この日も東京は朝から30度超え。熱中症怖さで、日課のウォーキングも控えめにしたつもりだが、気づけば早いうちからTシャツの半分以上の色が変わっている。そんな中向かったのは、池尻。東急田園都市線「池尻大橋」駅、徒歩1分の「池尻蕎麦」である。

  • 「納豆そば」(410円)

頭上に首都高の走る玉川通り沿いにあるマンションの1階部分で、アコーディオン型のフェンスゲートが人二人分ほど開けられているところだ。ちなみに少し前までこちらは「ホーチャン」という店舗であったが、どうやら閉店してしまったらしい。

夕方には居酒屋にもなる二毛作のそば屋

「立喰そば」と大きく掲げられているが、夕方には立ち飲みができる居酒屋にもなる。まま見かける二毛作のそば屋だ。個人的な話になるが、どうしても夜間一人の時間がつくりづらいライフスタイルなので、こういう店を見かけるたびに羨ましく思う。

閑話休題。カラカラと引き戸を開けると、午前10時前、店内に先客なし。比較的若い男性の店主が一人で切り盛りしていた。右手側が厨房と立喰カウンター、左手がスツール付きのカウンターと食券機。正面にテレビがある。

さて、そばのラインナップだが、たぬきそばやきつねそば、わかめそばなどから、かき揚げ、春菊天、舞茸しめじ天、ちくわ天、ごぼう天、いか天、コロッケなどの揚げ物。さらに肉そばやカレーそばなどもあり、丼のセットメニューも当然のように並ぶ。小さな店内の中で、この上夕方にはつまみメニューも出すのだから、天晴というほかない。今回注文したのは、その中でもなかなかお目にかかれない「納豆そば」(410円)をチョイス。

納豆とツユが絶妙にマッチする完飲推奨の一杯

そばは完成まで2~3分。その間に冷水を2杯飲んだが、大きめのコップがこの季節に嬉しい。さて、納豆そばだが、湯気からしてもうダイレクトに納豆の香りを感じる。納豆は調理してしまえばその匂いは抑えめになることが多いが、ここでは直接そばに載せているためか。納豆は嫌いではない、むしろ好きな方だが、果たしてお味は、と口に運ぶと、これがツユと絶妙にマッチ。よくよく考えてみるとダシと醤油がベースなのだから、合わないわけはないのだ。豆は鰹節と和えられており、ほのかにぬめりを感じるツユとともに、細いそば麺に絡まる。噛みしめるたび鼻に抜ける複雑な香りがまた美味い。難点は、後半豆粒がツユに沈みがちになってしまうこと。最後の一粒まで大事に、完飲推奨の一杯である。

  • 東急田園都市線「池尻大橋」駅、徒歩1分の「池尻蕎麦」

この一杯で身体に塩分も補給できたのでは。しかも納豆なのだから、詳しいことはわからないが滋養もつく気がする。夏でも温かいそばは選択肢になり得るのだ。

筆者プロフィール: 高山洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。