本連載の第22回では「スキルを活かした最適な業務配分を意識していますか?」と題し、スキルの可視化と活用のポイントをお伝えしました。本稿では業務上、日々発生する問題を適切に管理し、大ごとにならないようにするための方法をお話します。

問題を放置することの危険性とは

今の職場で未解決の問題はありますか? どんなに平穏な職場であっても、探せばきっと何らかの問題が見つかるはずです。その一方、多くの問題が手付かずのまま山積みになっていて、どこから手を付けたらよいかわからないので、とりあえず放置しているというケースや、問題の発生には薄々気づいてはいるものの、日々の業務が忙しくて後回しにしてしまっているというケースも少なくないでしょう。

日々の業務に追われてしまって職場で起きている問題を放置することは、どのような影響をもたらすのでしょうか? それは問題の「潜伏」「継続」「拡大」「転移」の4つの観点から理解することができます。

まず「潜伏」ですが、せっかく問題を発見しても、組織内できちんと共有されないままに放置してしまうことで、次第に忘れられていってしまうことです。あくまでも問題が消失したり解決したりしたわけではなく、存在し続けているのに認識されなくなってしまうわけです。一度は発見された問題を忘れてしまうなんてあり得るのか、と疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、このような現象は私たちの身の回りで頻繁に起きています。

例えば表計算ソフトの顧客データ管理表で、ある操作をした際に管理表に組み込んでいる関数の挙動がおかしいことに気が付いたとします。その時すぐに対応したり、少なくとも、そのことを誰かに伝えたりできればよいのですが、その前に突発的な仕事が入ってしまい、終わった後には管理表の不具合については頭から完全に抜け落ちてしまうようなケースが該当します。不具合という問題はなくなったわけではないですが、完全に「潜伏」してしまった状態です。

次に「継続」についてですが、これは単に問題が放置されることで長期化することを意味します。先ほどの「潜伏」とは違い、問題を忘れずに認識しているものの、手付かずのままでいるので結局、解決に至らないままズルズルと時間だけが過ぎていくパターンです。

卑近な例でいえば、健康診断の結果、「高脂血症(脂質異常症)」と診断されたので食生活を改善しようと一度は決意したものの、日々の仕事に追われるうちに面倒臭くなってしまい、一向に食生活の改善が進まないまま何年も経ってしまうようなケースが該当します。

問題の「拡大」は、放置することによって問題の影響範囲が時間の経過とともに広範囲に広がっていくことです。「継続」は問題が未解決のまま残るだけなのに比べて、「拡大」は影響が広がっていく分、より深刻といえます。

会社の例でいえば、一部の顧客から自社商品へのクレームが上がってきたのに適切な対応を取らずに放置してしまい、そうこうしている間にSNSでクレームが拡散してネットで大炎上してしまう、というようなケースです。

そして「転移」ですが、問題を放置している間に、元々起きていた問題が全く異なる問題を誘発してしまうことです。場合によっては事前に全く想定できないような事態を招いたり、問題の連鎖反応を起こしてしまったりして、事態の収拾に莫大なコストがかかるようになってしまう、厄介な現象です。

ビジネスの拡大に合わせて組織が大きくなっていく過程で、新入社員が急増し、それまでの先輩社員によるOJTでの手厚い指導が行き届かなくなってしまった。そのことが一度は問題視されたものの、皆があまりに多忙なため、対応が後回しされ続けた結果、新入社員の間で不満が溜まって離職率が上昇。さらに時間を置いて転職口コミサイトで「新入社員の面倒を見ないブラック企業」という悪評が立って急激に採用難に陥るとともに、顧客からも取引を敬遠されてしまい、ひいては売上の減少を招いてしまうというようなケースです。

問題を適切に管理するためにどうするか

程度の差はありますが、上述したような様々な悪影響が実際に現れないよう、最優先で対応すべきことは、問題を認識した時点で、すぐに何らかの形で記録し、関係者と共有することです。エクセルやGoogle Spread Sheetなどの表計算ソフトで「問題管理表」などのフォーマットを用意し、そこに入力していくのもよいでしょう。

とはいえ日々の業務で発生する問題をその都度、記録しているとあっという間に増加して、冒頭の例のように「どこから手を付ければよいのか」と途方に暮れることになりかねません。それは情報量があまりに多過ぎることに起因するので、それを回避するために各々の問題にカテゴリを振るとよいでしょう。

例えば問題の影響種別ごとにQCD(Quality/品質、Cost/費用、Delivery/納期)や4M(Man/人、Machine/機械・設備、Method/方法、Material/材料)などのフレームワークで整理します。それによって、どのような問題が多く発生しているのか、大まかな傾向を掴むことができます。

しかし、傾向を掴むだけでは問題に適切に対処するには至りません。そこで、「どこに」(対象)「どのような」(内容)影響が「どれだけ」(深刻度)あるのかを見極め、さらに「なぜその問題が起きているのか」(要因)を特定します。なお、時間の経過による変化についても考慮を忘れないようにしましょう。その上で、影響が大きい問題とそうでない問題を選り分けて、優先順位を付与します。

そして、高い優先度を付与した問題から対応策を考えますが、その際は「影響を限定、または軽くする対症療法」と「要因そのものをなくす根本対応」の2つの観点から考えるとよいでしょう。

このことを「自社の人事部への提出書類で毎度不備が見つかって、修正の工数が余分にかかる」というような問題で考えてみます。すると、「影響を限定する」のは「提出書類を作成後、担当者間で相互チェックするルールの導入で不備を減らす」といった対策であり、「要因そのものをなくす」のは「そもそもその書類に記入する情報は他のシステムにデータがあるので、そこからの自動連携で書類の提出をなくす」などの対策が該当します。そして、これらの対策を比較して、費用対効果の高いものを採用すればよいでしょう。

なお一旦、問題を洗い出して対応策を出したとしても、対応策が完了するまでは油断できません。また、時間の経過とともに別の新しい問題が発生し続けるでしょう。そこで、週次または月次など、定期的に問題について情報の共有と対策の協議をするような仕組みを作り、PDCAを回せるような体制を組むことをお勧めします。

さて、本稿では日々発生する問題を放置することの危険性と、適切に問題を管理し、影響を限定するための方法について説明しました。問題を放置して影響が大きくなってから対処しようとすると、かえって工数が膨れ上がり、結果として残業が増加する恐れもあります。そうならないためにも、日々適切に問題管理を行うことで効率的な仕事ができる環境を整えましょう。

筆者プロフィール: 相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役
慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。