「バレットジャーナル(Bullet Journal、以下『BJ』)」はアメリカ発祥で、日本には2014年頃から知られるようになった手帳術です。このたび書き方ガイド本の『「箇条書き手帳」でうまくいく はじめてのバレットジャーナル』(Marie著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/1,400円+税)が刊行されました。同書を手掛かりにBJの概要を紹介していきましょう。

  • 『「箇条書き手帳」でうまくいく はじめてのバレットジャーナル』(Marie著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/1,400円+税)

必要最低限のBJ構成要素は4つ

BJは、アメリカ発祥の手帳術です。同書によれば「ニューヨーク在住のデジタルプロダクトデザイナーであるライダー・キャロルさんによって開発された、ノートによるスケジュール管理システム」(P.25より)だそうです。

もともとこの方法は、考案者が学習障害を克服するための方法として考えられたという側面があります。そして本書中で紹介されている方法は、基本的にはスケジュールとタスクを管理するための方法です。後述するInstagramで多数シェアされているように、デコったり盛ったりという要素は必須ではありません。構成要素を簡単に見ていきましょう。

まずその必要最低限の要素は以下の4つです。

1.インデックス(目次)
2.フューチャーログ(半年分の予定を書く)
3.マンスリーログ(月間予定を管理)
4.デイリーログ(1日の予定・タスクを管理)

1.でノートの巻頭にまずインデックスを作ります。ここでページごとのタイトルを記入しておくと検索性が高まります。またその前提として、各ページにページ番号をあらかじめ打っておくことになります。2.では、見開きのページに横に2本線を引いて3等分し、半年分の記入欄を設け、それぞれ記入します。そして3.で、見開きの左ページに月間の予定、右ページにタスクを記入します。そしてメインとなるのが4.のデイリーログです。

ここには何でも書いていいことになっています。そしてその内容を区別するために記号を利用します。もともと「Bullet」は点を意味するのですが、必要に応じて、チェックボックスや自分で決めたルールの記号を利用します。そのことで、開いたときの一覧性と、検索性を両立させているわけです。

そして5番目の要素が「コレクション」のページです。これは「やりたいことリスト」や「見たい映画リスト」など、自分が関心のあるジャンルに関するリストです。既存の手帳に用意されているこの種のページとは異なり、後述するように普通のノートを利用するので、リストをどこまでも増やせるのがメリットです。

また、使う手帳も指定はありません。同書中に明言されているように、必要なものは、好きなノートとペンだけ。同書の著者はモレスキンを使っているようですが、巻末のユーザー事例ページには、別のノートやシステム手帳を使った例も出ています。

同書には以上のようなことが簡潔に、かつきれいで簡素な事例とともに丁寧に紹介してあります。そして同書では、この"簡素"というのがポイントです。

手帳術を紹介する本では、ともすれば見栄えのよい、びっしりと記入され工夫が凝らされた記入例が多数掲載される傾向があります。そして同書では、BJの本質をきっちりと見せるために、記入例の説明は非常に簡素に見せているのです。

例えばInstagramで、「#バレットジャーナル」のハッシュタグで検索すると、多数の事例がヒットしますが、それらの多くはきらびやかかつ華やかです。そしてそれはBJの本質ではないとこの著者は語っているわけです。

それは同時に、BJが上記の要素を押さえた上で、記号の使い方を工夫していくだけで挫折することがない手帳術であることの強調でもあります。この種の書籍の著者の例に漏れず、Marie氏も各種の手帳を遍歴したマニアだったそうです。それでもほかの手帳は続かなかったのに、「ここ2年ほどは年、3~4冊のペースでノートを使い切っている」と記しています。これはBJの、手帳術としての普遍性と、自由度に由来していると思われます。

つまり、時系列で情報を記入し、記号で情報を区別。また、日付がない分、どのページにどんな情報を記入するかがユーザーにゆだねられていることです。

BJと手帳の相違点

手帳との一番の違いは、日付の記入でしょう。BJをやられている方ならば既に当たり前に思われる点かもしれませんが、これは大きな点です。自分で日付を記入するのは、時間に対する主体性を最も簡単に発揮することだとも思えるからです。

同書は、上記のような入門要素だけでなく、「買い物リストはふせんに書いて貼る」とか、「デイリーログはEvernoteにアップするとあとから検索できる」などのようなちょっとしたコツが随所に出ています。また特にコレクションのページのアイデアを第3章すべてを使って紹介しています。これは普通の手帳のユーザーが巻末のノートページを使うアイデアとしても利用できそうです。特にこの時期に便利そうなのは、P.130の「年賀状プロジェクト」でしょうか。

そのほか、未完のタスクへの取り組み方や、タスクの処理時間を見積もり記録して、終了時間予測の精度を高めるなど、オーソドックスな時間管理術もさらっと紹介してあります。個人的には、BJは、「ESダイアリーの各種ラインナップで手帳の構成を見切る」でも触れた、手帳はノートに時間軸OSをインストールしたものだという仮説の具体例だという感じも得ました。

手帳の使い方に迷っている人には、最初に読むといいのではないか。『「箇条書き手帳」でうまくいく』にはそんな感想を持ちました。

舘神龍彦

舘神龍彦

手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。

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