本連載の第192回では「同じ情報を複数の場所で管理していませんか」という話をお伝えしました。今回は色々な部署や人に散在している情報を整理する際に考慮すべきポイントについてお話します。

あなたの会社では、業務で使用する情報がまとまった形で一元管理されているでしょうか。私は業務改革コンサルタントとして多くの企業を見てきましたが、多くの会社で情報があちこちに散在しており、情報の転記や整合性の確認などに手間取っている現場に遭遇し、その都度改善してきました。

散在する情報を整理するのは大変な作業ですが、職場の業務効率を上げるためには欠かせない作業です。ここでは、この課題に取り組む際に考慮すべき点を6つ紹介します。

1. 情報ソースの特定

まず、会社の業務に関連するすべての部門と情報源を特定することから始めます。これには、営業、総務、経理、人事、その他の部門のデータも含まれます。

2. 情報ニーズの評価

会社の情報ニーズとそれを利用する部門を評価します。各部門にとってどのようなデータがなぜ必要なのかを特定し、それをどのように使用するかを確認します。

3. データ管理システムや仕組みの導入

データへのアクセスや共有を容易にする、一元化されたデータ管理システムや仕組みの導入を検討しましょう。これは、様々なソースからのデータを統合するデータベースや統合ソフトウェアソリューションの場合もあれば、会社の規模によっては共有フォルダと社内ポータルサイトで十分という場合もあります。

4. データ収集の標準化

データの一貫性を担保するためには、全社的にデータ収集の方法を標準化することが重要です。これには、データを収集・記録するための標準的なフォーム、テンプレート、手順を設定することが含まれます。

5. 従業員の教育

新しいデータ管理システムや仕組み、標準化されたデータ収集手順について、従業員を教育することも忘れてはなりません。これにより、従業員が新しいシステムや仕組みを効果的に使用して業務を遂行することができ、エラーや情報不整合などの発生リスクを減らすことができます。

6. システムの監視と更新

最後に、データ管理システムや仕組みが会社のニーズを満たし続けるよう、定期的にモニターし、更新することが非常に重要です。会社の業務の変化に合わせてシステムを更新したり、新しいデータソースを追加したりする必要があります。

これらのステップを踏むことで、顧客企業の業務情報の整理と効率化を進めることができます。

以下ではこれらのステップの中の1つ目、「情報ソースを特定する」を対象に、具体的にすべきことを見ていきましょう。

会社で使用している情報ソースを特定するにはまず、各業務に関わるさまざまな部門や領域に目を向けるとよいでしょう。ここでは、その具体例をご紹介します。

  • ニーズアセスメントを行う。社内の部門長や主要なステークホルダーから話を聞き、ニーズ調査を実施します。それによって、どの部門や機能が効率的に業務を行うためにデータを必要としているかが分かります。例えば、営業部門に取引を成立させるために必要な顧客データを尋ねたり、製造部門に生産ラインを最適化するために必要な生産データを尋ねたりします。

  • 既存のドキュメントを見直す。ポリシー、手順、マニュアルなどの既存のドキュメントをレビューし、どのような種類のデータが必要かを確認します。例えば、財務部門のマニュアルを見て、業務に必要な財務データの種類を確認します。

  • ITシステムをチェックする。ERPやCRMなど、関連するデータが保存されているITシステムをチェックします。これらのシステムは、多くの部門にとって主要な情報源であることが多いからです。例えば、CRMシステムにどのような顧客データが保存されているかを確認するといった具合です。

  • レポートと分析を見る。さまざまな部署で作成されたレポートや分析結果を確認します。これらのレポートから、会社の運営に重要なデータの種類を把握することができます。例えば、製造部門の生産報告書を見て、どのような種類のデータが含まれ、どのように使用されているかを確認することができます。

  • アンケートやインタビューを実施する。従業員に対してアンケートやインタビューを実施し、どのような種類のデータを使用しているか、データにアクセスする際にどのような問題に直面しているかを把握します。例えば、マーケティング部門がマーケティング・キャンペーンの立案と実行にどのような種類のデータを使用しているかを把握するために調査を実施するのもよいでしょう。

このような手順を踏むことで、社内の情報源を特定し、その情報をより効果的に整理・管理するための計画を立てることができます。

本稿では散在された情報を一元管理する上で考慮すべきポイントを6つ示し、その中から1つ目「情報ソースを特定する」を取り上げ、具体的に解説しました。皆様の職場での情報整理にお役に立てれば幸いです。