盆も終わり、一時の暴力的な暑さは一段落したような気もするが、依然として湿度は高く、少し歩いただけでお気に入りの帽子に汗染みをつくってしまった今日このごろ。このたび、浅草方面に所要があったことを思い出し、では近くにそば屋はとリサーチした結果訪れたのが今回の「小粋そば」である。

  • 「肉そば」(510円)

浅草の地で、小粋とはなんとも挑戦的な屋号。サーチエンジンを叩くと、銀座や稲荷町の方にも同名の店舗があるようだった。東武線の「浅草」駅を正面改札口から出て徒歩1分足らず。近辺は多数の飲食店が立ち並び、時を選ばず観光客で賑わっているので気づきづらいが、立派な「駅そば」でもある。

観光客にも人気な浅草駅至近のそば店

朝は7時から開店、夜も比較的深くまで通しで営業している店で、店頭に書かれたお品書きを見るに、うどん・そばだけではなく酒やつまみも取り揃えている。オフィス街のそれとは違い観光地が背中を押してくれるのか、明るいうちから飲みやすい雰囲気も不思議と感じた。玄関の引き戸はロープで開けっ放しになるように留められており、入って右手に券売機がある。

「たぬき納豆」「とり天そば」「温玉ほうれん草」「五目そば」などあまりよそでは見かけないメニューが多く、さらに「海老かき揚げ丼」や「カツカレー丼」「からあげ丼」「とろろ丼」といったご飯物も豊富。それぞれ写真入りで、英語表記があるのも土地柄だ。選んだのは、外に看板が出ていた「肉そば」(510円)。肉そば自体は珍しくはないが、自信があるのだと思う。

店内はUの字カウンターと4人がけテーブルがいくつか。大型テレビもあるがミュートになっていて、その代わりになかなかのボリュームでラジオが流れている。先客は、地元民らしき中年男性3人。飲むかなと思ったが、みなそばをすすっていた。おもむろに席についたものの店員さんはなかなか現れず。2分ほど経った頃、奥からしっかりと化粧を施された割烹着姿のおばさまが登場し、食券をもぎっていった。

味も価格も申し分なしの良心的な一軒

そばは約3分で到着。煮た豚バラ肉だろうか、それが数枚と、さらに甘辛く煮付けられた玉ねぎが添えられているのは変わっている。肉の脂も相まって、ツユもじんわり甘い。そば麺は中太サイズで、もっちりとした食感。温かいそばはもちろん、もりそばにも合いそうだ。細かい薬味のネギともよく絡み、かけそば単体でのポテンシャルも感じる。なるほど、この味であれば多少具材で遊んでもハズレはなさそうだ。

  • 東武線の「浅草」駅を正面改札口から出て徒歩1分足らずの「小粋そば」

観光地としては破格の価格設定で、かけそばにいたっては300円を下回る優良店。日本のソウルフードを堪能するには味の面も価格面も申し分ない店なので、外国人観光客にもオススメしたい。

筆者プロフィール: 高山洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。