前編で川崎競馬場のスパイシーな名物グルメを食べ歩き、すっかり身を焦がすギャンブラー気分となった今回の「競馬場の歩き方」。これまでの連載で何度も遭遇し、競馬場に欠かせないといっても差し支えない「モツ」にターゲットを絞って、さらに深く川崎競馬場に分け入っていく。

  • 川崎競馬場

    名物グルメを探索している間も、コースでは白熱したレースが繰り広げられている

門外不出! 秘伝のモツ煮込みに舌鼓

川崎競馬場内を巡り巡って、たどり着いた2号スタンドの2階。レースを見守るスタンド前の一般観客席の端に、なんとも風情を感じさせる「志ら井」を発見した。

  • 川崎競馬場の志ら井

    同フロアにあるフードコートにも出店している「志ら井」だが、鉄火場の雰囲気なら断然こちらだ

ここ「志ら井」は、創業70周年を迎えた川崎競馬場の開業時から営業をしているという筋金入りの老舗。「にこみ」(450円)に使われる煮汁は30年間継ぎ足しながら使っているというこだわりぶりで、川崎競馬場グルメにおいて外せない名店だ。さっそく店主に話を聞いてみることにした。

――創業70周年とのことですが、「にこみ」はいつから提供されているんですか?

「私がおばあちゃん、父に続いて3代目なので定かではないですが、おそらくお店がオープンした時からやっていたと思います」

――味付けはこれまで変わりなくずっと一緒なんですか?

「同じというか、父の代で完成したという感じですね。父が試行錯誤しながらたどり着いた今の味を、私たちが守り続けています」

  • 志ら井のにこみ

    5時間以上煮込み、しっかりと味が染み込んだ「にこみ」。仕込みは前日から始まるという

――「にこみ」に使っている具材を教えてください。

「牛モツと白こんにゃくだけですね。白こんにゃくは味が染みるだけですが、野菜が入ってしまうとその甘みが出てしまうので使っていないんです。本来の味だけでということですね」

――なるほど。味付けはどんな感じでしょうか?

「オリジナルでブレンドした味噌ベースの濃いめの味付けですね。ただ、父が去年亡くなったので味噌の配合はまだ母しか知りません。父とずっと一緒にお店をやっていた母が今も仕込みを全部担当しているので、実はまだ、その味は私たちの代に引き継がれていないんです」

――まさに秘伝の味ですね。ところで、「にこみ」と一緒に注文されるお酒は何が多いですか?

「本来はビールかなと思っていたんですけど、今の一番人気は“レモンサワー”(500円)ですね」

――確かに、少し意外な気がします。

「そうですよね。ここ何年かで鉄板化してきて、こっちも驚いているんです」

ここまで話を聞いたところで、その鉄板の組み合わせをどうしても味わってみたくなり、「にこみ」とレモンサワーをオーダーした。

  • 志ら井のにこみとレモンサワー

    薬味のネギが乗った「にこみ」と「レモンサワー」。カウンターには唐辛子が用意されている

  • 志ら井のにこみ

    しっかりと味が染み込んでいることがわかる「にこみ」

モツを頬張ると、濃いめの味噌味が口に広がる。長時間煮込まれているおかげで、歯ごたえはすこぶる柔らかい。後味も意外とくどさを感じさせないが、レモンサワーを流し込めば口の中はさっぱり。鉄板化するのも頷ける好相性の組み合わせだ。

逃げ切りか鮮やかな差し切りか! ゴール前の攻防は競馬の醍醐味

名物グルメをたっぷりと堪能したところで、本日のメインレースとなる「鎌倉記念(S2)」を楽しむべく、出走馬が周回するパドックへと再び足を運んだ。

  • 川崎競馬場

    3戦3勝の無敗のまま「鎌倉記念」に出走してきた川崎競馬期待のインペリシャブル号

9月に川崎競馬場で行われた「若武者(OP)」では2着馬に大差を付ける圧勝劇を見せた川崎競馬所属のインペリシャブル号。まだ強さの底が見えない同馬にファンが寄せる期待も高く、単勝1.4倍という圧倒的な大本命としてレースへと送り出した。

  • 川崎競馬場

    逃げ込みを図るインペリシャブル号をゴール前で急襲する北海道競馬所属のアベニンドリーム号

スタートから先手を奪ったインペリシャブル号が先頭でレースを引っ張り、リードを保ったまま最後の直線へ。そのまま逃げ切るかと思われたところを外からアベニンドリーム号が迫る。1完歩ずつ着実に差を詰めるがインペリシャブル号も譲らず、最後はアベニンドリーム号の追撃をクビ差で抑えてゴールイン。無敗記録を4戦4勝に伸ばし、重賞ウィナーの仲間入りを果たした。

地元の新星が結果を残し、大いに盛り上がりを見せた川崎競馬場。11月17日(日)からの開催では、8体のウルトラ怪獣が登場する怪獣酒場とのコラボイベント(17日)や、オーストラリアグルメと文化が体験できる「LOVE♡AUSTRALLIA Festibal」(22日)などを行うなど、友人同士やカップル、家族で楽しめるイベントが盛りだくさん。晩秋の川崎競馬場を訪れて、レースともども楽しんでみてはいかがだろうか。

著者情報:安藤康之(アンドウ・ヤスユキ)

フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。