テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第135回は、14日に放送されたTBS系バラエティ特番『オオカミ少年2時間SP』(19:00~20:57)をピックアップする。

同番組は、さまざまなジャンルのVTRを見て「ウソ・ホント」を当てるクイズバラエティ。04~05年に深夜帯でレギュラー放送されてから、15年の時を経て異例のゴールデン進出となった。

以前から「シンプルなコンセプトでゴールデンのほうが映えるのでは?」という声もあっただけに、今後の行方を占う放送になるかもしれない。

 

■ダブルメリットのドラマNGクイズ

浜田雅功

スタジオにはMCの浜田雅功と、解答者に「今ノリに乗ってる女性タレントチーム」の池田美優、ファーストサマーウイカ、山之内すず、「今ノリに乗ってるオネエチーム」のアンミカ、IKKO、KABA.ちゃん、「今ノリに乗ってる芸人チーム」のミキ、霜降り明星・粗品、「昔ノリに乗っていた芸能人チーム」の陣内智則、ハライチ・澤部佑、Kis-My-Ft2・二階堂高嗣が登場。ゴールデン特番らしく、ひと通りの年代・性別・キャラがそろっている。

番組開始早々、1問目がスタート。テーマは「若手芸人、そのリアクション、ウソ? ホント?」で、3人の若手芸人がさまざまなアクションに挑戦し、うち1つはCGで作り上げたウソという。

1人目はフワちゃんで“爆破カースタント”に挑戦。ヘルメットからはみ出た髪の毛の一部が燃えていたが、これはホントなのだろうか?

2人目はコロコロチキチキペッパーズ・ナダルで“鼻フックスカイダイビング”に挑戦。落下したナダルは鼻水まみれだったが、どこかあやしさが漂う。

3人目はティモンディ・高岸で、“自力での高層ビルぶら下がり”に挑戦。ふだんと変わらない高岸の様子は、ただ寝そべっているだけのように見え…。

スタジオでの質問タイムをはさんで発表された正解は、ナダルだった。オープニングクイズで、明るくノリの軽いフワちゃん、ボヤキだらけのダメ男ナダル、バカポジティブな高岸を起用したバランスのいいキャスティングに納得させられる。

2問目は、現在放送中のドラマを贅沢に使った目玉企画。まずは、20年前に浜田雅功が出演したドラマのNGシーンでひと笑いさせ、本題の『私の家政夫ナギサさん』『MIU404』『半沢直樹』を紹介した。

『私の家政夫ナギサさん』は10番目、『MIU404』は6番目、『半沢直樹』は8番目のNGシーンが「ウソか、ホントか」を当てるという。正解は『私の家政夫ナギサさん』だったが、クイズ以前に「視聴者はたくさんのNGシーンを見られる」「テレビ局は思い切り番宣できる」というダブルメリットが得られる好企画だった。

■グルメクイズはファミリー向けか

3つ目のクイズはガラッと変わって、回転寿司チェーン・くら寿司の新商品。激辛寿司「地獄のマグマグロ」、スイーツ寿司「海老チーズキャラメリゼ」、スタミナ寿司「しらすニンニクマシマシ軍艦」の中に1つウソ新商品があるという。3問目にしてキャッチーなグルメをテーマにしつつ、「全部ウソくさい」という別パターンで勝負したのか。

新商品開発の様子を映した再現VTRには、A.B.C-Z・河合郁人、ドランクドラゴン・鈴木拓、小沢真珠、パンサー・尾形貴弘、山下真司、プラスマイナス・岩橋良昌と、タレントを大量投入。たっぷり時間を取って開発秘話を紹介した。正解は「しらすニンニクマシマシ軍艦」だったが、結局ファミリー世帯はこのクイズが一番盛り上がったのではないか。

最後のクイズはタレントに「衝撃の告白」をぶつけるドッキリクイズ。3組中1組はターゲットも内容を知っているウソドッキリであり、演技力を見せる企画とも言える。1組目はチョコレートプラネットで、「長田庄平が松尾駿に海外進出を切り出す」というドッキリ。撮られていると知らない松尾は、フットボールアワー・後藤輝基の陰口を言ってしまった。

2組目はハナコで、「岡部大に秋山寛貴が『菊田竜大を切ってコンビになりたい』、菊田が『芸人を辞めたい』と切り出す」というドッキリ。岡部が号泣しながら2人を止めていたが、はたしてウソでここまで泣けるのか。3組目は純烈・小田井涼平が妻・LiLiCoに「活動休止になって紅白出場をあきらめたと切り出す」というドッキリで、これを聞いたLiLiCoも涙ぐんでいた。

正解はハナコで、迫真の演技を見せた岡部には、今後さらなる演技のオファーが増えるのではないか。ただこのクイズは以前から『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)などでよく見られた形であり、もうひとひねりほしかった感がある。

浜田の「結果発表~!」を受けて、「今ノリに乗ってる女性タレントチーム」の優勝が発表された。同チームには優勝賞品として、ドラマ『半沢直樹』より劇中に登場した“コペルニクス社の段ボール”をプレゼント。これにファーストサマーウイカが「『いらんわ~』って言いづらいな」と毒を吐いてオチをつけた。

■視聴者に身近なクイズをどう作るか

あらためてクイズの内容を振り返ると、「芸人の体当たりロケ」「ドラマのNGシーン」「グルメチェーンの新商品」「ドッキリ」と4分の3がタレント系であり、ややバランスを欠いた印象がある。

今後ゴールデンタイムでレギュラー化するのなら、かつて同じTBSが放送していた『イカさまタコさま』のように、「作り手にとって身近なタレント系のクイズではなく、視聴者にとって身近なクイズをどれだけ作れるか」が鍵を握るのではないか。

もう1つ「もったいない」と思ってしまったのが、出題VTRのテンポがよく、イラストなどを多用してわかりやすかった反面、スタジオパートが冗長だったこと。13人ものタレントが内輪ノリで盛り上がっていた時間が長く、結局2時間で4問しか出題できないようでは見る人が限られてしまうだろう。

冗長なスタジオパートの中で際立っていたのは粗品。「(市川)猿之助さん(のNG演技が)がヘタすぎる」「これが新商品だったら(くら寿司の)社長がアホですわ」「LiLiCoさんはあんなきれいな涙を流さない」と、激辛コメントで盛り上げどころをきっちり作っていた。逆に言えば、粗品以外のトークはあまり機能していなかったように見える。

もともと「ウソ・ホントを当てるクイズ」は、テレビ放送の黎明期からあった普遍的な企画。特番にしてはパンチがないだけに、あらためてレギュラー放送向きのコンテンツという印象を受けた。たとえば、多少のクイズ形式を入れた『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)のように、平日の夜に何気なく見る分には十分楽しめる番組なのかもしれない。

■次の“贔屓”は…コロナ禍で放送する意義を見せられるか? 『24時間テレビ』

『24時間テレビ』 (C)NTV

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、日本テレビ系大型特番『24時間テレビ43 愛は地球を救う』(22日18:30~23日20:54)。

43回目の放送にして最大の危機が訪れたと言っていいだろう。コロナ禍の影響で放送やチャリティーの意義を問う声が飛ぶ中、今年のテーマは「動く」。ドラマ&ドキュメンタリーの『誰も知らない志村けん ―残してくれた最後のメッセージ―』、市川海老蔵のスペシャル歌舞伎、秋元康が手がけ加藤茶が歌う「ぐるり音頭」、高橋尚子&チームQの「募金ラン」など、ここにきてようやくジワジワと放送内容が見えつつある。

今年は変えなければいけないところが多い分、例年以上に注目が集まるのではないか。構成、演出、キャスティング、募金など、気になる点が目白押しだけに、いい意味でのサプライズに期待したい。