いよいよ佳境に入っていた「ウルフ50」のレストア作業。大まかな工程としては、今回の塗装が最後の作業だと言っていい。完成は目前だ。ただし、塗装作業は完成を目前にして最大の難所ともいえる。レストアでなくとも、過去に愛車の塗装にチャレンジして失敗したという経験を持つ人も多いだろう。

塗装する外装パーツはこれだけ。ガソリンタンクは内部のサビ取りをしたときにプラサフまで仕上げてある。その他のフロントフェンダー、シートカウル、サイドカバーは手つかずの状態だ

シートカウルに大きな割れがある。安く手に入るパーツだったら交換したほうがいいくらいだが、今回は補修に挑戦してみる

じつは筆者も、塗装は大の苦手だ。満足いく仕上がりにするのはとても難しく、どうしてもプロが塗るようなツヤは出せない。しかし、そんな筆者でもちゃんと手順を守って手を抜かずにやれば、100点満点は無理でも80点くらいの仕上がりにはできる。80点とは、自分としては不満だらけでも、人に見せればすごくきれいだと褒めてくれるくらいのレベルだと思えばいい。

まず最初に究極のコツを書いておくが、塗装で一番いけないのは急ぐこと。決して急がず、時間と手間を惜しまなければ、誰でも80点の仕上がりにできる。残り20点は技術が必要だが、80点までは技術は不要。ただ手順通りに急がず作業するだけだ。しかし、この「急がない」というのが意外と難しい。日曜日の夕方になると、どうしても今日中に仕上げたいと欲が出て、生乾きのままサンドペーパーをかけてすべて台無しにする……といったことになりかねない。

塗装の失敗はやり直しがきくので、台無しにしてしまったのなら、もう一度最初からやり直せばいい。しかし、そうなるとますます急いでしまい、すべての作業が雑になって、あとで後悔するといったパターンもよくある。このように、急がないことは意外と難しいのだが、そこを我慢すれば塗装は必ず成功する。

割れを補修して下地を作る

この「ウルフ50」の外装は比較的に程度が良いのだが、惜しいことにシートカウルに大きな割れがある。まずこれを補修しておかなければならない。シートカウルの素材は樹脂(おそらくABS樹脂)なので、補修は「樹脂溶接」という方法を使うことにする。これは熱で樹脂を溶かしてくっつける補修方法で、非常に頑丈に接合でできる上に、接着剤のように硬化するのを待つ必要がない。

道具はハンダ付け用のコテを使う。ただし、温度が高くなりすぎてしまうので、コントローラーが必要だ。どちらもそれほど高いものではなく、両方購入しても合計5,000円くらいで手に入るだろう。

使用するのはこのようなハンダゴテと、パワーを調整するコントローラー。コテの先はこのようなナイフ型の方が使いやすい

裏からコテを当てて樹脂を溶かし、溶接する。このとき、同じ樹脂素材を棒状にしたものを、ハンダ付けのハンダのようにして使う。そうでないと樹脂が減って凹んでしまうのだ

溶接があまり上手にできなかったので、同じ素材の板を裏から接着剤で貼り付けて強度を出した。その後とりあえず240番くらいのペーパーをかけて、大きな出っ張りを削っておく

バンパーパテを使う。今回のような用途では、2剤を混ぜて短時間で硬化するタイプを使う

パテを盛った。盛りすぎると後のペーパーがけが大変なのだが、足りないのはもっと困る。素人にはその加減が難しい

パテ盛り後、さらにペーパーがけ。最初は240番、途中から400番くらいにする。写真は仕上がったものだが、じつはパテ盛りとペーパーがけを3回くらい繰り返し、ようやくさまになった

樹脂溶接がうまくできれば、そのままペーパーがけで仕上げることもできるのだが、筆者はあまりうまくないので、凹凸をパテ埋めして仕上げる。使用するのは金属用のパテではなく、バンパー用パテだ。これは樹脂によく密着し、柔軟性もある。

パテが完全に硬化したら、ペーパーがけして表面に段差がないかチェックし、必要に応じてパテ盛り、ペーパーがけを繰り返す。1回でできそうなものだが、素人の場合は2~3回繰り返さないとうまくいかないのが普通だろう。

割れの補修ができたら、他のパーツもすべてサンドペーパーをかけて、表面を荒らす「足付け」を行う。現在の塗装がメーカー純正の塗装であれば、表面のツヤが完全になくなるまでペーパーがけをすればいいだけだ。ただし、現在の塗装が剥がれやすい粗悪な塗装であれば、その塗装はすべて剥がしておく必要がある。これは非常に面倒な作業だが、粗悪な塗装の上に重ね塗りをすると悲惨なことになりかねないので、絶対に必要な作業だ。

次は塗装の密着をよくするため、バンパープライマーを塗り、プラサフを塗る。プラサフはプライマーとしての役割もあるのだが、車のボディ、つまり鉄を想定したプライマーなので、樹脂用のプライマーであるバンパー用プライマーを塗ったほうがいいのだ。

プラサフまで塗り終えたら、完全に乾燥させてからペーパーがけをする。プラサフの「サフ」はサフェーサーのことだが、これにはパテのようなはたらきがある。といってもキズを埋めて消すことはできないが、もっと微細な凹凸や段差を埋めるのだ。たとえば、足付けのペーパーがけで塗装が部分的になくなってしまい、まだら模様になったとする。その上からカラー塗料を塗ると、必ずそのまだら模様が浮き出してくる。プラサフはそれを防ぐことができるのだ。

他のパーツもペーパーがけする。プラサフを塗る前のペーパーがけは400番でいいだろう。耐水ペーパーで水を流しながらペーパーがけする水とぎがおすすめだ

プラサフを塗る。塗るものを地面や机の上置いて塗ると、ミスト(空気中で硬化した塗料の粉)が降りかかって台無しになるので、パイプ組みのスタンドを使うか、軽いパーツなら手に持って塗るといい

プラサフを塗り終わった。このあと、プラサフの表面を800番くらいのペーパーで水とぎする

サイドカバーは下半分が黒なので先に塗っておいたが、これは大失敗だった。赤を塗るときに黒い部分をマスキングしないといけないので、非常に手間がかかる。全体を赤く塗って黒を重ね塗りするほうが簡単できれいに塗れるのだ

ちなみに、プラサフにはもうひとつの役割がある。それは下地の色を均一にすることだ。とくに今回の塗装では、色を赤にすることにしたので、これが重要。赤は透ける色で、極端にいえば半透明な色だ。プラサフなしで塗ると、パテ埋めしたところなどはその色の違いが透けて見えてしまう。また、黒や青の塗装の上から赤を塗っても、絶対に真っ赤な発色にはならない。黒や青と混ざった色になってしまうのだ。これは赤をどんなに重ね塗りしても絶対に解消しない。

したがって、赤あるいは黄色のような透ける色を塗るときは、プラサフで全体を均一な色にしておく必要がある。赤ならグレーのプラサフ、黄色なら白のプラサフを使おう。「赤には白のプラサフじゃないの?」という人がいるかもしれないが、正しくはグレーだ。といっても、プラサフを使わないのに比べれば、どちらでも使ったほうがずっといい。

カラー塗料を塗り、2液混合のウレタンクリア塗料で仕上げる

カラー塗料が塗れたら、最後はクリア塗料を塗って仕上げる。クルマやバイクの塗装では、ソリッドカラーにはクリアなし、メタリックカラーにはクリアありが基本ともされるが、ソリッドカラーでもクリアを塗ったほうがきれいに仕上がりやすいし、塗装が丈夫になる。塗料は色素の入っていない透明が最も硬く丈夫で、濃い色ほどやわらかく傷つきやすくなるのだ。

いよいよカラー塗装。じつは自動車用の塗料ではなく、一般用途の塗料を使っている。理由は安価なのと、においが少ないから。住宅街ではにおいは重要だ。ただし、一般用途の安価な塗料はすぐに色あせするので、一般用途の中では一番高価なもの(アサヒペンの高耐久ラッカースプレー)を使った

赤で塗ってからソフト99のウレタンクリアを塗った。ウレタンクリアは高価だし非常に臭いが、仕方がない

バイクの場合は、クリア塗装にもうひとつの意味がある。バイクは構造上、タンクなどにガソリンを垂らしてしまうことが多いので、ガソリンに侵されない塗料が必要だ。プロが使う塗料はすべて耐ガソリン性を備えているが、アマチュアが使うスプレー塗料は一般的にラッカー塗料と呼ばれるもので、ガソリンで溶けてしまう。ただし、クリア塗料だけはプロが使うのと同じウレタン塗料が販売されているので、これで仕上げることにより、ガソリンに侵されない塗装とすることができるのだ。

クリアで塗装した後、こだわるならさらにペーパーがけ、そしてバフがけをして塗装表面が鏡のようになるミラーフィニッシュをめざすこともできる。しかし、今回使用したソフト99のウレタンクリア塗料は超光沢を特徴としており、バフがけしなくても濡れたような輝くツヤが出る。塗装表面は平滑なミラーフィニッシュではなく、ゆず肌のような緩やかな凹凸のある状態だが、満足すべき仕上がりといえるだろう。技術がないのに欲を出して、凹凸を消すためにバフがけをすると、ゆず肌が消えずにツヤが消えるという悲惨なことになりやすい。初心者なら塗りっぱなしで完成としておくのが無難だ。

最後にスズキのステッカーをタンクに貼った。本来はステッカーを貼ってからクリア塗装するのだが、今回のステッカーは光沢のあるシルバーで塗装を弾きやすいため、後で貼ることにした

外装パーツを仮組みしてみた。元色が黒だったのを赤にしたので、激変した印象だ

さて、塗装も無事に終わり、レストアはほとんど完成と言っても過言ではない状態。次回は細かい仕上げをしてレストア完了。最終回としたい。

レストアの必須アイテムを紹介! 「防塵マスク」

今回のような塗装をはじめ、サビ取り作業などで忘れてはいけないのが防塵マスクだ。アマチュアだからそこまでしなくても……という人はすぐに考えを改めたほうがいい。健康に関わることにプロもアマチュアも関係ない。もちろん高価なものは必要ないが、一番安い使い捨てタイプではなく、フィルターを交換できるタイプをおすすめしたい。

筆者の使用している防塵マスクと、塗装作業後のフィルター。マスクを使っていなかったら、この赤い粉がすべて体内に入っていたことになる。このタイプの防塵マスクは3,000円前後で購入できる

費用面では少しだけ高くなるが、使い捨てマスクは自分の息でフィルターが湿ってすぐに目詰まりしてしまうのに対し、フィルター交換タイプは自分の息がフィルターにかからない構造になっているので、目詰まりしにくく、楽に息ができる。

ここまでのレストアに費やした金額

品名 金額
車両購入(スズキ「ウルフ50」) 2万円
パーツリスト 500円
エンジンガスケットセット 4,719円
ピストンピン 594円
ピストンピンベアリング 379円
スナップリング 71円
パーツ送料・代引き手数料 874円
クランクベアリング(2個) 605円
オイルシール(4個) 981円
点火プラグ 276円
ボルトなど 65円
中古キャブレター(送料込み) 4,430円
シリンダー、ピストンセット(送料込み) 1万4,500円
サビ取り剤 2,890円
プラサフ 699円
フロントフォークシール 1,490円
フロントフォークダストカバー 1,080円
フロントフォークガスケット 216円
フロントフォークOリング 150円
フロントタイヤ 4,938円
フロント用チューブ 1,025円
リアタイヤ 5,800円
リア用チューブ 1,324円
スプレー塗料 1,190円
フェイクレザー 1,420円
スプレー塗料 4,270円
サンドペーパー 480円
SUZUKIステッカー 310円
合計 7万5,276円