いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、 中野の喫茶店「パルム」をご紹介。

  • 商店街裏手の昭和喫茶「パルム」(中野)

数年前ぶりに行く、忘れがたいお店

以前、中野の「薬師あいロード」という商店街にある和菓子店「冨士見野」をご紹介したことがあります。チャーシューめん、おいしかったな。

今回の主役である「パルム」という喫茶店は、そのちょっと手前にある路地を入ってすぐ左。ガラスの入った木枠の扉が歴史を感じさせる、いかにも昭和な雰囲気のお店です。

  • 青空に映える黄色い看板

じつは数年前、とある雑誌の取材でお邪魔したことがあり、以後もずっと、またお邪魔したいと思っていたんですよねー。つまり、それくらい忘れがたいお店だったということ。

  • なんとも味のある外観

店内は決して広くはないけれど、でも狭すぎもせず……という感じ。入ってすぐ右にひとつ、左側にふたつ、4人がけのテーブルと椅子があり、右奥はカウンターになっています。茶色いテーブルとモスグリーンの椅子が、なんともいい雰囲気。

  • 椅子もテーブルも素敵なレトロ感

それに、柱のタイルや街灯を模した壁の照明器具にも、さりげなくおしゃれですね。なお客さんの対応はお母さんの担当で、厨房内でオーダーに応じていらっしゃるのが息子さんです。

  • 落ち着ける雰囲気

伺ったとき、お客さんは右の席に向き合うふたりのお年寄りだけでしたが、以後も次々とひとり客が訪れ、あっという間に店内は満員に。あとから入ってきた数人のグループに対して、お母さんが申し訳なさそうに「いっぱいなんです、ごめんなさいね」と謝ったりもしていました。

お昼時だったせいもあるのでしょうけれど、商店街から一本外れた場所にあるのに、なかなかの人気ですね。

でも、それもそのはず。なぜって、息子さんが手がける料理の数々が、このお店の魅力のひとつだからです。

  • 魅力的なフードメニュー

品数豊富とまではいかないものの、スパゲティやカレー、ピラフ、オムライスなど“喫茶店にあってほしいメニュー”はひととおり揃っているので、メニューを見ているだけで迷ってしまうほど。

だからまた迷いかけたのですけれど、前回はナポリタンをいただいたので、今回はハンバーグにしてみました。

会話の邪魔にならない程度の音量で流れるFMラジオの音声を耳に感じながら、ゆっくりと店内を見回します。いい意味でとことん普通だから、やっぱり落ち着くなー。店頭の手書き看板には「昭和Café」と書かれていましたが、個人的にはあえて喫茶店と呼びたい感じ。

ちなみに喫煙OKで、たばこを吸っているお客さんの姿も確認できます。でも換気がしっかりしているからか、不思議と気になりませんね。

  • 冷奴とたくあんがシブい

さて、まずは割り箸がテーブルに置かれ、次に冷奴とたくあんの入った小皿が登場。ご飯は、お皿ではなくお茶碗によそってあります。いいですねえ、昭和喫茶の王道というべきこういう感じ。

  • 見た目も正統派のハンバーグ

続いて置かれたプレートには、デミグラスソースのかかったハンバーグ、目玉焼き、トマト、レタス、きゅうりのサラダが。予想どおりの見た目で、なんとも食欲をそそられます。

  • 味噌汁もうれしい

で、少し遅れて味噌汁もお目見え。具がわかめだったことも、わかめ派(なんだよそれ?)の僕にはありがたいところだわ。

  • 中身が詰まったハンバーグ

明らかに手づくりのハンバーグは少し硬めでしたが、もちろん肉汁たっぷりで食べごたえ抜群。デミグラスソースとの相性も抜群で、ご飯がどんどん進んでしまいます。半熟卵を割って黄身を絡めれば、また違った味が楽しめますね。

味噌汁もおいしかったし、全体的にきちんと手がかかっていることがわかります。なるほど、ランチ狙いのお客さんが多いはずだわ。

  • 締めはアイスティーで

食後にはアイスティーを飲みながら少し本を読んだのですが、落ち着ける雰囲気なので自然にページが進みました。なににも邪魔されずゆっくり本が読めるって、“正しい喫茶店”の条件かもしれません。

それはともかく、他のメニューも気になるなあ。次回は店名を冠した「パルムサンド」を注文してみよう。

●パルム
住所:東京都中野区新井1-22-4 ビラ松井ビル1F
営業時間:8:00~19:00
定休日:月1不定休