本連載の第169回では「EXCELの関数を学び直そう」という話をお伝えしました。今回はがらりとテーマを変えて、管理業務の業務負荷軽減の進め方についてお話します。

営業事務や総務、経理、人事などの事務系の仕事では、その業務量の多くを情報の入力/記入、加工、集計、転記、保管、廃棄、管理などに費やしているのではないでしょうか。その中でも本稿では「管理」に着目して、よくある問題点について深堀りしてみます。

そもそも管理という仕事は、それ自体が何かしらの価値を生むものではありません。まずはこのことについての認識を組織全体として共有しておかないと、たとえ組織における管理業務や管理職の比重が大きくなり過ぎてしまっていても「それが何か問題なのか」とスルーされてしまいます。

簡単な例で言うと、売上を上げる営業担当者10人に対して管理職が1人ついている場合と、3人に対して1人ついている場合では、もし営業担当者1人あたりの売上高が同じであれば、前者の方が高い生産性になるのはお分かりいただけるかと思います。このような人材配置の例では管理職の比重が過度に大きくなることに対して理解を得られやすいでしょう。

しかし、これと全く同じ構図の問題でも「管理職」ではなく「管理業務」になるとなかなか認識されなくなってしまいます。仕事には「価値を生む仕事」と「価値を生まない仕事」があります。前者は事業を継続・発展させるために必要最低限の仕事で、商品の企画・設計・購買・製造・販売・アフターフォローなどの顧客価値を生むものや、経営戦略立案、資金調達や人材採用・研修・給与計算・支払などの事業継続のために必要なこと、そして税務処理や法令順守などの事業体として最低限やらなければならないことなどが含まれます。そして後者は「それ以外」ということになります。

これまでに多くの企業の事務作業を調査・分析・改善してきましたが、営業事務・総務・経理・人事などの事務系の組織で残業が多い組織はほぼ例外なく、この「それ以外」の仕事、つまりそれ自体は価値を生まない「管理業務」が肥大化しています。これ自体が問題なのは言うまでもありませんが真に問題なのは、そのことに当の本人たちが全く気付いていないことにあります。

もちろん管理業務の全てが不要というわけではありません。全て拙速に排除してしまえば不都合が生じることもあるでしょう。しかし、生産性を上げたいのであれば管理業務の負荷は極力小さくするべきです。以下では、そのための進め方を説明します。

1. 業務の全体像を可視化する

管理業務の削減をしようという話になっても、そもそもどこにどれだけの管理業務が存在しているかを把握できていなければ話になりません。しかし、その状態で最初から管理業務だけを洗い出そうとしても恐らくは漏れが生じてしまいます。そこで、最初は当該部署の業務全てを洗い出してパワーポイントやエクセルなどで表すことをお勧めします。関係者に見せて、漏れがあれば追記しましょう。そして全体像が完成すれば次に移ります。

2. 管理業務を特定する

業務の全体像が完成したら、その中から「管理業務」を特定して色分けするなどの目印を付けていきます。いざやろうとすると「これはどっちだろうか」と迷うものもあるかもしれませんが、少しでも迷ったら一旦、「管理業務」として認識してしまって構いません。なぜなら、本来は管理業務として認識して対応すべきものを最初から除外してしまうと改善余地が小さくなってしまいますが、検討を進めていく中で「やはりこれは管理業務ではない」として後から除外する分には何の不都合もないからです。

3. 管理業務の中でなくせるものを探す

「管理業務」として認識できたものについて、まずは「この業務をなくすと何が困るのか」と考えてみましょう。その際、「この業務の結果、完成する資料の提出先が困る」というような話はよく聞きますが、本当にその提出先が困るのかどうかは検証の余地があるはずです。そのような場合には当該部署に問い合わせてみましょう。案外、「以前から送ってもらっていたけれど、よく考えたらもう必要ないかもしれない」という回答が返ってくるかもしれません。それに加えて「社内ルールで決まっているから必要」という話もよくありますが、その社内ルール自体に問題があるかもしれませんので、ルールの方を変える必要があるかもしれないと考えて行動しましょう。

4. 管理業務の中で減らせるものを探す

「管理業務」の中で、どうしてもなくせないものでも減らせるものはあったりします。たとえば日次で提出している報告書は「本当に日次で出す必要があるのか。週次あるいは月次でもよいのではないか」とか、「ワードの文章1枚にびっしり内容を書いて提出しているが、Google Formを使って選択肢を選ぶだけにしても十分ではないか」といったことを検討する余地はあるはずです。業務そのものをなくせなくても、工夫次第で十分に負荷は減らせます。

5. 管理業務の中で自動化できるものを探す

「管理業務」の中に情報やデータの「入力」や「転記」、「集計」といった作業、それも規則性があって頻繁に繰り返されるようなものは自動化の余地があります。簡単なものであればエクセルの関数やピボットテーブル、或いはアクセスのクエリなどを使ってできるものもあります。もう少し複雑なものでもVBAやバッチファイルなどを駆使すれば自動化できる作業は多々あります。実際に、5時間かかる作業を自動化によって2分で終えられるようになったという事例も珍しくありません。もちろん、自動化に伴って人的ミスもなくせるので一石二鳥です。

以上、管理業務の負荷を減らすための考え方、進め方をお伝えしました。職場の業務改善に役立てていただけましたら幸いです。