元国税局職員さんきゅう倉田です。好きなメンターは「法人会の人たち」です。

新しいビジネスを始めようとすると、「メンター」という存在が、各所に現れます。「指導者」とかそんな意味らしいのですが、みんな、出会ったメンターが何をやっているか、どのようなスキルがあるのか、優れた存在であるのかを判断せずに、助言を仰いでいます。

基本的には、メンターをやっている人なんて、「他人に指導するなんて、烏滸がましい。どれだけ偉いんだよ」と思ってしまいます。

彼らは、あなたのビジネスが失敗しても責任は取りません。お金を出すわけでもなく、何らかのリソースを使って手伝ってくれるわけでもありません。

門外漢なのに「わからない」とちゃんと言わずに、無理してそれっぽいアドバイスをして、若者を誤った方向に導く存在です。

メンターになど頼らず、自分の上司や先輩、友人の中で優れた人間を見つけるほうが圧倒的に良いと思います。

TOKYO STARTUP GATEWAYのメンター

このビジネスコンテストには、複数のメンターがいます。出自や経歴はわかりません。でも、なんとなくの自己紹介を聞いただけで、参加者はアドバイスをもらいに列をなします。   

何人かの参加者は、助言を受けた後、参加者が集まるテーブルに戻ってきて、助言の内容を共有していました。

出会ったばかりの人にもらったアドバイスを盲目的に信用しているようでした。例えば、「アプリを作ったほうがいいよ」「仲間を見つけたほうがいいよ」とか、そんなアドバイスです。

当たり前過ぎて、笑ってしまう。

今の時代、アプリはあったほうがいいに決まっています。でも、コストがかかるから全員が作れるわけではない。みんな、自分の保有資産やリターンを計算して、アプリを作るか否かを考えているのに、ただ「作ったほうがいいよ」とアドバイスするなんて。

例えば、アプリを作るための資金はどれくらい必要で、損益分岐点の超えるインストール数やそのビジネスに合った収益化の方法を紹介してくれるなら、具体的で良いアドバイスだと思います。お金のことを考えず、「作れ」だなんて、うちの実家で飼っているインコのぴーちゃんだってできるアドバイスです。

その程度なのです、メンターなんて。だから、出会ったばかりのよく知らない人ではなく、自分の周りの優れた人に相談するのが一番良い。メンターがあなたにとって良いアイデアを持っているなんてことは、ほとんどありません。だって、あなたの個性やビジネスプランについて、ほとんど知らないんだから。

ぼくとメンターと見当違いのアドバイス

TOKYO STARTUP GATEWAYのSecond Stageは、メンターから、個別に話を聞くだけの2日間です。話を聞いていない間は、参加者同士で喋ったり、何かしらの作業をしたり、だらだらしたりしています。

ぼくは、自分の提案するビジネスプランについて見識のあるメンターがいなかったので、話を聞くつもりはありませんでした。ただ、自己紹介で「PTAの役員をしています」と言ったメンターに、「学校に紹介してください」と頼みに行きました。そこで、税金の授業をやらせてほしかったのです。

彼の返答はこうです。

「学校に行くのは難しいよ。そもそも、俺、租税教室って否定的なんだよね。もっと他にやることあるだろ、お金の教育とかって思っちゃう」

紹介してくれませんでした。紹介してくれない上に、法人会や税理士会、税務署が頑張っている租税教室を否定されてしまいました。税金のことを教える前に、お金全般のことを教えろ、と考えておられるようです。

ぼくは、「お金の授業は、法人会や税理士会の仕事じゃないからなあ。それぞれに役割があって、お金の授業が必要なら、然るべき官公庁がやればいい。そのことをもって、租税教室そのものを否定するのは、見当違いだよ。君は、もっと社会のことを知るべきだ」と心の中で思いました。

さらに、彼は言います。

「国税局とかと組んでやったらいいよ」

致命的な浅慮。こんな人が、メンターだなんて。

「あなたがPTA役員をやっている学校と国税局、どちらと一緒にやるのが難しいか、わからないんですか? 一つの学校で租税教室をやるのと、規模の大きな国税局と連携して何かをやること、どちらが容易かわからないんですか? 世間知らずにもほどがある。くだらないこと言ってないで、学校に紹介してください」と、おくびにも出さず、ぼくは「がんばります」とだけ言って頭を下げ、席を立ちました。

ぼくはアドバイスを求めて話しかけたわけではないので、わからなければ「その分野はわからないな。◯◯さんに聞いてみるといいよ」と言えばいい。「わからない」「知らない」というのがみっともないから、彼らはそれっぽいアドバイスをします。

もし、みなさんの周りに「メンター」が現れても、信じてはいけません。あくまで、話は参考程度、自分で「この人にメンターになってもらいたい」という人を見つけて、指導を仰ぐと良いと思います。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田の初の著書が発売されました。ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員やパート・アルバイトの方のための最低限の税の情報を、たのしく得られます。購入は コチラ

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。

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