前回の自由が丘「そば新」に引き続き、東急線沿線を攻めたい。今日の一杯は東急東横線「学芸大学」駅にある「かしわや」(東京都目黒区)だ。東口を出て徒歩1分。東西に商店街が広がっており、住むによし遊ぶによしのロケーション。余談だが、当の東京学芸大学は50年以上前に小金井市に移転したらしいが、附属高校はこの駅が最寄りだとか。

「大判きつねそば」(税込400円)

茶そばやカレーそば、店舗限定メニューも

入り口には、大小カラフルなチラシがペタペタと貼られている。気どらない雰囲気でなんとも親しみやすい。「期間限定 冷し中華」なんていうのも見える。立ち食いそば屋なのに珍しい。早速、中に入ろう。

正面に厨房。右手の壁沿いに着席のカウンター。中央に立ち食い用の共用テーブルが、ドンと配置されている。14時頃の時間で5~6人の客入り。こちらは食券制ではなく、厨房で直接口頭注文。

お品書きは店内にもあり、お馴染みのメニューに加え、茶そばやカレーそば、丼のセットメニューのほか、「六百円そば」なる、ミニかき揚げやわかめ、きつねなどが入った店舗限定メニューもある。それらと並んで、「大判きつねそば」(税込400円)。普段は脇役に徹することの多いきつねそばをあえてプッシュ。気になったので、今回はこちらを注文した。

水をくみ、立ち食いスペースで待つ間、店内を観察。ガラス張りの店内は明るく入りやすいのか、女性客も見える。壁には店頭と同様にメニューが貼られているが、中には「缶ビール 350ml缶 1本300円」も混じる。生ビールや瓶ビールでなく、缶ビールというのも潔い。それも、大きくサッポロ黒ラベルの写真を使って。

もっちり麺にダシ香るツユ

大判きつねそば着丼。揚げは驚くほど大きなサイズ、というわけではないが、立ち食いそばとして十分な大きさである。それに刻みネギだけというのも渋い。かみしめる度に甘いダシがじゅわっと染み出してうまい。

個人的には、揚げと言えば「きざみうどん」の甘くない方に親しみがあるのだが、甘いのもたまにはいい。そば自体もいい。麺はもっちりしていて、舌触り滑らか。ツユも、黒いが塩気よりもダシの香りをしっかり感じられる丁寧な一杯だ。

「かしわや」は東急東横線「学芸大学」駅東口から徒歩1分

最後の一滴まで飲み干してしまい、ごちそうさま。庶民的でありながら味にも満足。近所に欲しい一軒だった。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。