テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第127回は、21日に放送された日本テレビ系バラエティ特番『内村&さまぁ~ずの初出しトークバラエティ 笑いダネ』をピックアップする。

内村光良とさまぁ~ずがMCを務めるトークバラエティ特番であり、18年8月、19年3月、20年1月に続く4回目の放送。これまではすべて異なる時間帯に放送されてきたが、今回は高視聴率の『行列のできる法律相談所』『おしゃれイズム』を休んで放送されるだけに、プレッシャーは大きい。

コンセプトは、「出演者は芸人のみ」「トークは初出しのみ」の2点。内村&さまぁ~ずというトーク巧者だからこそできるシンプルな構成で、トーク番組の原点に戻ったかのようなムードが漂っている。今回のゲストは、サンドウィッチマン、出川哲朗&中岡創一、ミルクボーイ&四千頭身で、旧知の仲間と新世代を招いてどんなトークが繰り広げられるのか。

  • (左から)大竹一樹、内村光良、三村マサカズ

■バカルディはサンドウィッチマンの憧れ

オープニングのナレーションは、「今夜はこちらの4組が今までテレビで話してこなかったテレビ初出しエピソードを大連発」と“初出し”を強調。「そのコンセプトで一点突破します」という制作サイドの意志表示に見えた。

さらに、「サンドウィッチマンはM-1優勝前の知られざる超極貧エピソードをテレビ初出し」「四千頭身はまさかの初出しタレコミに思わず後藤…ここに電源あるんで切っていいですか?」「ミルクボーイはM-1優勝漫才の知られざる原型ネタをテレビ初出し」「仲よしコンビ出川とロッチ中岡は初めて明かすガチ本音を激白。しかし、トーク番組にもかかわらず出川にドッキリが…いったい何が?」と番組内容をチラ見せ。これはザッピングされないための構成だが、むしろ「普通のトーク番組っぽい内容だけど、それが初出しなの?」と感じてしまった。

1組目のトークゲストはサンドウィッチマン。まずは、内村が「サンドウィッチマンじゃなくなった日」「緊張! 憧れのバカルディにネタ見せ」「逃げ回る富澤」「まさかのグアム旅行」という4つのトークネタを紹介した。視聴者の期待感を高めるとともに、「単なる雑談」と思われないようにトピックスを立てたのだろう。

サンドウィッチマンは、「さまぁ~ずに改名前のバカルディに憧れていた」「三村マサカズにネタ見せしたことがある」などの過去を明かしたほか、バカルディのコントを再現。一方の内村とさまぁ~ずも、トークテーマに合わせて初出しであろうエピソードを返すなど、ともに「さすが」と思わせるものを見せた。

■ネタ見せありきのキャスティングか

2組目のトークゲストはプライベートでも仲のいい出川と中岡。登場するなり、出川は「興味を持て!」、中岡も「トーク力を見て!」と自らハードルを上げて盛り上げる。

しかし、「中岡 感動! 出川哲朗の知られざる名言」「中岡 ショック! 出川が裸の王様に…」「中岡 激白! ダメ人間・出川」「中岡 大迷惑! 出川へのクレーム」という4つのトークテーマが発表された途端、出川が猛抗議。「何度も打ち合わせを重ねたのに、出川が挙げたトークテーマは1つも採用されなかった」というドッキリだったのだ。いかにも日テレらしい定番の出川イジリだが、『世界の果てまでイッテQ!』に近い時間帯だけに視聴者層を考えると妥当なのかもしれない。

続いて、ミルクボーイと四千頭身が登場。ミルクボーイの駒場孝と、四千頭身の後藤拓実以外は巨大モニターからの出演となり、トークに加えて“リモートネタ見せ”もするという。

2組のトークテーマは「人生を変えた幻のネタ」「解散危機を2度救った男」「M-1優勝はルーティンのおかげ」「今までずっと隠し続けてきた秘密」の4つ。ところが、トークではそこそこの笑いに留まり爆笑を誘うシーンはなく、ほどなくネタ見せタイムに入って、そのまま番組が終了してしまった。

おそらく若手2組はネタ見せありきのキャスティングであり、制作サイドが彼らのトークに不安を持っている様子がうかがえる。同時にミルクボーイと四千頭身は、その不安を吹き飛ばすほどのトークを披露できなかったようにも見えた。これは決して彼らの力量うんぬんではなく、昨今のバラエティ事情と場数の少なさが影響しているのではないか。

瞬発的なフレーズのやり取りを編集で詰め込む構成のバラエティが増え、じっくり話すトーク番組が減ってひさしい。おのずと芸人たちは短いフレーズで笑いを誘うことに力を注ぐことになり、自らのトークのみで笑わせる場が少なくなっている。

■とんねるず、ダウンタウンをゲストに

前述したように、当番組は“初出し”がコンセプトのトークバラエティだが、はたしてそれにどれだけの視聴者が反応するだろうか。“初出し”に敏感なのは業界人だけで、視聴者にしてみれば区別がつかないし、どちらでもいい話。もちろん「初出し」を喜んだ人もいただろうが、なかには「初出し」を強調したことで「エッ? 芸人のトークって使いまわしのものばかりだったんだ…」とガッカリした人もいたのではないか。

かつて明石家さんまは、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)について、「芸人がすべらない話をするのは当たり前」「あれが企画になるのが不思議」と首をひねっていた。それと同様に、「芸人なら漫才やコントなどの作り込んだネタならまだしも、トークくらいはできるだけ初出しにしてほしい」と思ってしまうのは酷なのか。当然ながらこの要求は、『踊る!さんま御殿!!』(日テレ系)など、他のトーク番組にも当てはまる。

さらに言えば「初出し」は「すべらない」よりもハードルが低く、タレントの数が増える一方の現状を踏まえれば、もしレギュラー化しても何とか回していけそうな感がある。ただし、視聴率が獲れるかは別問題で、今回は個人6.1%、世帯10.4%に留まり、前4週平均の個人7.2%、世帯12.3%と比べても低調だった(いずれも、ビデオリサーチ調べ・関東地区)。次回は、再び別の時間帯に移動して放送されるのかもしれない。

シンプルなコンセプトだけに「誰がゲストなのか?」という興味が数字に直結しがちだが、好感度トップクラスのサンドウィッチマンや出川哲朗でもこの結果しか得られなかったのは、「芸人のみでは難しい」ことを意味しているのか。ふと、「トークゲストが、とんねるずやダウンタウンだったら、どんな結果だったのだろう」と考えてしまった。ともあれ、じっくり聞かせるトーク番組は少ないだけに、結果や反響などの検証を重ねながら、『人志松本のすべらない話』のように放送を続けてほしいところだ。

最後に1つふれておきたいのは、ソーシャル・ディスタンスを感じさせなかった繊細なカメラアングルとカット割り。トークする側も聞く側もさまざまなアングルから撮られ、小刻みなカット割りで臨場感と一体感を醸し出していた。だからこそ、「いかにも日テレのバラエティ」と感じさせるカラフルで書体の多彩なテロップは、もう少し控えたほうが、「これはトークをじっくり聞いてもらいたいう番組です」というメッセージが伝わった気がしてならない。

■次の“贔屓”は…相葉の現状は? 渡部ショックの影響は? 『相葉マナブ』

『相葉マナブ』に出演するハライチの澤部佑

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、28日に放送されるテレビ朝日系バラエティ番組『相葉マナブ』(毎週日曜18:00~)。

「ニッポンを元気に!! を合い言葉に」のコンセプトで13年4月に相葉雅紀・初の冠番組としてスタート。相葉がさまざまな日本の文化を学びながら成長を重ねていくロケバラエティとして定着し、現在まで安定した人気を保っている。

次回放送は新企画「マナブ!ご当地フルーツ料理選手権」。山形のさくらんぼや山梨の桃など、全国各地の美味しいフルーツを紹介し、ご当地ならではの料理を学んでいくという。

主に進行役を務めていた渡部建がスキャンダルで不在となった影響はあるのか? また、相葉は『天才!志村どうぶつ園』(日テレ系)で事実上の2代目MCとなったが、その影響は冠番組にも及んでいるのか? 相葉は「嵐の中で最も好感度が高い」と言われ、日曜夕方の密かな人気番組だけに、このタイミングで現状をチェックしておきたい。