連載コラム『株トリビア』では、「わかっているようで、実はよく知らない!?」株式用語、経済用語について、経済キャスターの鈴木ともみ氏が解説します。


「コーポレートガバナンス・コード」、今年6月1日から導入

今年は『企業統治改革元年』と呼ばれるほど、企業統治=コーポレートガバナンスへの関心が高まるなか、今回は注目の『コーポレートガバナンス・コード』を取り上げます。

「コーポレートガバナンス」とは、企業が株主の権利や、取締役会の役割、役員報酬などについての情報開示や、経営内容の透明性を高くすることにより、関係者(株主・顧客・従業員等)に対する責任を積極的に果たしていく体制を意味します。

また、「コード」とは、規則の意味を持ち、その原則を示したものです。

新たな企業の行動原則を記した「コーポレートガバナンス・コード」は、これらの仕組みを強化するために、今年6月1日から導入されました。

5つの基本原則で構成、対象となっているのは東証1部と2部に上場する企業

「コーポレートガバナンス・コード」は大きく分けると5つの基本原則で構成されています。(1)株主の権利・平等性の確保、(2)株主以外のステークホルダーとの適切な協働、(3)適切な情報開示と透明性の確保、(4)取締役会等の責務、(5)株主との対話。

これらの基本原則は、OECD(経済協力開発機構)のコーポレートガバナンス原則や、英国のコーポレートガバナンス・コードなどを基に、東証(東京証券取引所)と金融庁が原案を策定しました。対象となっているのは、東証1部と2部に上場する企業です。

主な内容としては、株主の権利を適切に行使できる体制づくりや、経営戦略や財務情報などの適切な情報開示、社外取締役を2人以上置くことで社外の意見を反映しやすくすることなど、企業が客観的な判断と評価のもとに、企業価値を向上させる責務を果たすよう促しています。

日本企業の国際競争力を高める政策の一つ

そもそも「コーポレートガバナンス・コード」は、政府の成長戦略のもとに、日本企業の国際競争力を高める政策の一つとして打ち出されました。

企業が資本を効率的に使っているかどうかを示す指標であるROE(自己資本利益率)は、日本企業の場合は8%と、米国の約17%の半分以下となっています。

これまでデフレ下にあった日本企業は、リスクを取らずに内部留保を貯めこむことを良しとし、新規の設備投資やM&Aなどに注力せず、収益を株主環元や従業員の賃上げに回す努力をしない経営を進めてきました。

政府は、こうした企業の慎重姿勢を改善させ、グローバル競争を勝ち抜くことができるような経営基盤を築き上げたいとしています。

世界を見渡せば「コーポレートガバナンス・コード」はすでに約70カ国に上る国々で策定されており、海外の投資家からは、日本の企業統治意識は遅れていると言われ続けてきました。

今年は株主総会でも対話が重視され、トヨタやシャープ、東芝などでは3時間を超える過去最高の長時間総会を記録しましたが、企業の意識が変わり、稼ぐ力を高め、日本経済の成長エンジンになれるどうかは、企業による「コーポレートガバナンス・コード」の運用姿勢次第で決まってくると言えそうです。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。