いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、新宿の洋食店「アカシア」をご紹介。

  • 安定・満足のロールキャベツ「アカシア」

個人的には「『ロールキャベツシチュー2貫とご飯』が最強」

新宿ALTAの裏口に立ったら、目の前に見えるドラッグストアとカラオケ店に挟まれた路地へ。すると、すぐ右側に見えてくる洋風の建物が、今回ご紹介する「アカシア」。ご存知の方も多いでしょうが、1963年からこの地で営業を続ける老舗の洋食店です。

  • レトロな看板もかわいい

いま洋食店と表現しましたけれど、正しくいえばここはロールキャベツのお店です。カレーライスやクリームコロッケなどもありますし、それらももちろんおいしいのですが、(少なくとも個人的には)ロールキャベツをいただくべきお店だと考えているのです。

だって、それだけおいしいから。

初めて食べたのは学生時代だったかな? 以来、ときどき無性に食べたくなり、ふらっと立ち寄ったりしていたのでした。人気店だけあって混雑することが多いので、そこだけが困りものだったんですけどね。

  • 新宿の中心にあってこの風格

ということで、この日は11時30分の開店直後を狙うことにしました。早めに着いたので一番乗りでしたが、あとから続いて数人のお客さんが。すぐ満員になったわけではないにしろ、人気の高さはあいかわらずといった印象だなー。

  • 店内も歴史を感じさせる

店内は入ってすぐ目の前にレジがあり、その向こうにテーブル席が並びます。いちばん奥の厨房手前にはカウンター席もあるのですが、そこに座るのはさすがに勇気が必要かも。

実は、今回は数年ぶりの再訪で、そのせいもあってか、ちょっと印象が変わった気がしました。まず、以前いらっしゃったクールなお婆さんが不在。お休みだったのかお辞めになったのかはわかりませんが、若い男女の店員さんがキビキビと働いています。

昔はそのお婆さんに座席を指定されることが多く、相席になることも珍しくなかったので、「お好きな席へどうぞ」と声をかけられて少しビックリ。混雑してきたらまた違ってくるのかもしれませんけれど、この時点では相席になることもなく、単独客はみんな4人席に収まっていました。

でも、サービスの仕方は変わっても、ロールキャベツの味は変わってないんだろうな。そんな期待感を抱きつつ、定番メニューの「ロールキャベツシチュー2貫とご飯」をオーダー。

  • メニューを見るまでもなく、頼むものは決まっていました

いや、「ハヤシライスとロールキャベツシチュー」「極辛カレーライスとロールキャベツシチュー」など組み合わせメニューも充実していますし、それらももちろんおいしいのです。ただ組み合わせの場合は、ロールキャベツが1貫しか入ってないんですよ。

前回、「やっぱりロールキャベツは2貫食べたいところだなぁ」と感じたので、個人的には「『ロールキャベツシチュー2貫とご飯』が最強」だという結論に至ったわけです(個人の感想です)。

  • スプーンのみという潔さ

さて、まずはペーパーナプキンに乗ったスプーンが出され、次いでロールキャベツのお皿とご飯が登場します。この、「スプーンだけを使って、ロールキャベツでご飯を食べる」という昭和スタイルこそがアカシア。今風ではないかもしれないけれど、もう何十年もこのままだからこそいいのです。

  • 昔と変わらないルックス

同じことは、熱々のスープがかかったロールキャベツにもいえます。そのルックスからして昔と変わらず、見ているだけでかつて体験した独特の味が記憶に蘇ってくるほど。

そう、ここのロールキャベツシチューには、気をてらってはいないながらも強いオリジナリティがあるんですよねー。

  • ロールキャベツらしいロールキャベツ

ロールキャベツは、牛豚合挽き肉をキャベツで巻いた正統派。そこにたっぷりかかっているのは、時間をかけて煮込まれたトロリとしたチキンスープ。もちろんスープはアツアツで、キャベツも挽き肉も柔らか。

  • コクのあるチキンスープが絶妙

  • スプーンで簡単に切れる

それにしても、数年ぶりで食べたその味はやはり絶品。チキンスープは塩気が濃い目なので、“ご飯は進むよどこまでも”ってな感じです。だからこそ、一度食べてみれば「ロールキャベツでご飯を食べる」というスタイルが理にかなっていることを実感できるはず。

なんだか、すごくホッとする……。

長く続いていることには、しっかり理由があるってことですね。

●アカシア
住所:東京都新宿区新宿3-22-10
営業時間:11:30~20:00 (L.O. 19:30)
定休日:不定休