テレワーク元年とも言われている2020年。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、図らずも多くの企業で制度の導入が進んでいます。そこでこの連載では、テレワーク生活を送っている一会社員にインタビュー。テレワークを活用したさまざまな働き方を紹介していきます。

今回登場していただくのは、共にドワンゴで働く高橋大樹(35)・林絵美子(40)ご夫婦。同社がコロナの影響を受けて制度を導入した2020年2月17日から、在宅勤務をされています。仕事上のコミュニケーションで意識されていることや、限られた空間の中での生活の工夫について伺いました。

  • 高橋大樹さん(35)niconico事業本部 生放送サービス事業部 双方向企画セクションでWebサービス企画職を担当 / 林絵美子さん(40)niconico事業本部 デザインコミュニケーション室 生放送デザインセクションでアプリ開発デザイナーを担当

    高橋大樹さん(35)niconico事業本部 生放送サービス事業部 双方向企画セクションでWebサービス企画職を担当 / 林絵美子さん(40)niconico事業本部 デザインコミュニケーション室 生放送デザインセクションでアプリ開発デザイナーを担当

限界ギリギリ! ワークスペースの確保はどうしてる?

36平米、間取り1DKのお部屋で共に在宅勤務を行っているという大樹さん・絵美子さんご夫婦。今までは生活の場だった我が家で急遽仕事をすることになり、一番困ったのはやはり、ワークスペースの確保だったと言います。

絵美子さん「私はもともと寝室にあった作業場で仕事をしています。デザインの仕事をしていることもあり、『私が主張するならば』と、夫がより快適なスペースを譲ってくれました」。

大樹さん「僕はリビングのこたつ机で、テレビをモニター代わりにして仕事をしています。社長から紹介してもらった、腰の負担を軽減する座面シートを使ったりして、なんとかやっています(笑)」
お互い隣の部屋で仕事をしているので、音が漏れないよう、大事なミーティングのときは、お互いの部屋から離れたトイレの前にキャンプ用の椅子を置いて、そこで話すようにしていますね」。

絵美子さん「ミーティングの音漏れ対策としては、Airpods※も活用してるよね。遮音機能があるので、お互いの声が聞こえなくなって快適です」。

大樹さん「僕も妻から勧められて使っているのですが、遮音機能に加えて、ミーティングに参加しながら簡単な家事もできるので、便利です」。

絵美子さん「ただ、お互いミーティングしているかどうか分かりにくいので、私が気づかず、夫のミーティング画面に映りこんでしまったことも……同僚から『リラックスした格好、見えていましたよ』と言われて、恥ずかしかったですね(笑)
「また、エアコンが寝室にしかないので、リビングでの仕事はこれからの季節難しいなと感じてもいて……将来的には今より広い、多少都心から離れたエリアに引っ越すことも視野に入れています」。

※外部の音が聞こえないようにする技術"アクティブノイズキャンセリング"を搭載したインイヤーヘッドフォン

夫婦で生活を楽しむ工夫

一つ屋根の下、限られた空間の中で共に暮らし、仕事もする……お互いにストレスをためてしまったり、夫婦関係がギスギスしてしまったり、といったケースもありそうですが、お話をするお二人の雰囲気はとても和やか。

限られた空間の中で創意工夫しながら生活を楽しまれている様子が伝わってきました。

絵美子さん「料理は私、掃除は夫、といったように、もともと家事分担がはっきり分かれていて、それはテレワーク後も変わっていません。部屋が汚れていたら夫のせい、ごはんがなかったら私のせい、と責任があいまいにならずに済むのと、相手に任せたら、そのやり方には口出ししないので、うまくいっているのかも」。

大樹さん「テレワークで変わったことと言えば、お昼の時間かな。家にいる時間が長いので、ベランダをテラスっぽく改造したのですが、そこで一緒にお昼ご飯を食べるのが最近の楽しみです」。

絵美子さん「これまでランチはコンビニや外食で済ませることが多かったのですがテレワークになってからは、仕事の休憩中にちょっとした料理の仕込みができたり、買い出しに行けたりするので、料理の質も上がりました。夜ごはんも、これまでは終電間際に帰宅してから作るので、鍋ばかりだったけれど、手の込んだ料理が作れるようになったかも(笑)」。

  • テラス風に仕立てたベランダ

    ベランダはイスとテーブルを設置してテラス風に。お昼の時間を決めて、一緒にテレビを見ながらランチをされるそう※写真はお二人からご提供いただきました

大樹さん「猫を飼っているんですが、テレワークが始まってから猫の機嫌も良い気がするんですよね。今まで僕らが出勤中は寂しかったと思うから、今は一緒に居られて、飼い主のことをより好きになってくれている気がします」。

絵美子さん「不便を感じるところもあるけれど、働く場所をどうするか、これからのキャリアをどうするか、日常をどう楽しくするかなど、今まで思いつかなかったことを考える機会が増えて、私は楽しんじゃってますね」。

大樹さん「限られた環境の中で、創意工夫する今の生活は、けっこう楽しいよね」。

  • テレワーク共働き夫婦の1日のスケジュール

    ご夫婦の1日のスケジュール。テレワークが始まってから全体的に生活が前倒しになった印象だそうです

テキスト、音声、対面……コミュニケーション方法は模索中

テレワークという働き方では、社内外とのコミュニケーションが課題となりがちですが、お二人はテキストベースのコミュニケーションにメリットを感じる部分が多いそう。

Webミーティングのより良い活用方法も模索されていました。

絵美子さん「一部出社している人がいると、情報格差が生まれるので、それぞれにコミュニケーションの方法を変えなければならず、大変だと感じますが、今はほぼ全員がテレワークなので業務全般が進めやすいです。Slack※や資料など、テキストをベースにしたやりとりが軸となっているので、内容の確認やメンバーの進捗把握もしやすくなりました」。

大樹さん「テキストベースのコミュニケーションは心地いいよね。ただ、テキストベースだと不意に生まれるコミュニケーションが発生しづらいなとは感じています。ZoomなりGoogleMeetなりをつなぎっぱなしにして、オフィスと同様にいつでも話しかけられる・雑談できる環境作りのテストをしている人も社内にはいますね」。

絵美子さん「私自身は、テキストでの雑談も、なかなかいいなと感じています。私たちの事業部には、ユーザーさんからのレビューがBotで上がってくるSlackのグループがあるのですが、そのスレッド上で『こういうのいいね』『こうしたらいいかも』と雑談が生まれ、実際に仕事につながるケースもあります。テキストベースならではの雑談・仕事の生まれ方ですよね」
他にもSlackには、仕事以外のコミュニティがたくさんあるので、会社に行かなくても気軽なコミュニケーションが取れている実感はありますよ」。

大樹さん「コミュニケーション方法については、例えばWebミーティングも工夫が必要だと思っています。例えばミーティングで何か提案をしても、全く反応がないと、単に無視されているような感覚になるので、意識的に『いいですね』と反応することが大事なのかなと」。

絵美子さん「Web上では、特に大人数のミーティングの場合、顔色が見えなかったり、マイクがオフになっていたりして、提案した内容が同意されているのか分からず困る、みたいな話も聞くよね。一方で『誰が発言したか』よりも『発言や業務の内容』に意識が向くから、忖度なくフラットに意見が出しやすい、というメリットはあるかも。実際、余計な気を使わなくなったと感じることも多いです」。

大樹さん「空気を読む必要がなくなるもんね。人脈とか役職よりも、自分のスキルやアウトプットをどう出していくのかという、よりプロフェッショナルな業務態度が、これからは必要になる気がしています」。

※ビジネス向けのチャットツール

スキルアップや副業も、2人のキャリアビジョンは?

テレワークで通勤時間が減ったり、時間を自由に使えるようになったりしたことで、ご自身のキャリアや働き方の考え方も変わっていったというお二人。最後に今後の展望についてもお伺いしました。

大樹さん「都内以外にも目を向けて引っ越してもいいなと思ったり、実際に周りを見ていて、旅行をしながら働くことも全然できるんだよな、とも思ったりして、これからの働き方や暮らし方をどうするか、いろいろと考えています。今後は、空いた時間を活用したいですね。副業なども含めて、広くスキルアップにあてたいと思っています」。

絵美子さん「私もほぼほぼ同意見。今までも副業はやっていたのですが、テレワークになったことで時間が自由に使えるようになったので、もっとコミットできるなと感じていて。会社内でのキャリアアップに加えて、そことはまた違うキャリア形成もしていきたいです」。

◆テレワークData/ドワンゴ◆


導入開始: 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年2月17日から開始。在宅勤務恒久化に向けての試行期間(6月1~30日)を経て、7月1日より本格導入。

実施内容:対象となる従業員(全従業員のうち約8割)は在宅勤務を基本とし、必要に応じて出社する

実施可能日数/回数: 頻度の指定はなし

実施場所: 場所の規定はなし

対象の正社員・契約社員には、在宅勤務手当として月額2万円を支給。在宅勤務対象者の固定席撤廃に伴い、フリーアドレス席の設置や会議スペースの拡充を行っている。