東京・新宿駅。相変わらずおびただしい路線が入り組んでおり、出口は西に東に南に、東南・新南。最近ではミライナタワー改札が出来たり、少し目を離すとすぐ知らない景色になっている。今回紹介するのは、そんな新宿地下鉄ビル内、新宿メトロ食堂街にある「永坂更科 布屋太兵衛」である。
着席式は1,000円オーバー
新宿駅直結で、場所を分かりやすく書くのは大変難しいのだが、JR新宿駅西口改札を出て右手側すぐの階段を上ったところにある飲食店エリアだ。大きく看板も出ているので安心されたし。
調べれば、「永坂更科 布屋太兵衛」は麻布十番に本店を置く由緒正しき蕎麦屋らしい。約220年の歴史を持ち、「あま汁」と「から汁」、2種類の秘伝のつゆでいただく蕎麦は逸品だとか。支店は北海道から九州まで広がっており、新宿店は都内6店舗中の1店、ということになる。
面白いのが、手前側が立ち食いそば、奥が着席式のいわゆる普通の蕎麦屋と別個になっており、メニューも会計方法も違う。今回はもちろん食券制の手前で。「肉天もり」(税込750円)を購入。立ち食いにしては、高い。高いのだが、奥の蕎麦屋の方をのぞくと「天ぷらそば」が1,745円。そう考えると、なんだかオトクに思えてきた。
さっぱり蕎麦は濃い目のつゆで
L字型のカウンターで完全立食式。手前にも小テーブルがあり、10人も並べばいっぱいだろうか。新宿駅なので混むかと思い、15時頃と時間をズラしてみたのだが、それでも4~5人の客入り。さすが有名店である。
食券を渡し、程なくすれば到着。もりそばの上に大きくて分厚いかき揚げが乗っている。「肉天」の名前の通り、豚肉の細切れが入ったかき揚げで食感はサクサク。食べごたえも十分。その分、というか、蕎麦の量は上品。蕎麦の質には詳しくないが、口当たりのいいさっぱりした麺だった。卓上の小口切りのネギはご自由に。つゆはかなり濃い目で、コクがある。さっぱりした麺にも合うし、食べ終わった後、蕎麦湯でいただくのにもちょうどいい味だ。
本店の味とどこまで近いのかは、未経験の自分にはまったくお手上げで申し訳ないが、2度3度食べたくなる蕎麦なのは間違いない。無理にでも理由をつくって、ぜひ本店にうかがってみたい。
※記事中の情報は2016年8月取材時のもの
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。