いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令され、店舗営業をするお店が限られているため、しばらくはテイクアウト特集。今回は、東中野の洋食店「味のグリル 洋一亭」です。

  • 駅から見える赤い暖簾の洋食屋さん「味のグリル 洋一亭」(東中野)(写真:マイナビニュース)

    駅から見える赤い暖簾の洋食屋さん「味のグリル 洋一亭」(東中野)

駅から見えるあの店へ

新宿から中央線を西に進んだ場合、最初の停車駅は中野です。並行して走る総武線が停まる大久保と東中野を、中央線は通過するわけです。

そんなところからもわかるとおり、東中野は中央線の駅ではありません。とはいえ正しくは「中央・総武緩行線」と呼ぶそうなので、「中央線の仲間」みたいな位置づけにしてもいいのかな?

しかしまぁいずれにしても、そのあたりのことは大目に見ていただきたいと思うのです。なぜって、取り上げる価値が大いにあるお店が東中野にはあるから。総武線の8号車あたりに乗ると、東中野での停車時に見える洋食店「味のグリル 洋一亭」。

  • 駅のホームからも見えるロケーション

東中野駅の西口2という小さいほうの出口を出て、線路沿いを新宿方面に進むとすぐに出てくる「美容室ボヌール」(これまたレトロ)の角を右折すれば、「ステーキの店 洋一亭」という看板が。つまり、迷いようがないロケーション。 店舗の入り口は左側ですが、厨房の出入り口(「厨房室」というプレートがかっこいい)がある右側にお持ち帰り用スペースがあります。お弁当メニューも充実しているので、近隣には利用者が多いのでしょう。

  • 昭和の香り漂うエントランス

ただ、メニューが驚くほど多いんですよね。しかも魅力的なものが多いので迷ってしまったのですが、電車に乗って持ち帰ることを考慮して、こぼれにくいであろう豚肉生姜焼き弁当をオーダーしました。

  • テイクアウトコーナーもバリエーション豊か

  • お弁当は通常メニューに加え、日替わり

店頭の奥様が厨房に「生姜焼き」と伝えると、「はい」と返事が返ってきて調理の始まる音が聞こえてきます。

それにしても、いい雰囲気のお店ですね。まず、なんといっても店名がいいじゃないですか。お聞きしたところ、オーナーシェフのお名前が宮下洋一さんなので「洋一亭」なのだとか。

わかりやすいし、かわいらしいネーミングだと思います。なお、覗かせていただいた店内もレトロでいい雰囲気ですが、それもそのはず。今年で48年目なのだそうです。

  • 店内もいい雰囲気

ずっと堅実な仕事をされてきたからこそ、地元に根づいているのでしょうね。とはいえやはり、新型コロナが流行して以来、お客さんの数ががくんと減ったのだといいます。仕方がないことだとはいえ、やはり複雑な心境ですね。

バランスのいいお弁当に箸がすすむ

さて、そんなことを奥様とお話ししていたら、いい匂いがしてきて、やがてお目当ての豚肉生姜焼き弁当ができあがってきました。さっそく持ち帰って、いただいてみることにしましょう。

  • さあ、持ち帰りましょう

ちなみにいただいた手書きメニューを拝見したところ、日替り弁当は「肉料理」「魚料理」「その他一品」「添え物」という充実した構成になっているのですが、豚肉生姜焼き弁当の充実度のなかなかのもの。

たっぷりのご飯と生姜焼きに加え、サラダ、卵焼き、ポテトのソテー、漬物、そして筑前煮まで入っているのです。どれから、どういう順番でたべようかと、迷う楽しみもあるわけです。

  • 食欲をそそる俯瞰図

トマト、キュウリ、レタスのサラダは鮮度はよかったものの、ドレッシングかかかっていなかったのが残念だったかな。生姜焼きと一緒に食べるべきだったのかもしれませんが。

  • おっと、キュウリがズレちゃってましたね

とはいえ、主役の生姜焼きは絶妙のひとこと。濃い目の味つけだろうと踏んでいたのですが、濃すぎず、薄すぎず、他のお惣菜と無理なく共存できるような塩梅なのです。ボリュームもあるし、もちろんご飯との相性も抜群。

  • 生姜焼きはボリューム満点

一方、つけ合わせも申し分ないですね。最初、なんなんだろうと不思議に感じた四角柱のものはポテトをソテーしたもので、適度な塩分がいい感じ。一方、卵焼きは薄味で、つまり全体的なバランスがよく考えられているという印象を受けました。

  • ブレちゃいましたが、彩り豊か

そして、メインの生姜焼きに匹敵するほどの存在感を示してくれたのが筑前煮。「洋食なのに筑前煮?」などとヤボなツッコミを入れてはいけません。こういうところが、街の洋食屋さんの魅力なのですから。

  • 筑前煮が、予想以上のおいしさ

しかも、味がしっかり染み込んでいて、とてもおいしい。他のおかずとはテイストが異なるだけに、ちょうどいい箸休めになってくれるのです。

これで750円とは、驚きのクオリティですね。非常に満足できましたし、コロナ禍が収束したら、ぜひ店内でも食べてみたいと感じました。


●味のグリル 洋一亭
住所:東京都中野区東中野1-56-1 大島ビル1F
営業時間:11:00~15:00、17:00~22:00
定休日:日曜、祝日

印南敦史

作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新)ほか著書多数。最新刊は、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)。6月8日、「書評執筆本数日本一」に認定。