映画化&イベント化も決定した『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ刊)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さん。今年4月の新刊は、なんと「耳」だけにスポットを当てた動物図鑑です。

「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より一部を抜粋し、連載にて紹介します。

第2回のテーマは、「耳の石が超デカイ イシモチを知っている?」です。

白くてグチを言う 標準和名「シログチ」

動物の「耳」と聞くと、多くの哺乳類にあるいわゆる「外耳」(耳たぶなどの外に出ていて見える部分)をイメージしがちですが、魚類にはありません。

  • 『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より引用

魚類の耳は、頭の中にある内耳(ないじ)という器官です。中に「耳石(じせき)」と呼ばれる石のようなものがあります。音は水中を振動として伝わり、耳石で感知します。スズキ目ニベ科の魚、シログチ(イシモチ)は、耳石が大きいことから石持ち(イシモチ)と呼ばれるようになりました。体が白っぽくグーグーと愚痴のような音を出すため、標準和名はシログチと言います。

  • 『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より引用

耳の石で年齢もわかる 魚類の不思議な耳石の話

魚類では、音の受容器として、内耳と側線があります。前述の通り、外耳や中耳はなく、内耳の中の耳石が音の受信や平衡感覚に関わっています。耳石の主な成分は、炭酸カルシウムです。アジやサバなど、いわゆる「魚」と称される種(硬骨魚綱)では耳石=石状で、サメ・エイ類(軟骨魚綱)では耳砂・平衡砂=砂状と、携帯に違いがあるのもおもしろいところです。

さらに、耳石の大きさや形は魚種により異なり、耳石の大きさや輪紋(木の年輪のようなもの)から魚の年齢がある程度推定できるそうです。

魚を食べて「耳石ハンター」になろう

宮城県では、耳石に関するおもしろい取り組みをしています。宮城県産地魚市場協会と宮城県で、小学生などを対象に魚の耳石を集めることを通じ、水産物を身近に感じてもらおうと、「耳石ハンター養成講座」を実施しています。

耳石の取り出し方は、宮城県の「耳石ハンター養成講座」というサイト内で紹介されています。「身を食べ終わった魚の頭から左右のエラ蓋、背骨を外し、頭蓋骨だけにする。目玉とくちばしを取り除き頭蓋骨を左右二つに割ると耳石が見えてくる。ピンセットで耳石を取り出しきれいに洗う」という内容です。

魚類ファンや骨ファンの間で密かなブームとなっている耳石取り、あなたもやってみませんか?

まだある!語れる耳ネタ

魚類にある「壺嚢(つぼのう)」を知っている?

耳石についてさまざまな研究が行われ、驚きのメカニズムが解明されつつあります。魚類と鳥類、両生類では「壺嚢(つぼのう)」という耳石器が確認されています。壺嚢には鉄などの磁性を帯びる物体が豊富に含まれ、魚の回遊や渡り鳥の飛来に、壺嚢が関わっているのではないかという説も。ヒトでは磁力を感じる機能が退化しましたが、魚類などは鋭敏に感じるのかもしれません。

『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(宝島社刊)

動物が持つ驚異の能力は「耳」がカギ!

効率的にエサをとるため、敵が出す音をよく拾えるようにするため―― 厳しい自然界で生き残るために進化した動物の耳。さまざまな能力があり、それはコミュニケーションのあり方につながります。

【川崎悟司さんより】
生き物の耳にはさまざまな形と機能があり、人間が感じることができない音を聴くことができる生き物もいます。また頭部に耳があるともかぎらない生き物や、そもそも耳はなく、体のどこかで音を感じとっている生き物もいます。だから生き物によってそれぞれ感じる音の世界は異なるでしょう。「そんな生き物たちの耳を人間が持っていたら……」を、イラストで可視化してみました。

動物園・水族館の飼育員、獣医師など、現場のプロに取材し、その秘密を解き明かします。

『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さんが描く、「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑です。