会社員の場合、源泉徴収の形で給料から天引きされるため、あまり意識しないままに払っていることが多い税金。しかし、せっかく給料が増えても、「手取りが増えないのは何でだろう?」と手をこまねいているだけなのは、あまりにももったいない。税金の種類や仕組みを理解して、払うべきものは払って、後から慌てないように、また取り戻せるものは取り戻して、"お得生活"ができるように、ゼロから勉強しよう。


1月から12月の収入をベースに翌年課税される住民税

税金には国に納める「国税」と地方自治体に納める税金「地方税」の2種類がある。会社員にとっては、所得税が国税、住民税が地方税ということになるが、今回は住民税に焦点を当てる。

住民税は一律10%。東京都は均等割部分で今年から増税

給与明細をみると、所得税とともに、結構な金額が引かれているのが住民税。人によっては、所得税より住民税のほうがたくさん取られているケースもあるのではないだろうか?

住民税は正式には「個人住民税」と呼ばれ、都道府県や市区町村が行う住民に身近な行政サービスに必要な経費をまかなうもの。

住民税は、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と、所得金額にかかわらず定額で課税される「均等割」にわかれている。このうち、所得割は課税所得金額に対して、一律10%が差し引かれる(表参照)。この10%という税率は、年収300万円だろうが、1億円だろうが、誰でも同じなのだ。所得税は金額によって、税率が違う上、5%から設定されているために、先ほどのように所得税より住民税のほうが高い人が出てしまうのだ。

もうひとつ、所得金額にかかわらず定額で課税される「均等割」というものがある。こちらは、一般に県民税額1000円、市区町村税額3000円で合計4000円が徴収される。しかし、一部地域でこの金額が違っており、よく、住民税は住む場所によって違うなどといわれるのは、この部分の差だが、せいぜい1000円、1500円の差だ。ちなみに、東京都でいえば、今年、つまり平成26年度から35年度まで、地方自治体の防災対策に充てるため、均等割額を都民税1500円、市区町村税3500円と合計で1000円UPされる。消費税率がUPになっている陰で、こんなところでも増税が実施されるのだ。

個人の都民税・区市町村民税

 

6月から新税額が課税、入社2年目は初住民税に注意

住民税の課税は所得税と仕組みが違うので、多くの人が混乱する。所得税の場合、収入があったタイミングで、同時に課税される仕組みだ。つまり10万円の収入があり、所得税率が10%とすれば、10万円×10%=1万円が、収入が入るのと同時に徴収され、手元には9万円が振り込まれる。

ところが、住民税は3月15日までに、前年1年間(1月1日~12月31日)の所得を1月1日現在の住所地の市区町村に申告され(基本的に税務署から市区町村に連絡される)、その年収から住民税が算出される仕組み。それが実際は6月の給料から天引きされる。つまり、前年は残業が多くて年収が上がっていれば、6月からそれに応じた住民税が天引きされるので、住民税が前年よりUPした金額で差し引かれて、5月に比べて少し手取りが下がった印象を持つことになるというわけだ。

もっというと、前年は残業が多くて月給が多かったが、今年はあまり残業がなく月給が少ない場合、住民税だけは年の収入に連動した高い金額を徴収されるということが起こるわけだ。会社員から見ると、ちょっとした"後払い感覚"といえるだろう。

退職して無収入でも容赦なく支払い票が送られてくる

この住民税の仕組みは、いろいろなところで波及効果をもたらす。たとえば、新入社員。基本、前年の収入がないので、住民税は差し引かれない。給料から差し引かれるのは、所得税だけだ。その分の住民税は入社2年目の6月から差し引かれる。新入社員だと、給料が低く、所得税率が5%の場合も多いだろうが、住民税は一律10%だ。突然、税金がダブルで引かれて、かなり手取りが減ってしまう感覚になるので注意が必要だ。

退職後も大変だ。退職した場合は前年の収入に連動した住民税のお知らせが、翌年6月頃に自宅に届く。たとえば、専業主婦になってしまったという人もいるだろうが、前年の収入に対する課税なので、容赦なしだ。事前に収入額を把握しておき、退職後に払えるように準備しておく必要があるだろう。ちなみに、失業保険については非課税となっている。 また公的年金受給者(65歳以上)は、年金給付額から特別徴収される。

住民税に還付金はなし! 減額の形で反映される

所得税の場合、年末調整で調整金が戻ったり、確定申告で還付金が戻ったりする。これは、収入が発生した都度、税金を徴収しているため、あとから、調整が必要になるため。しかし、住民税の場合は、所得税で前年に確定した金額を徴収しているので、税金が還付されるといった仕組みはない。

ただ、特例として、平成21年から29年までに入居した人で、所得税から住宅ローン控除を引ききれなかった場合、翌年の住民税(所得割)から控除されることになっている。これも、還付金があるわけではなく、住民税が減額される形で徴収されるものだ。ただし、これは特例中の特例で、平成26年4月居住開始分からで、最高13万6500円までが減額される。

ふるさと納税などの寄付金税額控除については、第5回で紹介したとおりだ。

あなたの6月からの住民税はいくらだろうか? たまには、給与明細を見て、確認してみてはどうだろうか?

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。