次のテーマはSNS。「自分が発信源になるようにしている」という尾崎の巻物アトラクションが映し出され、「8割5分くらいがインスタを見てきてくれる。『写真撮っちゃダメ』『無駄話しちゃダメ』という時代はもう終わったかなと思っている」と語った。

すると、再び杉田が「商売のやり方は人それぞれだと思うんです。ただ、お鮨屋さんとしての美しさでいうと、『ポーズいらないです』とは思っています。私はそこに美学があってやろうと」と猛反論。現実論の尾崎と理想論の杉田のバトルに勝敗こそないものの、尾崎にとってはヒール役にさせられた感があった。これは演出というより、トーク力で杉田のほうが勝っていたということではないか。

最後に青木が「タコの桜煮」「ウニと白子のカルボナーラ風そうめん」「ロゼワイン」のおもてなしをしてトークタイムが終了した。

モーリーが「お鮨を通じて、間接的なんですけど、『日本人とは何か』とか、『日本とは何か』とか課題も少し触れていたような気がします。これから日本は国際化に進んでいくと思います。そこには世界中の料理も持ち込まれますし、価値観も共存しなくてはならない。そんな未来と社会が5年、10年先に来ているわけですね。日本に長く住んだアメリカ人としては本当にピュアなお鮨にも残っていてほしい。そしてニューカマーや海外から通っていく人が喜べる間口の広い薄めたお鮨もあっていいんじゃないかと思います。私自身はどっちに行きたいかというとハードコアなお鮨に行きたいと今回思いました」と締めのコメント。

3人の感想などではなく、MCがグローバルな視点からのコメントでまとめたところがいかにもNHKらしいが、その内容はモーリーの持論すぎて、番組のテーマからズレている感があった。そもそもMCの人選自体が謎だが、そんな粗削りなところこそ開発番組枠とも言える。

さらに番組は、「マエストロたちの情熱的な語らいを聴いて、『お鮨、怖い』は和らぎましたか? エッ、余計怖くなっちゃったですって? ま、それは人それぞれとして、みなさんが今考えていることをズバリ当ててみましょうか? そう、みなさんは今、猛烈にお鮨が食べたくてしょうがない」というナレーションで終了。画面には3人の店で提供される見るも美しい“玉(ぎょく)=玉子焼き”が映され、握手を交わす3人の姿で番組は終了した。

■マニアックなテーマは長期配信を

今回の企画は、「3人のプロフェッショナルがクロストークする」という構成が肝だったのは間違いないだろう。NHKで言えば『プロフェッショナル 仕事の流儀』のような人物ドキュメンタリーでは見られないトークである上に、現在の視聴者が求めるリアリティもそれなりに高く、演出にさらなる工夫があっても良さそうだが、他ジャンルのプロフェッショナルを招いての続編も期待できそうだ。

ちなみに次週の企画は、災害リスクを示したハザードマップを持って旅する『ハザードマップで旅してみた』。前週はパンサー・尾形貴弘が数学の難問を大マジメに解説する『笑わない数学』、前々週は全国の学校でモテる生徒を調査した『発県! くらべる学校百景』が放送された。

また、冒頭に挙げ、4月に2週連続で放送された『明鏡止水 ~武のKAMIWAZA~』は「空手の一撃必殺」「宮本武蔵の剣」、『希少誌道』は「メダカ育成専門誌」「サウナ業界経営情報誌」をフィーチャーしていた。

この開発番組枠が「いかにランダムな番組を放送しているか」が分かるだろう。民放のように爆笑の可能性を感じるものこそ少ないが、どれも「特定のテーマを深く掘り下げる」という一点突破のスタイルが採られている。それこそが視聴率、スポンサー、ゴールデン・プライムタイム昇格などの縛りが薄いNHKの開発番組枠だから許されるものであり、続けることでさらに深さが生まれていくのかもしれない。

ここまで内容がバラバラかつマニアックである以上、視聴習慣がつきづらいのは当然だが、配信視聴が進んでいく近未来を考えれば、それはさしたる問題ではないだろう。ただ、それぞれのジャンルに興味のある人がリーチできなければ「ほとんど見られずに終わっていく」だけであり、制作する意味自体が薄れていく。「このような番組だけでも、放送後数カ月間は無料配信してほしい」と思うのは求めすぎだろうか。

■次の“贔屓”は……女性だけの『IPPONグランプリ』開催!『まっちゃんねる』

『まっちゃんねる「IPPON女子グランプリ」』より (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、25日に放送されるフジテレビ系バラエティ特番『まっちゃんねる』(21:00~)。

「松本人志が面白いと思うことを実験していく」というコンセプトの特番で、これまでの放送では、『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』(Amazonプライム・ビデオ)の女性版「女子メンタル」、イケメン版「イケメンタル」などが放送されてきた。

第3弾となる今回は、女性限定で行われる「IPPON女子グランプリ」を放送。「女芸人」「女性タレント」の2本立てで、各4人が本気の大喜利対決を繰り広げるという。女性限定のネタコンテスト『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)がレベルや開催意義を問題視されがちな中、「IPPON女子グランプリ」は、その難題をクリアできるのか。

松本のほか、『IPPONグランプリ』の優勝経験を持つバカリズム、麒麟・川島明、千鳥・大悟の審査も含め、注目しておきたいポイントが目白押しだ。