前回に引き続き、青物横丁である。「そば切り うちば」を出て、ジュネーヴ平和通りを挟んで向こう側。「うどん」の大きなのれんが目立った。まだ胃袋に余裕はある。せっかく来た土地なのだから、とはしごすることにした。近くまで来てみると、この店は「おにやんま」だ。

  • 青物横丁「おにやんま」の「肉おろし醤油」は、その人気も頷ける納得の一杯

    「冷 肉おろし醤油 大盛」(710円)

立ち食いできるさぬきうどんの店として、五反田でいつも行列のできている店。恥ずかしながら、他所にも店舗があるのを知らなかった。あらためて調べてみると、新橋や人形町、中目黒にもあるらしい。この連載も150回を超えたが、第25回で五反田店の「冷しとり天ぶっかけ 大盛」を紹介させて頂いている。味は既に折り紙付き。早速店内に入ろう。

大きな厨房を眺めながらうどんを賞味

出入口正面に、券売機。温かいの、冷たいの。"かけ"や"ぶっかけ"、"おろし醤油"にそれぞれ具材と大盛ボタン。メニューに慣れていないと、正直混乱してしまうデザインだ。幸い後ろに並ぶ客もいなかったので、ゆっくり思案して「冷 肉おろし醤油 大盛」(710円)に決定。これはかなり高額メニューの方、ほとんどのうどんが500円前後で食べられるのでご心配なく。

中央に大きな厨房。その周りを「コ」の字にカウンターが取り巻いている。立ち食いではなく、背の高いスツール。水はセルフで隅に給水器がある。また、2脚のみだが、2人がけのテーブル席もみられた。五反田店よりはるかに広く、同店唯一のネックだった窮屈さは微塵もない。午前10時半前。先客は2名と、落ち着いた時間帯だった。

美味なうどんに箸が止まらない

さすがおにやんま、着丼までのスピードが神の領域。さっぱりと茹でられたたっぷりの肉と大根おろし。ネギはもちろん、さぬきうどんといえばスダチが、冷たく締められたうどんの上に盛られている。「おろし醤油」うどんなので、卓上の醤油をぐるっと回しかけて、ついでに天かすやおろし生姜もトッピングして、頂く。「醤油をかけずに、うどん本来の味を感じるためそのまま食べる」などと言っているどこぞの食通もいるが、「醤油」うどんなのだから醤油をかけた方が抜群に美味い。スダチを搾った時、種が混じってしまうことだけが難点だが、それ以外は全く箸の止まる気配がない。程よい太さとコシの麺は、万人が好きな味と食感。豊富な薬味と肉のおかげで、口に運ぶたびに味が異なり、量は多いものの食べ飽きることがない。

  • ジュネーヴ平和通りにある「おにやんま」

さすがに2杯目の大盛はなかなかヘビーであったが、完食。ごちそうさまでした。これからの季節、口当たりのいい冷たいうどんそばの需要がますます高まってくるだろう。そんな時、都内5店舗、おにやんまのうどんをぜひ思い出して頂きたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。