途中下車の旅』ですら一度も下車されていない鶴見市場駅でロケが行われ、普段とは異なるさまざまな表情が見られた。

いまだコロナ禍が終わらないながら需要が高まっているロケ番組そのものについても、掘り下げていきたい。

  • 上田晋也(左)と若林正恭

    上田晋也(左)と若林正恭

■編集不要のテンポでトークする2人

番組は「生い立ちも性格もまったく違うこの2人。そんな2人が熱望した冠番組が再び。バラエティ未開の地で2人がただ仲良しロケする番組エピソード2」というナレーションでスタート。2人はスーツ、シャツ、ネクタイをすべて黒でそろえたシックな姿で登場したが、土砂降りの天気に冒頭からグチが止まらない。

若林「ロケする天気じゃない」、上田「ブラブラするロケだよな。マジ何だよこれ」、若林「しかも3時間で撮らなければならないのでやらざる得ない」とグチっていたが、いつのまにか画面上に「テレビ出演300本以上! ○○○に一切触れずに練馬区関町で30分の尺を作る」という文字と、「12:42:33:00」というデジタル時計が表示されていた。

この「○○○」は情報番組に引っ張りダコのスーパー・アキダイのことだったが、「関町=スーパーアキダイ」のイメージだから、それ以外のネタで30分の撮れ高を作るという。

さらに、スタッフではなく2人が「いけたな」と思ったら“撮れ高ボタン”を押してロケを終了させるところがこの番組の肝。果たしてトップ芸人の2人はどのくらいの撮れ高で「いけたな」と思うのか。

まずは、スーパーアキダイの真横にある焼き鳥店「あきとり」で雨やどりしながら、100円のたい焼きを食べ始めた2人。ここで若林がたい焼き店でアルバイトしていたエピソードを披露し、店にお願いして、急きょたい焼き作りをはじめる。

「2~3年はやっていた。9時~17時でずっと焼いていて『あまりにも自分に合ってて、漫才とかどうでもよくなっちゃう』と思って辞めた」という若林は、茶々を入れる先輩・上田に「素人は下がっててください!」とピシャリ。もちろん、これは仲の良さがなせる態度であり、視聴者に上下関係を超えた仲の良さを早くも見せつけた。

その後、「この町に30年住んでいる」という高齢女性が来店すると、上田が「おごる」と言い出し、さらに「親戚中に言ってね。『上田におごってもらった』って」とボケると、若林が「引くほど稼いでますから」とフォロー。スタッフが編集不要のテンポでコメントを重ねていくトークスキルはさすがだ。

制作サイドは、最後にナレーションで店の紹介を入れつつ、「バラエティ初出しの超穴場スポット」であることをアピール。これが番組コンセプトであり、差別化のポイントでもあるのだろう。「バラエティ初出し」は深夜帯ではしばしば見られるコンセプトだが、プライムタイムに次ぐ23時台で売れっ子MCの2人が行うことに意義がある。

■タピオカ店だからわかる技術の高さ

店を出た2人はADがまとめたロケハン資料を渡され、「前回より厳しそう」と不安をこぼすが、コインランドリーに通りがかると上田がそれに絡めたくりぃむしちゅーのネタ作りエピソードを話すなど、常に撮れ高を確保。

続いて「なべ・やかん」と書かれた資源ごみの看板を見つけた2人は、それがタレントにもじったギャグなのかを確かめるべく、練馬区立関町リサイクルセンターへ。自ら撮影交渉を行い、「結局わからずにグダグダで終わる」というタイプの撮れ高を作った。しかし、それだけで終わらせないのがこの2人。10円から販売している激安リサイクル品売場に注目して、「すげえ。春日(俊彰)知ったらここまで来ますよ」と盛り上がる。

さらに、店員に協力を依頼してお茶っ葉入れの値段当てクイズを実行し、上田が50円、若林が300円と予想したが、正解はまさかの3,000円。上田「急に高え!」、若林「急に仕掛けてきた!」と超高速リアクションを見せて笑いを誘った。結局、上田は虎が飛び出したようなカバン300円を購入し、前回買った小学生用の黄色の帽子をかぶって街ぶら再開。この激安リサイクル店もバラエティ出演はゼロだった。

続いて2人は、タピオカ店「茶々坊」を見つけて入店。若林は「ブーム後なんですか?」「『ヒルナンデス!』でタピオカロケしてたの3~4年前ですもん」「(オープンした時期は)ちょうど木下優樹菜さんがもめてたとき」とたたみかけて笑いを取る。

一方の上田は「僕はタピオカミルクティーのタピオカ抜きで」というストレートなボケで対抗。それを聞いた店長が「さすがです」とつぶやくと、すかさず若林が「さすがです? このメンタルだから(ブームが去ったあとにオープン)できるんだ。強い」とツッコミを入れて笑いを広げた。

その後も…

若林「令和4年でタピオカロケやってる番組ないですよ」
上田「フワちゃんですら『タピオカ』って言わなくなったから」
店員「ストローお刺ししましょうか?」
上田「そうだね。かけ声とかあるんだっけ? 『べビタッピ』みたいな」
若林「距離の詰め方が雑。どんな若手より粗いですよ、ロケの仕方が」
上田「やっぱ時代はタピオカだな」
若林「ダセッ、今言う? でも1番ブームのときに飲んでたのより味わい深く感じます」

と、トークをたたみかけて店や商品を紹介し、店員を巻き込んで盛り上げる技術を見せていく。どんなものでもトークが成立させられる確かな腕を感じさせた。ちなみにこの店も、「東京・神奈川に5店舗も増えたのにテレビ取材は初」という。