映画化&イベント化も決定した『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ刊)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さん。今年4月の新刊は、なんと「耳」だけにスポットを当てた動物図鑑です。

「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より一部を抜粋し、連載にて紹介します。

第3回のテーマは、「宇宙で実証済み!? 重力を感じるクラゲ」です。

傘の縁にある平衡石でバランス感覚抜群のクラゲ

日本の海や水族館でもおなじみのミズクラゲは、半透明の傘型の体の中央に、四つ葉のクローバーのような部分があります。この特徴から「ヨツメクラゲ」とも呼ばれます。ヨツメ(目)といっても、正確には生殖器や口に当たる器官です。本物の目は傘の縁にある、「眼点」と呼ばれる器官で、光の強さや方向を感じることができます。ミズクラゲには、傘状の体の縁に沿って全部で8個の感覚器があり、1個の感覚器に2個の眼点があり、計16個の眼点があります。ただし、明るさが分かる程度のようで、光などの刺激に反応します。

  • 『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より引用

では、耳はというと、人などの耳に該当する器官はありません。平衡感覚に関わる器官としては、「平衡石(スタトリス)」があり、体のバランスを保っています。

  • 『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より引用

クラゲの能力は宇宙で実証済み!?

耳が重力や体の傾きを感じ取る平衡感覚にも関わるのは、クラゲもヒトと同様です。クラゲが重力を感じ取る機能に関しては、スペースシャトル内で実験が行われ、非常に微小な重力も感じられることが報告されています。ただし、日本の海でよく見かけるミズクラゲでさえ研究はまだ進んでおらず、未解明の部分は少なくありません。

水族館ではクラゲ水槽にご注目

クラゲは平衡石のおかげで、水面の位置や水流はある程度は感じとれるようですが、自力で泳ぐ力はありません。基本的に、水流に向かって早いリズムで収縮すること(拍動)だけですが、独特のリズムは見ているだけでも癒やし効果抜群。夏の水族館なら、クラゲ水槽観察が涼しくてお勧めです。

「耳目線」でクラゲを観察するなら、アカクラゲにご注目。ある程度遊泳力のあるクラゲは、水槽内の水流が弱いときは、自分で傘を上(正向き)にするぐらいの動きはできるようです。つまり、自力で泳げなくとも、水面の向きはある程度把握できているのです。じっくり観察してみましょう。

まだある! 語れる耳ネタ

クラゲの眼点や平衡胞の仕組み

平衡胞は袋状構造で、内部に細かな毛がたくさん生えています。この毛を、感覚毛といいます。平衡胞の袋の中には、体のバランスを取る平衡石(スタトリス)が入り、体が傾くと、ほかの部分の感覚毛に触れ、体の傾きなどを感知します。クラゲの平衡石は重力感知にも関わっており、スペースシャトル内で実験されたこともあります。その結果、「非常に微小な重力も感じられる」ことが報告されています。

『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(宝島社刊)

動物が持つ驚異の能力は「耳」がカギ!

効率的にエサをとるため、敵が出す音をよく拾えるようにするため―― 厳しい自然界で生き残るために進化した動物の耳。さまざまな能力があり、それはコミュニケーションのあり方につながります。

【川崎悟司さんより】
生き物の耳にはさまざまな形と機能があり、人間が感じることができない音を聴くことができる生き物もいます。また頭部に耳があるともかぎらない生き物や、そもそも耳はなく、体のどこかで音を感じとっている生き物もいます。だから生き物によってそれぞれ感じる音の世界は異なるでしょう。「そんな生き物たちの耳を人間が持っていたら……」を、イラストで可視化してみました。

動物園・水族館の飼育員、獣医師など、現場のプロに取材し、その秘密を解き明かします。

『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さんが描く、「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑です。