はじめまして。人材開発コンサルティング企業、ラーニングエンタテイメントで代表をしている阿部淳一郎と申します。初回なので、簡単にこの連載の趣旨を説明させていただきます。

このコラムはタイトル通り「上司からのストレスとどう向き合うか」がテーマ。

1回目は、「自分らの頃はこうだったんだ、いまどきの若いやつは甘い!」といった昔スタイルを押し付けてくる上司への対処策を考えていきましょう。

  • 上司が昔の「押し付け」スタイルだったら?

上司の意識が昔のまま

企業の人事コンサルティングの仕事をしていると「管理職Aさんの部下から「メンタル不調者」や「離職者」が続出している」といった特定の方のマネジメントスタイルの課題に遭遇することが頻繁にあります。

その要因を分析すると、いくつかのパターンがあるのですが、そのうちの一つに、「昔スタイルの押し付け」があります。

例えば、実際にあった例を挙げると

「上司がまだ仕事をしているのに、定時だからといって帰るんです。上司より先にですよ? 私らのころは、『終電まであと1時間は仕事できる!』といった感じだったのに。ありえます?」
「パワハラがなんだとかうるさい時代じゃないですか。でも、私らのころは、そんなの当たり前でしたよ。耐えて、耐えて、それでも食らいつくのが仕事じゃないんですか?」

にわかに信じがたい話かもしれませんが、減少しているとはいえ、こうした意識の管理職がまだまだ存在するのも社会の実情なのです。

上司の意識を紐解く

そもそも、なぜこのような思考になるのでしょうか? 多くの場合「心の奥底にある強い寂しさ」が要因として考えられます。

1:現状、自分は、仕事で成果を出せていない
2:現状、部下をはじめ、社内のメンバーたちから、あまり好かれていない
3:現状、プライベートが上手くいっていない
4:過去に強いトラウマ等があり自分に自信がない

このような状況から「寂しい」「苦しい」といったメンタル状況にあることが考えられるケースが非常に多く見受けられるのです。

これは、「バラ色の回顧」という心理学用語で説明がつきます。人間は「自分の過去を美化したい」動物です。なぜなら、「自分を肯定したい」という本能があるため。

だから、「つらい」「寂しい」という否定的な感情が強くあると、自分の過去を強く肯定することによって、今のネガティブな感情を抑え、必死に自分の人生の正しさを証明しようとします。

言い換えると、上司の意識は、「部下の育成」ではなく「自分を守ること」に向いています。だから部下からすると、何のメリットもなく「ただ不愉快なだけ」でストレスが溜まるのです。

反対に、仕事で成果を出していて、かつ、社内外からの信頼も厚い、「仕事のできる」管理職からは、「昔スタイルの押し付け」があまりないように私は感じます。

自分の心が満たされていますから、「自分らの頃はこうでした。ただ、今は時代が違いますから、必要なら合わせる」と、きちんと視座を「部下の育成」に置くことができ、相手への配慮ができるためです。

本来であれば、こういう人にのみ「リーダー職」に就いてもらうことが望ましいでしょう。ただ、「年齢だけ」「社内歴だけ」で昇進させてしまう人事制度になっている企業もまだまだ多くあるのも実情です。

上司への対処法

では「昔スタイルの押し付け上司」に当たってしまった場合は、どうすればいいのでしょうか? 理想は「◎◎をすればいい」と一言でお伝えできればベストでしょう。しかし組織には上下関係があります。管理職側が変わらないと本質的解決は難しいのが現実。

だから、部下の立ち位置でできる現実的な対処法としては、以下3点になります。

1:離れる
2:距離を取る
3:受け流す

1は配置換えです。これがベストですが、なかなか難しいでしょう。そうなると、現実的な打ち手としては「2」と「3」になります。

2は「業務連絡はきちんとするが、それ以外のことに関しては、あまり深入りしない」という付き合い方をすること。

3は「そういう人なんだと割り切り、話をきいたフリをしつつ、受け流す」ということです。

業務をきちんと遂行することは大前提ですし、チームのために何か貢献する行動を取ることも重要です。大半の上司は素晴らしい人たちですが、全員が人格者とも言えません。その発言に部下であるあなたを育てる意図がないケースもあるのです。

うまくストレスを逃がす「捉え方」、言い換えると「割り切り」が必要な時もあるということを頭の片隅に置くのがよいでしょう。