今日の一杯は、岩本町の「みのがさ」から。都営新宿線「岩本町」駅A4出口すぐ。「秋葉原」駅各線からも近く、神田川に架かる和泉橋付近にある。"秋葉原・昭和通り"―この辺りは当連載でも幾度もご紹介した都内屈指の立ちそばエリアで、掘れば掘るほど、知る人ぞ知る名店に巡り会える。路地を一本入ったところの、こぢんまりしたレトロなおそば屋さん。お弁当用のテイクアウトカウンターもあり、その隣の引き戸に短いのれんが下がっている。

  • 「なめ茸おろしそば」に「にんじん天」をトッピング(570円)

サラリーマン御用達の酒場のような店内

開店は11時半。開店時間を数分過ぎてのれんをくぐったら、既に7~8名の先客が列を成していた。右手にイス付きのカウンター、左手に厨房。中央には丼を少し置けるだけの小さな台が2つあり、立ち食い用とみられる。奥にテレビ。蛍光灯で照らされた店内は、やや薄ぼんやりしていて、働く大人のおじさんが集う酒場のような雰囲気がある。と思えば、やはり夜は居酒屋営業になるようで、酒やつまみの短冊が壁にびっしりと貼られていた。

カウンターに置かれた水をくんで、早速列に並ぶ。客は一人ずつ注文から支払いまでさばいているようなので、多少時間がかかるが、その間にメニューを選ぼう。月見、きつね、たぬき、わかめ、コロッケに各種天ぷら類。からあげやカレー、肉のそばもある。天ぷらはバットに並んでいるので、そちらから在庫を確認するとよい。耳をそばだてていると、一緒におにぎりを注文する客も多かった。

さて、今回は「なめ茸おろしそば」に「にんじん天」をトッピングで注文(570円)。注文から1~2分で完成。代金引換式。卓の鷹の爪を少し振りかけてカウンターに向かう。

彩りも味もいい「にんじん天」に舌鼓

まず一口ツユをいただく。元々ダシをきかせたまろやかなツユなのだが、それがおろしのおかげでさらにさっぱりとした口当たりに。ホッとするやさしい味わいだ。麺は細く、おろしをまとったツユとしっかり絡む。なめ茸は意外に自己主張こそ少ないが、コクをプラスおり、時折感じる歯ざわりは嬉しいアクセント。

  • 都営新宿線「岩本町」駅A4出口すぐの「みのがさ」

そして、にんじん天。かき揚げやコロッケ、舞茸、春菊などのメジャーの影にひそんで、なかなか第一候補になりにくい天ぷらをトッピングでチャレンジしてみた。シンプルににんじんの甘さが際立っており、また器にのせた時の彩りもよく、それでいて安い。悪くないぞ、にんじん天。

一見シンプルなメニューばかりでも、組み合わせ次第でオリジナルの美味さがアレンジできるのは、立ち食いそばの魅力のひとつ。大抵の味はツユがまとめてくれるので安心して。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。