元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな税は「復興特別所得税」です。

芸人以外のビジネスマンと話をしていると「コモディティ化」という言葉を耳にします。「それどういう意味なんですか?」とすぐさま確認しても、意味をよく分からずに使っているので教えてはくれない。

上司や同僚が不意に「コモディティ化」という言葉を使ってきても対応できるようにこの記事を読んでいただければ幸いです。

  • コモディティ化ってなあに?

「コモディティ化」のメリットとデメリット

「コモディティ化」はマルクス経済学で用いられる用語です。簡単にいうと「一般化」です。

同種の商品と差別化を図れるような付加価値があったものがあるとします。何らかの理由により、その価値が低下し、一般的な商品になってしまうのがコモディティ化です。

付加価値には、機能やブランド力、品質などがありますが、市場原理としてそれらの優位性は、いつかなくなります。なぜかというと、いい商品があれば、みんなそれを真似して、類所の商品やサービスを開発するはずです。外国で安く作って国内に輸入するかもしれません。そうすると、いい部分は真似され、かつ、低価格の商品が流通します。それを複数のメーカーが行えば、付加価値は、一般的なものになります。

企業にとっては、せっかくのアイデアや商品の価値が下がってしまうのでマイナスですが、消費者からすると、良いものが安く手に入るという点でメリットがあります。

しかし、コモディティ化が盛んになれば、企業は新商品の開発を辞めてしまうかもしれません。だって、頑張っても誰かがパクるんだもの。すると、経済が停滞しますし、消費者のところに新しい画期的なものが届きません。そういった点では、コモディティ化はマイナスです。

身近な例では、100円均一があります。100円均一では、どこかで見かけたアイデア商品が100円で売られています。その企業独自の商品もあるでしょうし、他社のアイデアを拝借したものもあります。100円ですばらしい商品が手に入るのは魅力的ですが「どうせ100円均一で売られてしまうのなら」と考えて新商品の開発を諦める人がいるかもしれません。

インスタントラーメンのアイディア

みなさんはインスタントラーメンを作ったことがあるでしょうか。袋に入った麺を沸騰したお湯に入れ、同時にやかんで湯を沸かす。どんぶりに粉スープを開け、沸騰したやかんの湯を入れ、3分茹でた麺を泳がせる。世界初のインスタントラーメンは日清食品の「チキンラーメン」と言われており、その後多様なメーカーから発売されました。

発売当時は革命的だったインスタントラーメンも、今ではコモディティ化され、各社、オリジナリティを出そうと努力されていることと思います。チキンラーメンはスープと麺が一体となっていますが、基本的には、乾燥麺と粉スープがそれぞれ袋詰めされています。麺には打ち粉が付いているので、茹でたお湯は捨てて、やかんのお湯でスープを作るのがマニュアルです。あなたは、この作り方をどう思いますか。面倒だと思いませんか。

ピン芸人のNO.1を決める大会『R-1グランプリ』のスポンサーである東洋水産は、どうにかこの煩わしさから解放されないかと考えて、独自製法の半生麺を開発しました。打ち粉が使われていない半生麺は、茹でたお湯に直接粉スープを加えても味が落ちません。これは画期的だ、消費者は大喜びするに違いない、そう考えました。

しかし、売れなかった。消費者は、やかんでお湯を沸かしてどんぶりでスープを作ることを、それほど悪しと考えていなかった。東洋水産はコモディティ化から抜け出すことができなかったのです。

ですが、この革命的な発明を無駄にする訳にはいかない。そこで東洋水産は、鍋の〆に入れる用の麺『マルちゃん 鍋用ラーメン』として発売しました。お湯に直接入れることができる長所を生かしたこの新商品は大ヒット。独自性あふれる商品となりました。

東洋水産の半生麺は、そのまま鍋に入れることが可能でしたが、「鍋用ラーメン」として販売することで販売数を伸ばしました。使い方の提案一つで、大きな成果をもたらす、マーケティングのお手本のような事例です。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら