テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第160回は、14日に放送された日本テレビのバラエティ番組『千鳥vsかまいたち』(毎週日曜12:45~ ※関東ローカル)をピックアップする。

もともと仲のよかった4人が「世の中のあらゆるものに『まだ笑える余地=笑いシロはあるのか?』を即興検証する」というコンセプトの番組。これまでは「伝説のヒット番組で、たった1回で終わった企画」「グッチ濱家をスターにしよう!」「消えた昭和のおもちゃに熱狂」などのテーマで放送されてきた。

旬の芸人2組をフィーチャーした冠番組らしく、1月3日深夜のパイロット版から即レギュラー化されたが、予定では全10回の放送だけに早めの段階でチェックしておきたい。

  • (左から)大悟、ノブ、山内健司、濱家隆一

■大悟とスタッフの強烈なDJ赤坂イジリ

番組は4人が座った状態の雑談からスタート。スタジオ背後の照明は消され、ダラダラとしたムードが漂い、収録後である様子が伝わってくる。

スタッフの「今日の見どころは?」という振りに、ノブが「オレはわかんない……」とこぼす一方、大悟は「スペシャル回とかがあるなら、そっちに持っていってもええよ」と自信満々に語った。さらに、濱家隆一から「スペシャルなんてとんでもない!」と否定された大悟が「どれが一番間違えたボケだったかだけ教えてくれ」と尋ねると、画面にDJ赤坂泰彦にふんした大悟の静止画が登場。すかさずノブが「何や今日の放送、深夜2時(のテイスト)なん?」とツッコミを入れた。適度に興味を引くネタばらしであり、見どころをあおり映像でたたみかける必要がないのは4人の自力があるからだろう。

あらためて、4人がスタジオに登場してタイトルコール。ここでも大悟が「やっぱりこんな感じなんや。やっぱり足らんなあ。全然できてない言うか。ワシ、1回もこの番組ノリノリでやれたことないわ」「『テレビが終わってるな』みたいなこと言われてるやん。今日でぶり返そうや」と切り出した。

かまいたちの2人が首をひねると、大悟は「1回ホンマのバラエティ見せるからお前ら同じ登場してくれ。ガラッと変えてやる。『足らんかったのこれや!』というものを気づかせてやる」と豪語して再スタート。大悟はDJ赤坂にふんした姿で登場して、それっぽい実況を始めたが、ノブは「ダサい」のひと言できっちり落とした。のっけからイジリ全開なのが大悟らしいが、決して出オチに終わらないのがすごいところ。

めげない大悟は、「『夜もヒッパレ』ワクワクドキドキしたよな。今のバラエティに足りないのは赤坂さん。今まで赤坂さんを出さずに芸人20年やってきました。もうええんやない。出しても」とまくしたてて、赤坂と『夜もヒッパレ』の紹介VTRを見せ始める。

同番組は1995年から土曜22時に放送していた音楽バラエティで、番組オリジナルのランキングトップ10をカラオケ形式で歌い、最高視聴率25.4%(世帯、ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録。番組サイドも「DJ赤坂の番組を異常に盛り上げるテクニック」として、トーク中にカットインして曲紹介したり、効果音に合わせて踊ったりする懐かしの映像を流し、「これが今のテレビに足りない赤坂さん」とイジリ倒した。

■6回連続失敗の大悟に総ツッコミ

4人のスタジオトークに戻ると、大悟が考えたという“赤坂ゲーム”がスタート。大悟は「1:登場はフレームイン」「2:会話に引っかけて一言」「3:曲に関わる言葉で振る」というルールと曲をバブルガム・ブラザーズ「WON’T BE LONG」に指定した。1990年の曲であり、これもDJ赤坂と同様に“イジるのにもってこいの古いネタ”ということなのだろう。

トップバッターはノブで、大悟とはまた異なるDJ赤坂風のジャケット、キャップ、メガネを着けて登場。そこそこのクオリティにすかさず大悟が「やってた? 過去に赤坂やってた?」と絶賛して笑いを誘った。

2番手の山内健司も前半こそ順調だったが、後半にズレて尺に収まりきらず。しかし、大悟は「前半非常によかったです。『本物が来たか』と思ったもん。お前あるな、どっかにあるな赤坂が」と、またも絶賛して再び笑いを誘う。

3番手の濱家は最後の画面下に消えるフレームアウトまでキレイに決まり、大悟は「お前、赤坂塾通ってた?」と三たび絶賛。山内が「不思議とこの帽子、メガネ、ジャケットで、(赤坂さんに)なりますね。気持ちよかったです」と語ると、濱家もまんざらでもない様子を見せ、ノブが「何でホメ合ってんねん」とツッコミを入れてここでもオチをつけた。

ここでちょうど半分の15分が経過……ということは、3人が振りで大悟が大オチということになるのか。大悟はノブと山内がトーク、濱家が歌と配役を決め、曲は『夜もヒッパレ』のレギュラーだったMAXの「TORA TORA TORA」を指定した。シュールなセレクトに、30代以上の笑い声が聞こえてくるようだ。

結論から言うと、大悟のDJ赤坂はダメダメだった。1回目は途中で「ちょっとストップ」と中断して山内が「一番ヘタやん」。2回目は尺オーバーで濱家が「バリバリ(歌と)かぶってたし」。3回目は再び尺オーバーして濱家が「かぶりまくってるんすよ!」。4回目はあまりにひどすぎて途中で止められて山内が「先に何か歌ってますやん。何であんなにヘタなの?」、5回目もちょっと尺オーバーし、6回目に至ってはボロボロ。

それ以外でも、1人でブツブツ言いながらリハする大悟にノブが「むちゃむちゃリハしてるやん」。濱家が「めちゃめちゃ顔、緊張しとるやん。自分で言い出したのに」、失敗が続いて濱家が「何回やるんすかこれ」、山内が「あきらめてもらっていいですか?」。「(次の回で)もう終わろうぜ」と言う大悟にノブが「こっちのセリフや」、山内が「いつでもできる感じで言うてますけど、あの人ホンマにできない」とツッコミの集中砲火。最後に大悟は目に涙をためながら「どんなんやった。赤坂さんって……」とつぶやいてオチをつけた。

■他局が若年層に背を向ける中、孤軍奮闘

CMをはさんだエンディングトークでも、大悟のボケは止まらない。「OK、わかった。じゃあ第1弾はこれで終わる。でもこのままでは慣れてないから、もう1回あるから」「“第2回赤坂さん”のときまでに仕上げてくるから」と食い下がり、濱家に「(この番組)一応10回って決まってるんですよね。もう1回赤坂さんに使うと思います? 頭イカれてますよ」とツッコまれた。

それでも大悟は、「『視聴者がもう1回赤坂さん企画が見たい』ってなったらやらせてくれ」と粘り、けっきょく公式Twitterでの「リベンジ赤坂さんアンケート」が決定。最後も大悟はノブに向かって「ホンマお前がもっと三宅(裕司)さんっぽくなかったからや」とボヤいて笑わせ、スタジオの隅に出て泣きそうな顔になったところで番組は終わった。

この日の放送内容は、「意外にうまい3人に対して、言い出しっぺの大悟がドヘタでピエロになる……」という30分1本のコントライブそのもの。徹底しておバカな姿をかぶせることで笑わせる手法は、大悟が尊敬してやまない志村けんさんを彷彿とさせた。

ちなみにTwitterアンケートは、「もう一回見たい!」が圧倒的に「もうやらんでイイ!」を上回っている。この結果こそが番組と大悟への支持にほかならない。さらに、それはノブ、山内、濱家にも言えることであり、誰が主役の回でも今の4人なら支持を集められるのではないか。

裏番組を見渡すと、『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)、『アッコにおまかせ!』(TBS)、『なりゆき街道旅』(フジテレビ)、『NHKのど自慢』(NHK)と若年層が見たくなるようなジャンルがない。他局が昼の時間帯をあきらめて若年層に背を向ける中、この番組に限らず日テレにはチャレンジし続けてほしいところだ。

10回で終わってしまうのが惜しいが、シュール寄りの現状ではゴールデン・プライム向けのコンテンツとは言いづらい感がある。その点、日テレは「23時台に新規バラエティを入れる枠がない」という弱点を抱えているが、旬の2組をそろえて24時台以降ではもったいない。となると、平日の22時台か、土日の昼から午後あたりか。その判断は難しいが、日テレがこの枠で当初プッシュしてきた第7世代より支持が厚い4人だけに、いい落としどころを見つけたいはずだ。

■次の“贔屓”は…ネタ番組が盛り上がる今、立ち位置は?『にちようチャップリン』

錦鯉 (C)テレビ東京

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、20日に放送されるテレビ東京系バラエティ番組『そろそろ にちようチャップリン』(毎週土曜23:55~)。

2015年6月に特番としてスタートしたネタ番組『チャップリン』シリーズも5年8か月が経過。現在の形になってからも2年あまりがすぎ、「お笑いファンの間にはすっかり浸透した」と言っていいだろう。ただ、民放各局は昨年からコロナ禍と視聴率調査の変更でネタ番組を急増させているだけに、厳しい時期に笑いの火を灯し続けてきたこの番組の現在地点をチェックしておきたい。

次回のテーマは、「次世代ブームはオーバー40!? おじさんの時代2021」。第7世代の次はおじさんの時代というコンセプトで錦鯉が所属事務所・SMAからイチオシおじさん芸人を選出するという。発表されているのは、錦鯉、野田ちゃん、ハリウッドザコシショウ、モダンタイムス、ロビンフット……いかにもこの番組らしい企画とメンバーだけに期待できそうだ。